「大義のために報道しないでほしい。韓国の記者が先に悪口を言ったり、胸ぐらをつかんだという話もある」
電話をかけてきた中国記者は「私が代わりに謝罪する」という言葉を繰り返しながら、14日に文在寅(ムン・ジェイン)大統領が出席した行事会場で発生した中国警備会社の警護人員が韓国記者を暴行した事件の報道自粛を要請した。私が謝罪を受けることではないと言い、こうしている時間に事件関連の取材でもしろと言って電話を切るのに30分以上もかかった。
事件の本質は、人が殴られたが責任を負う人がいないという問題だ。現場写真や動画も報道され、中国の緻密な防犯カメラと人工知能(AI)の監視も強力なのにもかかわらずだ。中国外交部が「調査中」としたので、実体が明らかになり適切な処置が取られることを期待するが、今回の事件で韓中関係を回復しようとする努力が大きな打撃を受けた点が残念だ。文在寅大統領が歴史を掲げ韓中の共通点を強調し、習近平主席がTHAAD問題を直接言及せず、李克強首相は「春日」を言及するなど、指導者らは明らかに用心深く関係改善を打診した。しかし、両国で韓中関係の回復を妨げる声が「嫌悪の共生」を形成しながら、両国関係は少し揺さぶられれば再び地に落ちるような脆弱な状態になった。
16日、中国のニュースポータルの「Toutiao(今日頭条)」の論客「海外探客」は、文大統領の訪中で共同記者会見と共同声明がないなど、国内の一部マスコミの批判論理をそのまま繰り返しながら“自業自得”と非難した。記者暴行事件も同じだ。中国のあるメディアは「韓国メディアが一部の韓国政治家と連合して中国を侮辱しようとする自作自演」と規定した。主な根拠は韓国メディアの関連記事につけられた「韓国記者たちの行為が恥ずかしい」といった内容の書き込みだ。
韓国国内の政府批判は中国内の反韓世論の餌食になり、中国マスコミがこれを引用して報道すれば、また韓国の反中世論を刺激する悪循環が繰り返される。悪化した韓中関係で得する人々が支えている「嫌悪の敵対的共生」だ。