国家情報院(国情院)が2011年、野党政治家の動向と「ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)掌握対策」などの文書を大統領府に報告したという疑惑と関連し、ソ・フン国家情報院長が11日、「国情院が作成した文書に間違いない」と明らかにしたことで、真相究明の刃が「李明博(イ・ミョンバク)大統領府」に向かうことになるものとみられる。これらの文書は、国情院の「2012年大統領選挙への介入」がウォン・セフン元国情院長が裁判を受けている心理戦団のコメント工作のレベルを超えて、李明博政権当時、大統領府が国情院を動員し、常時的で広範囲な政権再創出の工作を主導した可能性を示しているからだ。
「世界日報」の報道で公開された国情院の2011年文書は、実際、李明博政権による露骨な政治介入をかなり明らかに示している。これらの文書には「ウ・サンホ、左翼陣営の大統領選挙に向けた水面下の動きに神経尖らせる」や「2040世代の対政府不満要因の診断と考慮事項」、「(SNSの選挙影響力の診断および考慮事項」、「10・26再・補欠選挙事犯の厳正処罰で選挙秩序の確立」などの題名が付いている。「2012年のコメント事件」が明らかになった当時、国情院は「対北朝鮮心理戦の一環として始まったこと」だと釈明した。2013年、検察の特別捜査チームが捜査の対象とした組織も、国情院心理戦団のインターネットコミュニティ担当の安保3チームとツイッター担当の安保5チームで、この2チームだけが検察の捜査を受けた。しかし、今回公開された文書は、野党政治家を査察し、選挙で勝利するための世論づくりと具体的なキャンペーン方法を積極的に助言する内容で、心理戦団の業務範囲を超えるものだ。心理戦団よりはるかに大きな規模の部署で組織的かつ日常的に行われた可能性が高い。
国情院の盗聴疑惑も提起される。国情院が作成したいわゆる「ウ・サンホ文書」には、共に民主党のウ・サンホ議員が2011年当時、周りの人たちに話した内容と共に、これをもとに今後の政局の流れを予測した内容が盛り込まれている。「ソウル市長選挙で安哲秀(アン・チョルス)登場、朴元淳(パク・ウォンスン)当選など、政治的な地殻変動が発生したのは、決して偶然や一時的現象ではない」、「これまで『青春コンサート』や『ナヌン コムスダ(<私はせこい奴だ>、ポッドキャストの番組)などの扇動的なやり方で政府と既成の政界に対する不信・不満を刺激し、変化を求める土台を作った」など、ウ議員の発言が具体的に示されており、盗聴および政治家査察の疑惑が持ち上がっている。
これらの文書が大統領府の“誰”にまで報告されたのかも、究明されるべきところだ。これらの文書は2011年6月から12月まで、大統領府の政務首席室に勤務したK元行政官が、毎日国情院と警察から受け取った機密報告書の中で715件を破砕せず、大統領府から外部に持ち出したことで、世間に知られるようになった。2011年10月のソウル市長補欠選挙当時のDDoS事件と関連し、K行政官が家宅捜索を受けた際、これらの文書が特検の手に渡った。K元行政官は、これらの文書を国情院から受け取ってキム・ヒョジェ当時政務首席に報告したと、特検で供述したという。キム・ヒョジェ元首席を経て、さらに上部にも伝わった可能性も考えられる。
結局、国情院の政治介入文書をめぐる真相調査は、国情院の独自調査に続き、検察捜査を経て、李明博政権の要人たちの司法責任を問う段階につながる可能性もある。国情院関係者は「2011年当時、文書を作成した実務者はまだ現職にいると聞いている。そこから調査が始まるだろう」としたうえで、「国情院職員ではない部外者の違法行為が判明すれば、検察に告発するか移牒し、起訴の可否を検察が判断することになるだろう」と伝えた。
国情院のこのような動きに対し、李明博元大統領側は「すでに終わった事案を再び持ち出す意図は何か」と、不快感を露わにした。再調査のレベルを超えて、検察捜査にまで飛び火することを懸念する様子だ。キム・ヒョジェ元首席は11日、ハンギョレの電話取材に対し、「該当文書の報告を受けた記憶がまったくない。その問題と関連しては記憶もなく、話すこともない」と否定した。