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週52時間労働「違反しても処罰・取り締まりを6カ月延ばす」

登録:2018-06-21 09:59 修正:2018-06-21 12:07
20日午前、国会で開かれた党・政・大統領府会議で(左から)李洛淵首相と秋美愛・共に民主党代表、洪永杓院内代表、張夏成政策室長が話を交わしている=キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

 共に民主党と政府・大統領府が、来月1日に300人以上の事業場と公共機関から優先実施される「週52時間労働時間短縮」と関連して、6カ月間取り締まりや処罰をしない啓蒙期間を置くことにした。労働時間短縮に負担を感じている財界の要求を受け入れたものだが、労働界は「企業に誤ったシグナルを与えかねない」と反発している。また、労働者や代理人が法定労働時間違反などの疑い(労働基準法違反)で使用者を告訴・告発した場合、これを処罰しないというのは、政府の越権を超えて違憲行為だという労働界・法曹界からの指摘も出ている。

 パク・ボムゲ民主党首席報道官は20日、国会で開かれた党・政・大統領府会議が終わった後のブリーフィングで「労働時間短縮によるショックを最小化し、制度の軟着陸に向けて今年末まで6カ月間の啓蒙期間、処罰の猶予期間を置くことにした」と明らかにした。会議には秋美愛(チュ・ミエ)民主党代表、李洛淵(イ・ナギョン)首相、チャン・ハソン大統領府政策室長らが出席した。

 これに先立ち、李洛淵首相は会議の冒頭発言で、前日、韓国経営者総協会(経総)が「労働時間短縮に対する取り締まりや処罰よりは6カ月間の啓蒙期間を与えてほしい」とし、雇用労働部に提出した建議文に言及して「軟着陸に向けた啓蒙期間が必要だと思う」と述べた。李首相は会議直後、記者団に応じ「これまで公開的に話すのは難しかったが、(取り締まりや処罰猶予の)議論を行ってきた」とし、「ただし、処罰するかどうかは、政府が勝手に決められるものではないため公式化するのにやや悩みがあったが、せっかく経総から提案をしてきたので(肯定的に)回答した」と説明した。党・政・大統領府の今回の決定は、予定通り労働時間短縮を実施するが、これに対する現場の準備が十分でない点と施行初期の事業場の処罰負担などをあわせて考慮して行われた。

 党・政・大統領府の「週52時間労働違反の使用者処罰猶予」方針が発表されると、労働界は強く反発した。チョン・ムンジュ韓国労総政策本部長は「週52時間問題は10年前から論議されてきた事案だ。施行まで僅か10日前に「啓蒙期間」を言及したのは、各企業に「法を守らなくてもよい」という誤ったシグナルを与えかねない」と話した。イ・ジュホ民主労総政策室長も「経営界の要求はすぐに受け入れ、労働界の要求は一貫して無視する今の状況が非常に憂慮される」とし、「最低賃金への算入範囲の改悪をはじめ、(今回の決定も)後退する様々な労働政策の一つ」だと指摘した。

 労働者が法定労働時間に違反した使用者を告訴・告発したとき、これを処罰せずやり過ごすことができるかということも議論を生んでいる。労働基準法上、労働時間の遵守義務に違反した使用者は刑事処罰(2年以下の懲役または2千万ウォン以下の罰金刑)の対象だ。パク・ボムゲ首席代弁人はこの日、党・政・大統領府の会議と関連し、「告訴・告発事件の場合でも、週52時間の適用に向けた一定の準備期間が必要な点と、事業主が最大限努力しているならそのような事情も考慮する必要がある」とし、「政府と与党の方針のように、国民の共感があれば捜査する側でも立件猶予などの裁量を発揮できると見ている」と話した。

 キム・ワン雇用労働部労働基準政策官もハンギョレとの通話で「週52時間違反と関連した陳情が提起されるとき、是正指示を下すことができるが、是正指示以降、告発まで至る期間を当初の1~2週間から最大6ヵ月まで延ばすということ」と話した。また、キム政策官は「勤労基準法に違反した使用者を労働者や第3者が告訴・告発する場合、処罰をしないのは一種の司法権の侵害で不可能だが、使用者が労働基準法を守ろうと実質的に努力したならば調査過程でこれを考慮するという趣旨」と付け加えた。

2月、ソウル汝矣島の国会議事堂前で行われた「労働基準法改悪の中止や労働時間免除の放棄を迫る過労死アウト対策委」記者会見の模様=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

 一方、民主社会のための弁護士会のリュ・ハギョン弁護士は「労働時間の遵守義務違反に関する処罰規定は強行規定なのに、党・政・大統領府が労働基準法を堂々と無視するということ」だとし、「誰が見ても犯罪者を見逃すということで、越権行為であり違憲的行動」だと指摘した。リュ弁護士は「たとえ首相や国務調整室でも実定法を勝手に解釈してはならない」とし、「是正指示期間を(6ヵ月に)増やしたのも、行政訴訟が可能な裁量権の濫用、逸脱と見ることができる」と話した。

 一方、この日、党・政・大統領府会議では「拡張財政政策を運営しなければならない」という与党の要求に、キム・ドンヨン副首相兼企画財政部長官が「当初来年の財政拡大の増加率は5.7%だったが、それよりさらに拡大して運営する」と肯定的に回答したと出席者たちが伝えた。

 パク・ボムゲ首席報道官も「ホン・ヨンピョ院内代表が『びっくりするほど財政支出を拡大してほしい』とし、キム・テニョン政策委議長も『想像以上に財政支出を拡大してほしい』と要求し、キム・ドンヨン副首相は肯定的な態度を示した」と明らかにした。

 これと共に、党・政・大統領府は、低所得層の所得水準が悪化することに対する対策として、低所得カスタマイズ型雇用や所得支援策を来月初めに発表することにした。また、「規制サンドボックス」(一定期間規制を免除する制度)など、規制革新5法を早期に立法化することにした。この日の会議ではホン・ヨンピョ民主党院内代表などが最低賃金法改正案の成立後、雇用労働部の対応が不十分だったと指摘したと伝えられている。

ソ・ヨンジ、イ・ジヘ、パク・キヨン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/849970.html韓国語原文入力:2018-06-20 22:13
訳M.C

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