世界最高水準である韓国の通信網
ほとんど利用者の料金で構築され
通信企業の超過利益は投資誘導の結果
減価償却によって引き下げられた料金
2006年からは“割引”形態に変身
これまで政界・市民団体・利用者側と政府・通信社側とは、韓国の通信料金が外国より「高い」か「高くない」かを巡り論戦を繰り広げてきた。 経済協力開発機構(OECD)とグローバル投資銀行などが国別通信料金水準を比較した資料を出すたびに、市民団体は「韓国が諸外国より高いではないか」と主張し、未来創造科学部と移動通信企業は「料金制を誤って比較している」として反論資料を出すこともあった。
この過程で原価に対する通信料金のレベルが適正かどうかは関心外に追いやられた。今回公開された監査院の未来部に対する監査内容は、ここに焦点を合わせていて、今までの議論とは様相が異なる。
国内通信市場が歪曲されたのは、政府と通信企業の“共生関係”が原因を成している。 通信は装置産業であり、初期通信網を構築する際に投資が集中する。 したがって料金も初めは高く策定され、減価償却にともなう原価減少に応じて下がる手順が踏まれる。 移動通信の料金は、2000年代中盤まで“機会”がある毎に下がった。 主に選挙を控えて市民団体と消費者が料金の引き下げを要求すれば、当時の情報通信部が基本料・通話料・加入費・携帯メール料金・発信者番号表示料金(CID)等、移動通信料金を構成する項目の中から一つか二つの料金を下げた。可能であれば移動通信企業の売上に影響が少ないものなどを選んだ結果、消費者が体感する引き下げ効果が殆どなく、いつも“恩着せがましい”水準を越えられなかった。 「移動通信料金を10%下げる場合、各利用者には月一回のジャージャー麺くらいの金額にしかならないが、集めれば年間で1兆ウォンほどになり、産業を一つを作れる」と言った盧武鉉政権当時のチン・デジェ元情報通信部長官の話は料金引き下げに対する政府の見解を端的に示した。
ところで、2006年前後からは通信料金の引き下げがほとんど行われなかった。 代わりに“割引”という方法が使われた。 長期使用割引、約定割引、家族結合割引など多様な割引が登場した。 だが“二重割引不可”のせいで、利用者側から見れば一つを除いた残りの割引はすべて“絵に描いた餅”にすぎなかった。 このような状況は今でも続いている。 これと共に、定額料金制を通じて料金を引き上げもした。 実際、2012年のLTE通信網商用化以後、加入者当たりの売上(ARPU)は急速に増えている。
それでは、未来部はなぜ通信企業のこのような動きを傍観しているのだろうか? 韓国はいわゆる通信網の品質および普及率では世界最高水準であり、品質の良いネットワークが豊富に築かれている。このようになるまで政府の一般予算は一銭も投入されず、通信企業がこれをみな負担してきた。そして、そのほとんどは、通信企業が利用者から受け取った料金で充当された。 政府は通信社に料金を高く受け取れるようにする代わりに、これを通じて通信企業が超過で得た利益を通信網構築拡大などに投資するようにし、周辺産業の需要を起こし、ベンチャー企業の創業を活性化する政策を繰り広げたのだ。 盧武鉉政権時期、チン・デジェ情報通信部長官は、これを“IT 839”として図式化し宣伝した。
そのために現在の通信料金には“ぜい肉”と“隠された部分”が多い。 料金を引き下げるためには“超過利益”を最小化しなければならず、従ってそれを避けるには隠すことが最善であるわけだ。
通信企業は通信料金の適正性を問い詰めようとする動きに対し「政府と市民団体が民間企業の事業に過度に深く介入しようとしている」と不満を提起している。 しかし、市民団体はこれを一蹴する。 アン・ジンゴル参与連帯協同事務局長は「電気通信事業法は『通信料金は利用者が便利で多様な電気通信役務を公平且つ安価で提供されるよう合理的に決定されなければならない』と規定している」として「通信料金は未来部長官の統制を受けることになっていて、したがって家計の通信費負担が高まったことには未来部の責任も大きい」と指摘した。