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[世相を読む] 思想攻勢と無能の関係/キム・ヨンチョル

登録:2014-05-19 00:06 修正:2014-05-19 07:35
キム・ヨンチョル仁済(インジェ)大統一学部教授

 選挙の時節だ。 思想攻勢を持ち出す候補者がいる。 この残酷な季節にだ。 全て無能な者たちだ。 そして腐敗した者たちだ。 親日派が反共という服で自身の悪行を隠したように、独裁政権が北風で民主主義を弾圧したように、無能な者どもは思想攻勢で自身の正体を隠そうとする。

 彼らは言う。 安保思想が疑わしいと。 安保とは何だろうか? 国家の領土と主権、そして国民の生命と財産を守ることだ。 ところで訊ねたい。 あなた方は果たして安保を語る資格があるのか? 国民の生命を守ることができない、そのような安保は誰のためのものなのか? セウォル号は、口さえ開けば安保を言う者どもが、実際にはどれほど安保に無能なのかを確認させた。 理念の服で隠されていた無能と腐敗の素顔もあらわれた。

 あなた方の安保思想はあまりに古くさい。 包括安保という概念を知っているか? 多くの先進国では、1980年代以後に軍事安保を越える包括安保を追求した。 我が国も同じだ。 包括安保と協力安保を初めて導入したのは金大中政府だ。 盧武鉉政府は災難管理システムを整備して、大統領府に危機管理センターを設置した。 それで非伝統的安保に積極的に対応した。

 李明博政府からは再び過去に戻った。 熱心に作られた災難管理マニュアルを破棄した。 朴槿恵(パク・クネ)政府も同じだ。 包括安保という概念自体が存在しない。 大統領府が災難管理のコントロールタワーではないと話した。 恥ずかしいことだ。 如何に多くの国家が、伝染病・気候変化・そして自然災害に対応するために努力していると思っているのか? 訊ねたい。 国民の生命より重要な安保的価値がどこにあるのか? あなた方はいったい何を守ると言っているのか?

 あなた方はあまりに永く思想攻勢に依存してきた。 思想攻勢は一方的で、現実を考慮せず、理性的でない。 去る大統領選挙で朴槿恵候補側が振りかざした北方境界線問題はどれほど卑劣だったか? 安保に国内政治からのみ接近すれば必ず問題が発生する。 色眼鏡を長くかけていれば現実を見る能力が落ちる。 山で発見された壊れた扉を、北朝鮮製の無人機だと発表した国防部のように。

 今回のセウォル号事態の核心の一つも虚偽の状況報告だ。 海洋警察はでたらめな報告をしたし、大統領府は正確な状況把握能力がなかった。 それで初期対応の機会をのがした。 緊急状況で正しい判断ができない構造、常に繰り返される人災の共通点だ。 無能と思想攻勢の悪循環、それが問題だった。

 思想攻勢はまた、どれほど分裂的なのか? いつも組に分ける。 人事は能力と専門性を考慮しない。 政府と政府傘下機関を占めた人々の面々を見なさい。 どうすればあれほど無能な人々だけを選ぶことができるのだろうか? 今後セウォル号特検が行われれば、驚くべき無能競争を見守らなければならなくなるだろう。 このような状況で人が変わることに何か意味があろうか? 朴槿恵政府は人事に於いて能力を重視しない。 ひたすら思想の色合いを重視するのみだ。 そして思想攻勢は和解を拒否し、超党派的協力を否定する。 そのような安保はまた、どれほど虚弱だろうか?

 セウォル号事態を経て古い安保が沈没した。 国民の生命を守れない安保、それでも安保をいえるか? この渦中にも思想攻勢を持ち出す者はどこまで厚かましいのか? 未だ無能と腐敗を思想の帽子で覆えると考えているのか? 問題の核心は制度とシステムではない。 無能な者が席を占めている。 そうした者がまた、席を占めようとしている。 色眼鏡をかけてだ。 市民の叫びを聞かなければならない。 これでは不安で生きていられないという叫びを。

キム・ヨンチョル仁済(インジェ)大統一学部教授

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/637563.html 韓国語原文入力:2014/05/18 18:18
訳J.S(1697字)

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