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ヨーロッパ全域で広がる対米FTA推進反対の大規模デモ

登録:2014-10-13 20:04 修正:2014-10-14 06:26

労働条件・環境条件など大幅後退が予想され
牛肉など食の安全問題が浮き彫りに

 欧州連合(EU)と米国間の自由貿易協定(FTA)推進に反対する大規模なデモが11日、欧州全域で大きなうねりを見せた。主な反対理由は、難航の末に米国との自由貿易協定を締結した韓国の事例とほぼ同じだった。世界最大の経済圏の一つである欧州連合内でも、米国式資本主義システムが無制限に流入する可能性に対する恐怖がかなりのものであることを見せつける。

 デモは、英国、ドイツ、フランス、スペイン、イタリアなど欧州各地で繰り広げられた。英国だけでもロンドンなど15の地域でデモが行われたと英国『BBC』放送が伝えた。同日のデモの準備に関与したある社会団体関係者は、少なくとも欧州24か国400あまりの地域でデモが行われたと推算した。米・欧州連合自由貿易協定は「汎大西洋貿易と投資パートナーシップ」(TTIP)、または「汎大西洋自由貿易協定」(TAFTA)と呼ばれるが、デモ隊は「ストップ TTIP 」「ストップ TAFTA 」と書かれたプラカードや横断幕を掲げてパフォーマンスと行進を行なった。

 欧州連合と米国は昨年、貿易と投資を強化し、より高い成長とより多くの雇用を達成するという目標の下に、自由貿易協定交渉に乗り出した。以後、欧州内では激しい論議が広がっている。反対論者たちは、米国との自由貿易協定で欧州連合諸国の労働条件と消費者保護、環境規制などが大幅に後退する恐れがあるという点を憂慮している。特に、食の安全が脅かされかねないという点を指摘する声が高い。 米国産食料品の輸入が自由化されれば、欧州では一層強力に規制している遺伝子組み換え農水産物や塩素洗浄を経た牛肉や鶏肉などが大量に輸入され流通しかねないという主張だ。

 投資家対国家間の紛争解決(ISD)条項も中核をなす憂慮事項だ。欧州連合に投資した米国企業がある国の政策変化によって利益を侵害される場合、当該国家を提訴できるようにする条項だ。この条項は、韓米自由貿易協定締結の過程でも賛否が鋭く衝突した最大争点だった。韓国と同様に欧州の反対論者たちも、この条項が導入されれば、米国企業にヨーロッパの各種の基準を変えさせられる実質的影響力を付与することになるだろうと懸念している。英国では特に、国民健康保険(NHS)システムが脅かされかねないという憂慮が大きい。政府が替わって関連政策が変化する場合、米国企業がこの条項を利用して、不利益の補償を求めて提訴できるということだ。 欧州連合執行委員会がこのような反対を意識して実施した公共協議の過程では、なんと15万件の意見が寄せられた。

 欧州連合執行委員会は、交渉を通じて既存のヨーロッパ式基準が損なわれることはないだろうし、交渉過程もまた透明に公開されるだろうと防御に乗り出した。国民健康保険と関連した英国などの主権にも何ら影響がないだろうと強調した。しかし、欧州連合各国の労組と社会団体などでは、自由貿易協定が締結されれば健康保険民営化の動きが加速化される可能性が高いとし、このような分野は交渉から排除することを要求しているとBBCは伝えている。

ソン・ウォンジェ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/europe/659398.html 韓国語原文入力:2014/10/12 22:16
訳A.K(1513字)

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