「首都圏に飛んでくる北朝鮮のスカッド
高度低く、THAADでは迎撃できない
従来のパトリオットで防御」
国防部は13日、高高度防衛ミサイル(THAAD<サード>)配備の最適地として慶尚北道星州(ソンジュ)を選定したのは、軍事的な効用性、住民の健康と環境などを総合的に考慮した結果だと発表した。しかし、国防部は、THAADを星州に配備することで防空網から外れたソウルと首都圏地域に対しては、既存のパトリオットミサイルが防衛能力を備えていると明らかにした。 当初国防部がTHAADを導入する際に公言した「多層ミサイル防衛網」の構築も、その範囲が限られることになった。
■どうして星州なのか?
THAADは人口の半分が住む首都圏を防衛するのに限界があるため、これを除いて主な軍事施設などに防空網を提供できる地域を中心に、約10カ所の後方地を比較検討したというのが国防部の説明だ。これらの地域のなかで星州は、THAADの最大射程距離とされる200キロメートル半径内に米軍の主要施設である平沢(ピョンテク)、烏山(オサン)、大邱(テグ)、漆谷(チルゴク)、群山(クンサン)などの基地、韓国の陸海空軍の本部がある鶏龍台(ケリョンデ)などを包括する。国防部は、東南海岸の古里(コリ)や月城(ウォルソン)などの原子力発電所地域にも防空網を提供できるという点なども高く評価されたと説明した。
リュ・ジェスン国防部政策室長は、星州が比較的に住民の安全と環境などに影響が少ない地域という評価も、(配備予定地としての選定に)大きな影響を及ぼしたと説明した。THAADが配備される予定の星州のホークミサイル砲隊は、星州邑の市街地から1.5キロメートル離れた海抜400メートルの高地にある。リュ室長は「THAADレーダーの出入統制区域である半径100メートル以内は、部隊の敷地内にあるため、住民の健康には影響を及ぼさない」と述べた。しかし、地域住民たちはTHAADの電磁波の危険に対する不安感を隠せない。これと関連し、国防部は、14日、軍が運用中の「グリーンパイン」レーダーの電磁波測定の過程をTHAADの代わりにマスコミに公開すると発表した。
リュ室長は、中国の反発を考慮して西部海岸地域を排除したかという問いに「陸地を最も広く防衛できる地域を考慮したものだ。第3国に対する考慮は軍事技術的な評価に影響を与える要因ではない」と否定した。また、「国家の中心地域である首都圏も保護できない兵器の導入に、韓中関係の摩擦などを甘受する価値があるのか」という問いには「首都圏以外の地域の住民は国民ではないかと訊きたい」と反論した。
■首都圏の防衛はどうなるのか?
国防部はTHAAD防空網から首都圏が除外された背景と関連し、休戦ラインが近いため、THAADでは北朝鮮のミサイルを防げないと説明した。首都圏に飛んでくる北朝鮮のスカッドミサイル(射程距離300~700キロメートル)は飛行高度が低く、迎撃高度40~150キロメートルのTHAADでは迎撃できないということだ。したがって、首都圏は迎撃高度が3~20キロメートルで低いパトリオットで防空網を構成するしかないというのが、軍当局の説明だ。
現在、軍のパトリオット砲隊はソウル周辺に複数配備されているという。ハン・ミング国防部長官は同日、国会予算決算特委で「首都圏は韓米パトリオットによって防護されている」と述べた。リュ室長は「パトリオットミサイル1砲隊でソウルの面積をカバーできる」として、「既存のパトリオット2ミサイルの性能改良が首都圏で先に進められおり、有事の際には(THAAD配備で防空網に余裕が生まれた)後方のパトリオットを首都圏防衛に使えるだろう」と述べた。
しかし、このような構想は、国防部がTHAADの導入の必要性と多層ミサイル防衛網の構築などを掲げていた当初の態度とかけ離れたものだ。国防部はTHAADが導入されれば、北朝鮮のミサイルを40~150キロメートルの高い高度でTHAADが先に迎撃し、約20キロメートルの低い高度でパトリオットがもう一度迎撃する多層ミサイル防衛網を構築できると説明してきた。ところが、首都圏については国防部のこのような主張が当てはまらなくなったのだ。
国防部が最初に主張した多層ミサイル防衛は、慶尚北道星州を中心とした最大半径200キロメートル以内のTHAAD防空網の提供地域に限定される。リュ・ジェスン室長は「当初、国防部が、THAADは首都圏の多層防衛用と言っていたではないか」という指摘に対し、「そのようなことは言っていない。大韓民国(全国土)レベルでの多層防衛を申し上げた」と釈明した。首都圏には多層ミサイル防衛が構築されないが、国土の2分の1または3分の2地域では多層防衛システムが作動するという主張だ。
韓国語原文入力:2016-07-13 20:59