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韓国の最低賃金、9年ぶりに2桁引き上げなるか

登録:2015-03-09 00:35 修正:2015-03-09 13:18

 「内需を生かすためには、最低賃金を急速に引き上げるしかない」とのチェ・ギョンファン経済副首相兼企画財政部長官の発言に、大統領府と与野党が協力する姿勢を見せたことで、最低賃金が重要な争点に浮上した。政府と政界が最低賃金の引き上げをめぐり、異例にも口を揃えており、9年ぶりに2桁引き上げが行われるという見通しが出ている。制度の実効性を高められる最低賃金算定基準の法制化と、最低賃金すらもらえない人たちのための制度改善が急がれるという指摘も多く、議論が本格化するものと見られる。

最近5年間における最低賃金及び労働者平均賃金の推移。資料:最低賃金委員会、雇用労働部「事業所労働力調査」 //ハンギョレ新聞社

 4月の臨時国会と来年の最低賃金を決定する6月の最低賃金委員会は、政府と政界の意志を確かめる試験台の役割をするものと思われる。 8日の国会資料によると、雇用労働部、キム・ソンテ セヌリ党議員、文在寅(ムン・ジェイン)新政治民主連合議員、シム・サンジョン正義党議員などが発議した18件の最低賃金法改正案が国会環境労働委員会に係留されている。

 最大の争点は、「最低賃金基準」の法制化だ。文在寅(ムン・ジェイン)、イ・インヨン、シム・サンジョン議員などは、最低賃金が少なくとも全労働者の平均定額給与(または通常賃金)の50%以上にならなければならないという法案を発議した状態だ。最低賃金水準が低く、低賃金労働貧困が深刻なだけに、法に下限を設けようというのだ。現在は毎年、最低賃金委員会が翌年適用する最低賃金を定めている。 2013年基準で、最低賃金は月101万5740ウォン(時給4860ウォン(約531円)、209時間あたり)で、全労働者の平均定額給与月214万ウォン(約23万4000円)の47.5%水準だ。勤労基準法が適用される5人以上の商用労働者の平均定額給与(月257万8000ウォン、約28万1924円)に比べると、39.4%にとどまっている。

 一方、政府とセヌリ党は法で下限を定めることに負担を感じている。先月10日、国会環境労働委法案審査小委議事録によると、雇用労働部ゴ・ヨンソン次官は「(最低賃金を法律で定める)硬直的な方法ではなく、経済状況に応じて現実的に決めることが望ましいと考えており、法に反映されないことを望む」とし、反対意見を明らかにした。セヌリ党も反対しており、法案が2012年発議されたにもかかわらず、3年間うやむやにされている。

4月の国会、6月の最低賃金委、政府・政界の試験台
18件の改正案常任委員会に係留中
下限制定などの制度改善急務
9年ぶりに引き上げ率2桁の見込み
適用受けられない227万人も解決しなければ

 ユ・スンミン セヌリ党院内代表は6日、与党と政府、大統領府の会議の結果、懇談会で「(最低賃金の引き上げ率を)決定する過程は最低賃金委員会で従来通り行うが、政府・与党が最低賃金の引き上げについて足並みを揃えることにした」と明らかにした。最低賃金委員会は、労・使・公益委員から9人ずつ27人が参加し決めるようになっている。しかし、労使が合意している事例が少なく、公益委員が出した案が議決されている場合が多い。公益委員は労働部長官が推薦し、大統領が委嘱するようになっており、政府の意向が影響を及ぼしかねない。

 最近の動向からして、今年の会議では9年ぶりに引き上げ率が2桁に達する可能性も考えられる。最低賃金は、2000〜2014年の15年間で2桁の引き上げが5回あった。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権当時の2006年(12.3%)が最後の2桁引き上げだった。朴槿恵(パク・クネ)政権が発足してからは、2013年に7.2%、昨年には7.1%引き上げられた。韓国労働社会研究所のキム・ユソン主任研究委員は、「韓国の低賃金層は25.1%で、経済協力開発機構(OECD)25加盟国のうち最も多い。賃金不平等と低賃金層の比重を決定する重要な要因の一つが最低賃金だ」とし「最低賃金を引上げて賃金不平等と低賃金に効果的に対処しなければならない」と述べた。(この問題をめぐり)労使は鋭く対立している。民主労総と韓国労総は、「最低賃金1万ウォン」を要求しており、韓国経営者総協会は、「2000年以降の最低賃金の急激な上昇に伴う負担が大きい」と対抗している。

 最低賃金さえもらえない労働者が8人に1人の割合の227万人もいるのも、政府と政界が解決すべき課題だ。最低賃金を引き上げても、実際適用されていないので、実効性が低迷する。韓国労働社会研究所が発表した「非正規職の規模と実態」(2014年)によると、政府が管理・監督する公共部門でも最低賃金を下回る給与を受け取る労働者が14万人にもなる。

 何よりも労働部の軽い処罰が最低賃金違反を助長しているという批判が出ている。 2013年労働部は、1万3280カ所を点検し違反が6081件に達したが、司法処理は12件に過ぎなかった。ハン・ジョンエ議員(新政治民主連合)は事業主が最低賃金より少なく給料を支給したときには10倍まで賠償責任を負う内容の法案を発議し、シム・サンジョン議員は処罰規定を、3年以下の懲役、5000万ウォン以下の罰金に強化する法案を提出した。

キム・ソヨン、チョ・ギェワン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2015.03.08 19:51

https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/681340.html  訳H.J

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