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[記者手帳]容疑増えても財閥は執行猶予で釈放…裁判所の「2審伝心」

登録:2018-10-10 06:12 修正:2018-10-10 07:41
辛東彬ロッテグループ会長が2月13日午後、ソウル瑞草区ソウル中央地裁1審の判決公判で、懲役2年6カ月に追徴金70億ウォンを言い渡され、法廷拘束されて護送車に向かっている=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 みんなの視線が「ダースの実質的な持ち主」李明博(イ・ミョンバク)元大統領の懲役15年刑に集まっていたその時刻、ソウル高裁刑事8部(裁判長カン・スンジュン)は辛東彬(シン・ドンビン、日本名・重光昭夫)ロッテグループ会長を釈放した。財閥に寛大な裁判所の判決は初めてではない。今年2月、ソウル高裁刑事13部(裁判長チョン・ヒョンシク)もサムスン電子のイ・ジェヨン副会長を執行猶予で釈放した。

 マスコミも辛会長がいかに釈放されたのか、きちんと説明しなかった。執行猶予の事実だけを“淡々と”報じただけだ。辛会長を釈放した2審は、1審同様、辛会長がロッテ免税店の特許再取得という請託の見返りとして、チェ・スンシル氏が支配していたKスポーツ財団に70億ウォン(約7億円)を支援した事実を認めた。賄賂だということだ。賄賂に背任容疑まで認められたが、刑量はむしろ1審より減った。追徴金70億ウォンまで取り消された。

 朴槿恵(パク・クネ)政権の国政壟断事件の裁判で、政治権力と経済権力を区分せず、厳罰に処した1審とは異なり、2審で財閥のトップたちを執行猶予で釈放する“現象”は意味深長だ。

 裁判所も、財閥に“寛大な判決”を下すのが、司法に対する国民の信頼を失う原因になることをよく知っている。財閥トップに対する「正札制3・5判決」(懲役3年、執行猶予5年)が極限に達した2006年、イ・ヨンフン当時最高裁長官は、高裁の部長判事昇進者らに「人の家に押し入って1億ウォンを盗んだ人に実刑を宣告しない判事は誰もいないだろう。なのに、200億、300億ウォンも横領した被告人に執行猶予を宣告すれば、国民が納得できるだろうか」と批判した。翌年、全国裁判所刑事控訴審裁判長はホワイトカラー犯罪の控訴審で、1審の量刑を理由もなく減らしていた慣行(高裁ディスカウント)をなくすことにした。

 「高裁ディスカウント」の復活は、ヤン・スンテ最高裁長官時代に加速化した裁判所の官僚化とも関係がある。高等部長の人事権を握った帝王的最高裁長官のもとでは、企業には寛大で労働者には苛酷だった最高裁の判決の流れを、下級審で無視するのは難しかっただろう。現在、高裁の部長判事の大半が「ヤン・スンテ長官体制」で昇進した人たちだ。

 キム・ミョンス最高裁長官が「任期内に必ず成し遂げる」と公言した高等部長昇進制の廃止や3人の高裁判事で構成される対等裁判部の設置、高等裁判所と地方裁判所の二元化など、高等裁判所の改革案が注目されるのもそのためだ。ご機嫌伺いをしない所信裁判、実質的な3者合意、裁判所の世代交代を引き出すことができれば、“良い裁判”は自然に増えるだろう。裁判は判事の良心に基づいて行われるものだが、「有銭無罪」という国民の疑念を払しょくする至難な作業には、過去の枠組みから完全に脱する制度改革が伴わなければならない。

キム・ミンギョン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/865081.html韓国語原文入力:2018-10-09 18:43
訳H.J

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