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[世界ズーム・イン] 原発推進派だった小泉は、なぜ脱原発に転向したか

登録:2013-11-15 00:02 修正:2013-11-15 07:20
12日、日本東京千代田区の日本記者クラブ9階大会議室で小泉純一郎 元日本総理が‘原発ゼロ’(脱核)を強調する記者会見を行っている。 2006年に退任して以後、初めての記者会見を自ら要望した小泉元総理はこの日、芳名録に‘百考一行’(百回考えるより一回の行動がより良い)と書いた。

 "苦痛を厭わず、既得権の壁に押されず、過去の経験に執着せず、‘厭わず、押されず、こだわらず’の姿勢を前面に掲げて聖域なき構造改革を進めます。"

 2001年5月7日、日本国会 本会議場。 10余日前に行われた自民党総裁選挙で圧倒的な票差で待望の総理の席に上がった小泉純一郎の顔には自信がみなぎっていた。 彼はこの日、国会で‘所信表明演説’を行い、自身が今後追求していく政治路線を‘改革’と宣言した。 彼の執権5年5ヶ月に対する評価は人によって大きく異なるだろうが、彼が‘やると言ったらやる’という意志の政治家だという事実に異議を提起する人は多くない。

総理時期、放射能廃棄物施設 訪問
核燃料処理 建設問題に目覚め
原発で利益を得る既得権層に幻滅
原発反対を叫ぶ‘民意’代弁
安倍総理に脱原発の決断を要求
‘日本国民 55%の賛成’を得る

 それから12年が過ぎた今、小泉はもう一度日本政界で‘台風の目’として浮上した。 2011年3月おぞましい福島核発電所事故が起きた後、彼が新たに掲げた旗は他でもない‘脱核’だ。 去る12日、退任以来7年ぶりに初めて開いた記者会見で、小泉元総理は安倍晋三総理に向かって「直ちに脱核を決断しなさい」と促した。 <朝日新聞>等、日本の有力紙が翌日の13日付新聞に彼の発言を1面トップで紹介し、<毎日新聞>は敢えて小泉の脱核主張に‘国民の55%が賛成’しているという世論調査結果とともに‘(安倍)総理は(小泉の脱核主張に)耳を傾け決断を’という題名の社説まで載せた。

 総理在任期間には核発電推進派だった小泉は、なぜ脱核に転向したのだろうか。 直接的な契機は去る8月、フィンランド オンカロ放射能廃棄物最終処分場を訪問した経験だった。 首都から飛行機で一時間、船で20分離れた辺境の島に400m程度岩を突き抜けて縦・横2kmの大型広場を作った姿を見て、地盤が不安で地下水が多く出る日本ではこのような施設を作ることは不可能だという事実を直感したということだ。

 小泉元総理の主張どおり、日本政府は使用済核燃料処理問題で頭を痛めている。 日本で商業用核発電が始まったのは1966年だ。 その後半世紀の間、日本全域に建設された核発電所に保管されている使用済核燃料の量は何と1万4870tに達する。 日本の経済産業省の予測を見れば、核発電所が以前どおりに正常稼働する場合、各核発電所に作られた核燃料保存施設は7年で飽和状態となる。 日本政府はこれに備えて本州の最北端にある青森県六ヶ所村に使用済核燃料の再処理工場を作った。 使用済核燃料からプルトニウムなどを抽出し体積を減らした後、ここで発生した廃棄物を保管する最終処分場を建設する計画だった。 しかし当初1997年に完工予定だった再処理工場は、現在までに何と19回の事故を起こしたあげく未だに正常稼働出来ていない。

 再処理工場が稼動したとしても問題は残る。 日本は2000年に関連法により地下300mの空間に10万年間廃棄物を保管できる処分場を建設するという基準を制定した。 しかし去る10年間、最終処分場を誘致すると名乗り出た地方自治体は一ヶ所もない。 小泉前総理が「大惨事の前にも候補地を探せなかったのに、大惨事を体験した今、処分場を作れると主張する人々こそ(脱核を主張する私より)はるかに楽観的で無責任な人々」とトーンを高める理由だ。

