国家人権委員会(委員長イ・ソンホ)が、徴兵拒否で裁判中の人に対して、就職および営業を制限した法条項の被害現況把握に乗り出した。宗教的理由にともなう徴兵拒否で裁判が進行中のPさん(21)に対し、兵務庁が兵役法条項を根拠にチキン店の閉鎖処分を下したという報道(「良心的兵役拒否者はチキン店も営業できないのか」)後に国家機関が乗り出した初の措置だ。
4日、ハンギョレの取材結果を総合すると、人権委は今月2日、兵務庁に対し兵役法第76条を根拠に営業所の閉鎖措置が下された現況を把握してほしいと要請した。該当条項は、国家、地方自治体、雇い主が徴兵・招集を忌避している人などを任用したり採用できなくし、各種の許認可・免許・登録も取り消さなければならないと規定している。Pさんも「兵役忌避者」に分類され、先月17日にチキン店の閉鎖通知を受けたが、裁判所の執行停止決定で即刻営業中止は免れた。
人権委関係者は「兵役拒否で司法府の最終判断を待っている人にまで該当条項を適用するのは、無罪推定の原則などに反すると判断した」として、現況把握の背景を明らかにした。また「該当法条項は、“正当な理由”など徴兵拒否にともなう行政処分の例外条項を置かずに、兵役拒否者一般に乱用される余地が大きい」とも付け加えた。
人権委は、収集された資料を基に具体的後続措置を検討する予定だ。人権侵害の程度が激しいと判断されれば、職権調査を始めることができ、収集された事例を根拠に人権委レベルの意見表明や委員長声明を出すこともできる。発端となったPさんの事例も、今後進行過程を綿密にモニタリングし、被害の拡大を防ぐというのが人権委側の説明だ。兵務庁を相手に営業所の閉鎖処分を取り消してほしいという行政訴訟を出したPさんは、該当兵役法条項に対する違憲法律審判請求も裁判所に申請する計画だ。
人権委は2004年と2016年の二度にかけて国防部に該当条項に対する改正を勧告したが、国防部は悪用憂慮などを理由に受け入れなかった。これに先立って兵務庁は、今月2日の報道後に「裁判の進行を理由に何ら制裁がなされないならば悪用する事例が増えるだろう」という公式立場を出したが、直ちに撤回した。兵務庁関係者は「当初(該当報道が)兵役忌避者に影響を与えかねないという憂慮があったが、報道の趣旨と違うと判断し、立場を撤回した」と説明した。