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[分析]米国人抑留者を解放し宥和政策に舵を切る北朝鮮

登録:2014-10-23 00:51 修正:2014-10-23 06:35
ジェフリー・ファウル氏//ハンギョレ新聞社

北朝鮮「オバマの度重なる要請で
ジェフリー・ファウル釈放の特別措置」
北朝鮮の国連大使は人権対話を強調
米国「6者会談再開されることを期待」肯定的回答

 北朝鮮に抑留されていたアメリカ人3人のうち1人が電撃的に釈放されたことを契機に、北朝鮮と米国が積極的に関係回復の動きを始める姿を見せている。 2012年2月、北朝鮮の核実験以後、完全に梗塞していた北核問題解決の突破口が用意されるか注目される。

 北朝鮮『朝鮮中央通信』は22日「(労働党第1書記である)金正恩(キム・ジョンウン)同志がオバマ米国合衆国大統領の度重なる要請を考慮して、米国人犯罪者ジェフリー・ファウルを釈放する特別措置を取った」と明らかにした。 同通信は続けて「米国人犯罪者ジェフリー・ファウルは該当する法的処理手続きに則り米国側に引き渡した」と付け加えた。 ジェフリー・ファウル氏(56)は5月7日、咸鏡南道(ハムギョンナムド)清津(チョンジン)に旅行した後、出国する過程で聖書を流布した疑い(敵対行為)で逮捕されたが起訴されてはいなかった。

 ジョン・ケリー米国務長官も22日(現地時間)ベルリンで、フランク=ヴァルター・シュタインマイアー ドイツ外相との会談を終えた後の記者会見を通じて「数週間または数か月以内に(6者)会談再開の動力が生じることを希望する」として「米国は全面的にその準備ができている」と明らかにした。

 ケリー国務長官は、依然として北朝鮮に抑留中の残り2人の米国人も早期に釈放されることを希望するとし、このように話した。 マリー・ハーフ米国務部副報道官も21日のブリーフィングで、ジェフリー・ファウルの釈放の便りを伝え「北朝鮮の釈放決定を歓迎する」と話した。

 北朝鮮と米国が抑留されたジェフリー・ファウルの釈放を契機に見せた態度は、多くの面で異例だ。 まず北朝鮮は、抑留者3人の釈放と関連して「米高位級要人の訪問」などを一貫して要求してきた。 このような点で特使や高位級要人の訪北という通常の手続きなしにジェフリー・ファウルを先に釈放したことは‘予想外の決定’と評価される。 実際、2009年3月北朝鮮と中国の国境地帯で抑留された米国人女性記者2人は、ビル・クリントン元大統領の訪北を通じて釈放された。 2010年に不法入国の疑いで8年間の労働教化刑を宣告された米国人アイジャロン・マーリ・ゴメスもジミー・カーター元大統領が北朝鮮を訪問し連れて帰った。 政府消息筋も「交渉や条件提示を通して解決したわけではないようだ」として「北朝鮮の既存のパターンとは違う」と分析した。

 北朝鮮の動きは、最近ファン・ビョンソ人民軍総政治局長など北朝鮮高位級3人の韓国訪問、リ・スヨン北朝鮮外相の国連訪問など一連の攻勢的な対外戦略とも脈を同じにするものと見られる。 キム・ヨンチョル仁済大学教授は「積極性と開放性は金正恩体制に現れた異例的な現象」とし「外交分野で孤立から抜け出てみようという意図と、体制に対する自信が基礎にあると見られる」と明らかにした。 また、チャン・イルフン国連駐在北朝鮮代表部次席大使は22日『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』とのインタビューで、必要ならば人権実態調査を受けることも可能という破格的な立場を明らかにした。

 ケリー国務長官の発言も、彼がこれまで何度も対北朝鮮強硬発言をしていた点に照らしてみれば、意外と受けとめられている。 ケリー長官は2月26日、米国のある放送とのインタビューで「北朝鮮は地球上で最も閉鎖的で残忍な地の一つ」として「これ(北朝鮮)は悪(evil)であり、邪悪な地」と規定するなど、北朝鮮に対する敵対感を示してきた。 特に国連総会を契機に韓国や日本の外交長官などと共に「北朝鮮人権長官級会議」を主宰するなど、人権問題を浮き彫りにして北朝鮮を圧迫してきた。

 今後、短期的な朝米関係の行方は残る2人の米国人抑留者がどのように処理されるかにかかっている。 ジェフリー・ファウルは解放されたが、北朝鮮にはそれぞれ15年と6年の労働教化刑を宣告され服役中のケネス・ペ氏(46)とマシュー・ミラー氏(24)の2人の米国人が依然として抑留されている。 ヤン・ムジン北韓大学院大学教授は「北朝鮮は国連で対北朝鮮人権問題と関連した米国の立場の緩和を要求し、米国は11月の中間選挙前に自国民の釈放を要求するだろう」とし「このような過程が円満に履行されれば、中間選挙後、年内に米国の高位級特使が北朝鮮を訪問し抑留中の残り2人も解放されるだろう」と話した。

 中長期的には6者会談の再開条件を巡る朝米間の水面下での調整が関係復元の核心的な鍵になるものと見られる。 北朝鮮は条件なき6者会談の再開を主張しているが、米国は核とミサイル実験の猶予、および核活動の中断を前提条件として掲げているためだ。 今のところは両者の認識の差があまりに大きく、簡単に接点を見いだせるかは不確実だ。

キム・ウェヒョン記者、ワシントン/パク・ヒョン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/661041.html 韓国語原文入力:2014/10/22 23:15
訳J.S(2280字)

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