小泉元総理の政治履歴から転向の理由を見出す視角もある。

 1970年、小泉は後に日本の67代総理になった福田赳夫議員の秘書として政治に入門した。 当時20代後半だった彼の任務は、福田議員の家の前の玄関で履き物を整理することだったと言う。 しばらくして佐藤栄作総理の後任の席を巡って、彼が仕えた福田議員と田中角栄前総理の間に接戦が繰り広げられた。 勝者は田中元総理であった。 以後、総理の席に上がった田中は、国土のバランスが取れている開発を名分として前面に掲げた‘国土改造論’を唱えて日本国土のあちこちで大々的な公共事業を行う。 日本全域で公共事業を行い、それによって生じる利益を分配する自民党式‘金権政治’が始まったのだ。 小泉前総理は以後 「自民党を壊してしまう」、「私の改革に反対する人々は全て抵抗勢力」という語録を残すが、この時、彼が名指しした既得権層とは他でもない田中から続く自民党内主流派閥(当時 橋本派)だった。

 このような観点で見るならば、核発電所ほど田中式金権政治の法則が徹底的に具現されている産業も他にない。 核発電業界はすでに巨大電力会社-核発電所メーカー-専門家グループへと連結される巨大なマフィア グループを形成している。 それだけではない。 核発電所を誘致した地方自治体と住民たちも、核発電所を誘致した代価として国家が与える莫大な交付金に依存して生きている。 去る3年間、日本社会は核発電所がなくとも問題なく回っていたし、東京電力はさらに大地震以後に断行された電気料金引き上げのおかげで今年前半期には1416億円の黒字を記録した。 それでも核発電所で莫大な利益を得ている既得権層が市民が心から願っている脱核要求を遮っているわけだ。

 最後に小泉の最近の脱核への歩みの原因を2005年‘衆議院解散’という強硬姿勢の末に郵政民営化法案を通過させた経験に求める視角もある。 実際、小泉は12日の記者会見で郵政民営化の経験を何度も繰返し話して 「今はすべての野党が原発に反対しているので総理が決断さえすれば出来る」「当時に比べれば政治環境がとても良い」「現在の状況がとてももったいない」と話した。 安倍総理さえ決断すれば、日本が脱核社会として出て行くことが可能なはずなのに、それを決心できない状況がとても残念で、連日積極的な発言を続けているということだ。

 しかし、小泉の‘単独行動’だけで変化が起きそうではない。 ひとまず批判の対象になった自民党がビクともしていない。 12日の記者会見直後、菅義偉 官房長官は「小泉元総理の所信は認めるが、政府としては責任あるエネルギー政策を推進していくことが重要だ」として既存の態度に変わりがないことを強調した。 自民党の実力者である石破茂 幹事長も「原発依存度を低くするという方向性は(小泉総理の主張と自民党の見解が)互いに同じだ」という発言に終わった。 国民的支持を受けている小泉とはできるだけ摩擦を起こさずに現在の不利な状況を乗り切ろうという下心と読める。 <朝日新聞>も "安倍政府は安全性が確保された原子力発電所は再稼働するという方針であり、それにより現在のエネルギー基本計画を作成していて政府見解が変わることは容易でない」と指摘した。

 結局重要なのは小泉ではなく日本人の民意だ。 実際、吉田忠智 社民党党首、渡辺喜美 みんなの党党首らが小泉を政治的に活用するため彼と会合したが、特別な成果はなかった。 小泉も12日の記者会見で 「総理が決断すれば脱核が可能だ」として、あくまでも自民党の枠組みの中で、安倍総理による脱核が進行されなければならないという態度を曲げなかった。 <東京新聞>はこれと関連して "小泉元総理に、自身が幹事長と官房長官などに抜てきした安倍総理は弟子のような人」として野党と小泉の間の政治的連帯が実現する可能性は少ないと展望した。

 <朝日新聞>は14日付社説で "(核発電所をなくさなければならないと考える)多くの人々が立ち上がり街頭やインターネット空間で意見を浴びせたが政界はこれに耳を傾けなかった。 これを代弁したのが小泉の一連の発言" と指摘した。 結局、日本の市民社会は小泉が代弁した真の民意をどのように政治に反映しなければならないのかという‘新しく古い’質問に戻ってきたわけだ。 ‘厭わず、押さえられず、執着せず’自分たちの人生に対する解答を提示しなければならないのは小泉ではなく日本人たち自身だという真理を最近の小泉現象は改めて悟らせる。

東京/キル・ユンヒョン特派員 charisma@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/611256.html 韓国語原文入力:2013/11/14 21:53
訳J.S(3600字)

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