北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長の異母兄弟の金正男(キム・ジョンナム)氏(46)が襲撃された当時、女性容疑者らが金正男氏を攻撃するのにかかった時間はわずか2.33秒だったことが分かった。混雑した空港で金正男氏以外の他の人に怪我を負わせることなく、攻撃されてからも正男氏が一人で歩き回りながら徐々に意識を失って死亡したと見られ、犯行に使用された毒物は高度の技術によって精巧に作られたものと分析されている。
日本のフジテレビなどは今月13日、マレーシア・クアラルンプール国際空港第2庁舎で正男氏が殺害される瞬間を収めた5分ほどの監視カメラ映像を19日に公開した。金正男氏の行跡を辿って様々な場所の画面をつなぎ合わせたこの映像によると、金正男氏はリュックサックを背負って出国場に一人で入ってから、キオスク(無人発給機)の方に移動したが、その際に、ドアン・ティ・フオン容疑者(29・ベトナム)とシティ・アイシャ容疑者(25・インドネシア)が急に金正男氏に近づき、攻撃を試みた。フオン容疑者が両腕で金正男の顔を覆ってから、その場を離れるまでにかかった時間は2.33秒だった。
犯行直後、2人の女性は瞬く間にそれぞれ反対側方向に散らばり、正男氏は空港案内デスクの職員らに目をこするようなしぐさをして何かを説明していた。その後、正男氏が警察とともに医務隊へ歩いていく場面で、映像は終わる。正男氏はそれから医療陣に再び状況を説明するうちに意識を失っており、ソファーに倒れ、空港から車で約30分離れたプトラジャヤ病院へ移送される途中で死亡した。
正男氏は、毒物攻撃を受けた後も、一人で歩いて対話ができるほど正常な状態を維持したが、毒が徐々に広がって死亡したものとみられる。このようなことから、犯行に使用された毒物が目標対象にだけ致命傷を与えるように非常に精巧に作られたものと見られている。フロリダ大学のブルース・ゴールドバーガー法医学研究所長は、毒ガスの一種である神経ガス、麻薬性鎮痛剤のオピオイド類の毒物を例に挙げた。カナダ軍事評論誌「カンワ・ディフェンス・レビュー」のフィンコフ編集長は18日、マレーシアの中国系メディア「中国報」とのインタビューで「強力な心臓衰弱をもたらし、外観上は心臓発作による自然死のように見えるようにする、非常に高度な技術」だとして、これを土台に正男氏の暗殺が(個人ではなく)「政府機関の仕業」だと推定した。
正男氏を死に至らせた毒物が何なのかが解剖で明らかにならない場合は、公式の死因は迷宮に陥る可能性が高い。マレーシアのスブラマニアム保健相は20日、「早ければ今年の22日に解剖の結果は発表されるだろう」と明らかにした。