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[コラム]日本の運命がかかった参議院選挙

登録:2016-07-08 00:11 修正:2016-07-08 06:19
4日、東京の池袋駅前で行われた日本共産党の参議院選挙遊説現場を訪れた市民が「安倍政権を認めない」と書かれたピケットを持ちスローガンを叫んでいる=キル・ユンヒョン特派員//ハンギョレ新聞社

 「キルさん、こんなのが出ましたよ」

 先日、10日に行われる日本の参議院選挙の展望を尋ねるため、東京の水道橋にある「許すな!憲法改悪・市民連絡会」の高田健事務局長の事務室に立ち寄った。

 インタビューが終わろうとする頃、高田事務局長が突然「ビッグコミックスピリッツ」という日本の漫画雑誌の最新号を持ち出した。表紙には日本の人気女優の波留(はる)の写真が載っていて、「なんでこんなマンガ本を」と思った瞬間、あまりの驚きに涙を誘うようだった。マンガ本の別冊付録として、韓国で「日本の平和憲法」と呼ばれる日本国憲法の全文が載っていたからだ。憲法などには関心のない若い世代に切実に呼び掛けるように「日本国憲法は前文と103条の条文で構成される、他国の憲法に較べれば短い法律文書です。抽象的な話も多く、何を言っているのか分からないものも…。(中略)しかし、短く整理された単語には、何というか深い意味が含まれているようです」という説明が付いていた。

 「このまま行けば、参議院選挙で自民党など改憲勢力が議席の3分の2を占めるかもしれない。単なる漫画雑誌だが、私たちにできることがあれば何でも寄与したい」。雑誌編集者の声なき声が重く伝わってきた。日本の主要マスコミが果さなければならない社会的役割を、とるにたらない漫画週刊誌が果す格好だった。

 韓国でもあまり大きな関心を傾けていないようだが、現在日本は戦後71年の歴史で最も決定的な瞬間を迎えている。先の戦争でアジア周辺国家を植民支配し侵略した日本は、敗戦後に新しい国家作りに乗り出した。そして作られたのが現在の日本の憲法だ。かつての憲法だった大日本帝国憲法(1889年制定)と新憲法の日本国憲法(1946年制定)の間にどれほど大きな差があるかは、1条を見ただけでもよく分かる。旧憲法では「大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」となっているが、現行憲法では「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」となっている。

 日本が憲法を変えればどんなことが起こるだろうか。自民党はすでに2012年4月に自分たちが理想と考える憲法改正草案を出している。天皇の地位は「日本の象徴」から「元首」(1条)に変わり、日本の軍隊保有と交戦権を否定した9条の平和条項は事実上形骸化される。その代わり、自衛隊は正式な軍隊である「国防軍」に変わり、「国際社会の平和と安全を確保するための活動」などを遂行する。これは、自衛隊が今後「国際社会の平和と安全」を名分に広範囲に国際紛争に介入できるようになることを意味する。昨年9月「集団的自衛権」の行使を骨格とする安保法制の制改定により日本が集団的自衛権を限定的に行使できるようになったとすれば、改憲はこれを無制限に拡張する結果をもたらすものと見られる。そのことが朝鮮半島周辺情勢にどのような影響を及ぼすか、想像しただけでも頭が割れそうに痛くなる。

キル・ユンヒョン東京特派員//ハンギョレ新聞社

 日本人は自らの目前に迫ったこうした現実をどこまで直視しているだろうか。近頃の日本では「まさか」遊びが流行っている。まさかと思っていたらドナルド・トランプが米共和党の大統領候補になり、まさかと思っていたらブレグジットが現実になった。まさか、まさかと思った安倍首相の改憲まで?

 皆が経済、暮らし、アベノミクスでおかしくなっている間に、巨大な悪夢が目の前に迫っている。10日、平和を愛す日本人が主権者としての威厳を見せることを心から期待するが、そのような願いがかなう可能性は高くはなさそうだ。

キル・ユンヒョン東京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/751428.html 韓国語原文入力:2016-07-07 21:45
訳J.S(1645字)

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