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ヤン・スンテ最高裁、法理も捨てて「憲法裁判所こきおろし」に没頭

登録:2018-08-09 09:57 修正:2018-08-09 16:41

権力に近づこうと法理も無視 
全教組法外労組の裁判の時には  
「国政運営パートナーであることをはっきりさせること」に全力 
統合進歩党の地方議員維持の判決は 
憲法裁の問題点を指摘したという理由で肩を持つ 
 
最上位の裁判所としての地位に執着し“神経戦” 
1987年の民主化で発足した憲法裁判所 
弾劾など経て存在感が濃くなると 
「最上位の裁判所」を自認する最高裁は危機感を感じ 
地位復元のチャンスに活用しようとしたのか

ヤン・スンテ最高裁長官が昨年9月22日午前、ソウル瑞草区の最高裁で開かれた退任式に出席している=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 2015年末、ヤン・スンテ最高裁の裁判所事務総局で作成した「憲法裁判所に関する非常的対処案」文書には、最上位の裁判所である憲法裁判所を眺める最高裁(大法院)の「反憲法的」な見方がそっくり溶け込んでいる。文書は、国民の基本権保障のための憲法機関としての憲法裁判所の機能を全面的に否定し、ひたすら最高裁判所の位置づけを脅かす存在としてのみ認識した。最高裁判所と憲法裁判所の“神経戦”は昔からあるが、今回公開された文書は最高裁判所が作成したと見るのが恥ずかしいほど“みみっちい”ものだ。

■「憲法裁の無力化」のために法理を「廃棄」

 2014年12月、事務総局企画調整室が作成した全国教職員労働組合(全教組)関連の文書は、最高裁判所の「脳構造」をうかがうことができる要約本と言える。当時は、事務総局が全教組の法外労組処分の効力を停止させたソウル高裁決定を破棄する案を集中的に検討していた時だった。文書は「BH(大統領府)は最高裁判所と憲法裁判所という二つの司法最高機関が難しい国政懸案にどれくらい協力するかによって評価する」とし、「(最高裁が)国政運営のパートナーというイメージを最大限浮き彫りにできるタイミングを探す必要がある」とまとめている。

 事務総局の「憲法裁攻勢戦」は、上告裁判所の導入に向けた国会立法の最後のチャンスだった2015年に深刻になった。統合進歩党訴訟が代表的な例だ。当初、事務総局は大統領府を“満足”させるため、統合進歩党の地方議員職まで剥奪する「企画訴訟」を準備するくらい統合進歩党に敵対的だった。しかし、このような敵対的態度も憲法裁との地位争いが繰り広げられている状況では例外だった。当時、全州(チョンジュ)地裁が統合進歩党の地方議員の職位を維持する判決を下すと、「憲法裁の越権を指摘したという点で適切だ」という広報指針を作成する。翌年、統合進歩党の国会議員たちが職位を認めてほしいとして起こした訴訟を全員合議体に付託するかを検討する際も「判断の権限が(憲法裁ではなく)司法部にあることをより明澄に知らせることができる」という理由で「肯定的検討」をした。

 事務総局の「憲法裁無力化」計画は2016年末、弾劾政局でも続けられた。改憲の局面で憲法裁の問題点を浮き彫りにし、裁判訴願の導入などを“阻止”して、非法曹人も憲法裁裁判官になれるようにして「憲法裁との関係を絶縁」するという案も立てた。その一方で、「裁判所が憲法裁との関係で機関の利己主義に捕らわれたと非難を受ける可能性が大きい」とし、「厳重なセキュリティ」を呼びかけた。報告書の内容が不適切だという点に自ら気付いていたわけだ。

■「上告裁判所」足かせ除去が目的

 事務総局が憲法裁の無力化に没頭したのは、憲法裁との「不自由な同居」に終止符を打とうとする意図が大きかったものとみられる。1987年の民主抗争の成果物である憲法裁判所が、政党解散・弾劾審判などで認知度が高まると、「最高位の裁判所」を自任していた最高裁判所(大法院)としては危機感を感じざるを得なかった。

 特に、両機関は限定違憲(法律の条文自体は合憲だが、特定して解釈すれば違憲)決定をめぐって一度衝突したことがある。最高裁判所は、違憲かどうかだけを考えるべき憲法裁判所が法律解釈の権限まで奪ったと主張し、憲法裁の限定違憲決定を無視し続けてきた。1996年の譲渡所得税事件で最高裁は憲法裁の限定違憲決定を無視し、憲法裁は最高裁の確定判決を取り消すという“寸劇”を繰り広げた。最近になって訴訟当事者らが最高裁の裁判に承服せずに憲法裁の門をたたいたり、裁判訴願(裁判所の判決を憲法裁の憲法訴願請求対象に含む)導入の声が高まっている状況も、最高裁判所としては不都合だったのだろう。

 担当分野を問わず、事務総局の室・局が「憲法裁無力化」に総動員されたのも、このような理由のためとみられる。「非常的対処案」文書の作成には、最高裁・量刑委員会も参加したが、憲法裁に関する検討は量刑委の業務ではない。これと関連して、イ・ギュジン当時量刑委常任委員は「量刑委の業務ではない」としながらも、「(私が)憲法研究会の副会長まで務めた憲法専門家であり、(業務とは関係なく)憲法裁判所に関する検討はたくさんした。しかし、当該文書は記憶にない」と釈明した。

ヒョン・ソウン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/856846.html韓国語原文入力:2018-08-09 07:15
訳M.C

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