良心的兵役拒否者に無罪を言い渡した下級審裁判所の判決が50件を上回ったことが24日に確認された。特に、このうち35件が今年行われたものだ。良心的兵役拒否問題の解決に消極的な政府や国会、憲法裁判所、最高裁判所(大法院)に対し、態度の変化を求める一線の判事ら声が高まっている。
仁川(インチョン)地裁のイ・ドンギ判事は今月21日、現役兵として入営通知書を受けたが入隊しなかった容疑(兵役法違反)で起訴されたK氏(23)に無罪を言い渡した。2004年5月21日、ソウル南部地裁のイ・ジョンニョル判事が宗教的理由で入隊しなかったO氏など2人と、予備軍訓練を受けなかったH氏など3人に対し、初めて無罪を宣告してから、52番目の無罪判決だ。イ判事は「良心の自由は憲法の最高の理念である人間の尊厳と価値に直結する」としたうえで、「兵役法第88条第1項を適用して処罰するのは、憲法上の権利を不当に侵害したものであり、(K氏に)兵役義務の履行を拒否する正当な事由が存在すると見なければならない」と明らかにした。これまで裁判所は、「正当な事由」なしに入隊しない場合、3年以下の懲役に処することを定めている兵役法第88条第1項を良心的兵役拒否者に適用し、懲役1年6カ月の“量刑相場”をそのまま言い渡してきた。これに先立ち、20日には釜山(プサン)地裁東部支所のクォン・ギチョル部長判事も、良心的兵役拒否者2人に対する無罪判決文で、「代替服務の機会を提供すれば、国も国家的・公益的事業に服務できる資源を得られると共に、民主国家の理念的正当性を進展させることもできため、安保状況にも役立つ」として、代替服務制の導入を求めた。
2004年初の無罪判決以降、2007年に1件、2015年に6件、2016年に7件だった良心的兵役拒否の無罪判決は、今年に入って35件へと大幅に増えた。無罪判決に参加した判事の数も22人に達する。裁判所の相次ぐ無罪判決の背景には、2007年、代替服務制の導入を表明したにもかかわらず、それを撤回した政府の放置や、17~19代国会における立法の挫折、6年間続いている憲法裁判所の最長期審理がある。無罪を宣告したある判事は「憲法裁などが変わる可能性がない状況で、良心的兵役拒否は兵役法の『正当な事由』に当たるという共感が判事たちの間で広がってきた」と話した。水原(スウォン)地裁のファン・ジェホ判事も2015年8月13日、無罪判決文で「国会は多数決の原理が支配しており、憲法裁も合憲決定をした前例がある」と指摘した後、「裁判所は『正当な事由』の解釈を通じてこの問題を解決することができる。少数者を保護するのは裁判所に与えられた任務であり義務」だとして、裁判所の役割を強調した。
無罪判決が相次ぐ中、代替服務制が導入されるかどうかに注目が集まっている。代替服務制の導入は文在寅(ムン・ジェイン)大統領の公約であり、国家人権委員会も7月、再び導入を勧告した。共に民主党のチョン・ヘチョル、イ・チョルヒ、パク・ジュミン議員は第20代国会で代替服務制の導入法案を発議しており、国防部も19日、国会国防委員会で「世論調査などを通じて総合対策づくりを検討している」と明らかにした。最高裁判所は2審の無罪判決3件を審理しているが、「良心的兵役拒否権を認める必要性があるが、立法を通じて解決すべき」と明らかにしたキム・ミョンス新任最高裁長官がどのような態度を示すかも注目される。良心的兵役拒否者を弁護するオ・ドゥジン弁護士は「国会と政府、最高裁判所と憲法裁が自分の位置から毎年数百人が収監される集団的な人権問題を一日も早く解決しなければならない」と要求した。