1945年、中国が初めて日帝の降伏を受理した湖南省枝江へ向かう道は険難だった。2~3年に一度あるかないかの落雷と暴雨が往復する間ずっと飛行機の翼にまとわりついた。どうにもできずに浪費した時間だけで約7時間。悪名高い中国の航空機の延着を体験した瞬間だった。
終日ひどい目に遭って到着した枝江の抗日戦争勝利記念館で韓国人記者の気を引いたのは、「中華民族の不屈の抵抗」でも「栄光の勝利」でもなかった。紛れもない中国共産党政権下で、堂々と掲げられた台湾国民党の青天白日旗と蒋介石の大きな肖像画だった。肖像画の中の蒋介石は、制服姿で腰に剣をさした堂々たる姿だ。かつて中国共産党が「土匪」とけなした彼だ。中国共産党当局者は「国民党が前面で戦い、共産党は後方で敵を撹乱した。抗日は共に戦った戦争だ」と説明した。博物館の記念品売場では蒋介石と毛沢東がユーモラスに肩を組んだ陶磁器の人形を売っている。
国民党と共産党の指導者だった二人は元首に近い立場だった。蒋介石は共産党を撲滅対象と考えた。当時圧倒的強者だった国民党は、毛沢東夫人の楊開慧も処刑した。1936年西安事変の後にやむを得ず第二次抗日国共合作を行う前まで、蒋介石は目を皿のようにして共産「匪賊」の討伐に邁進していた。共産党が栄光の神話と称える大長征も、実際は国民党に追い回された共産党の惨めな大後退に近い。
枝江抗日記念館の風景は、馴染みにくく非現実的なこと極まりなかった。乏しい想像力は、直ぐに分断された朝鮮半島に向かった。
果して韓国でこの様な風景は可能だろうか? 韓国のどこの抗日記念館で、冷静に事実に即して金日成の抗日活動を扱うことができるだろうか?分断以後に進行した北朝鮮による誇張と韓国による卑下から自由な、ありのままの事実に基づく歴史の話だ。北朝鮮の歴史を研究してきた和田春樹東京大学名誉教授は、著書の<北朝鮮現代史>で「金日成が1932年に満洲間島で朝鮮人抗日パルチザンを組織し、普天堡攻撃を主導して日本の前田中隊を全滅させた。ただし、普天堡攻撃当時、5人の日本の巡査は全員逃げ出し、120人の前田部隊の戦死者は大部分が朝鮮人だった」と指摘いている。韓国のどこの博物館の記念品売り場で、金九あるいは李承晩と金日成がユーモラスに肩を組んだり握手する人形を見られるだろうか。どこの記念館の解説者が「南と北のリーダーが共に日帝に抵抗した」と話せるだろうか。
その数日後、中国官営メディアは「政府が公式発表した抗日烈士300人のうち、国民党出身人士が三分の一を占めた」と報道した。
枝江の蒋介石の肖像画と青天白日旗、国民党出身の抗日烈士選定を貫くのは、まさに中国共産党の自信だ。アメリカと肩を並べる二大強国に浮上したという自信が、両岸関係にも染み出たわけだ。あえて国民党と台湾をけなさずに過去を事実通りに認めても、基盤は揺るがないという余裕があるという話だ。中国の余裕の中で両岸関係は、これまでのどの時より密月だ。
韓国も少しは余裕をもってできないのだろうか。中国と台湾のような顕著な差ではなくとも、韓国も経済力で北朝鮮を40倍以上上回っている。ある中国の学者は「北朝鮮が韓国と比較にならないことを、世界中の誰もが知っている。それなのに韓国はなぜ『目には目を、歯には歯を』で対応し、自ら格を落とすのか理解できない。それほど自信がないのだろうか?」と語った。もう少し自信を持って大きな気持ちで一つ二つは大目に見てやって進んではいけないのだろうか?それは保守の為政者たちが言う「無邪気な油断」なのだろうか?。