こんにちは。 文化部映画担当ホン・ソクチェ記者です。 先週末、全州(チョンジュ)国際映画祭で『天安(チョナン)艦プロジェクト』を演出したペク・スンウ監督に会ったのですが、 ペク監督に「こんなふうに(優しく)話す記者は初めて」とほめられる程に、相当親切な記者です。 私は運動も少々やり、社内サッカーチームの主戦攻撃手ですが、 ちょうど4日から50余りの報道機関が出場する韓国記者協会のソウル地域サッカー大会があります。 今日は大会を控えて体をほぐすつもりで、国防部に 一度バックタックルをかけてみようかと思います。
何日か前、国防部がドキュメンタリー映画『天安艦プロジェクト』の上映禁止仮処分申請を検討しているという記事が出ました。 国防部関係者は「映画の内容が虚偽の事実や軍の名誉を傷つける可能性がある場合、仮処分申請ができるか分析してみるよう海軍に指示した」と言っています。 なぜそうしたのでしょうか。
『天安艦プロジェクト』は先月27日全州国際映画祭で初めて公開され、いまやっと2回上映されたところです。 当然多くの読者はまだご覧でないと思います。以前上映された時、軍服姿の人たちも見えなかったように思いますが、指示を下した国防部関係者は映画を見たのだろうかということも知りたいところです。 いずれにせよ、どんな内容なのか簡単にご紹介しましょう。
2010年3月26日夜10時頃、天安艦が白翎島(ペンニョンド)付近の海で沈没しました。 国防部の公式発表によれば、北の偵察総局が魚雷を利用して天安艦を水中で真っ二つにしたという事件で、当時韓国海軍将兵46人が死亡あるいは失踪しました。
映画は国防部発表において釈然としない部分を大きく8つに分けて見せてくれます。 △座礁か爆沈か△北の半潜水艇による魚雷攻撃は可能なのか△救助過程は正常だったか△“第3の浮漂”の場所の潜水艦存在説などです。 当時社会部24時チーム(警察チーム)所属で 白翎島(ペンニョンド)で随分一生懸命取材したことを思い出します。生きていると天安艦とまたも、このように関わりあうことになるんですね。 それなりに事件を綿密に調べた私としても、いくつか気がかりなことがどうも上手く解けないんです。
先ず、沈没した天安艦を探すのに何故それほど長くかかったのでしょうか。 韓国海軍には“サイド スキャンソナー”(側方監視用水中音波探知機)というものがあります。 これが一度すうっと舐めるようにして通り過ぎれば、海中の左右1.5kmの距離にある突出物を全て見つけることができるそうです。 昨年末、北がロケットを打ち上げたことがあるでしょう。 その時、サイド スキャンソナーによって、全羅北道(チョルラブクト)群山(クンサン)から西方に160km離れた広い広い海の底で、1㎡にもならない大きさのロケット残骸物10個余りを見つけました。 天安艦は長さだけで言えばサッカー場ほどもあります。 その上、水深20~40m程度の浅いところに沈んだのです。 軍は何故このような装備を使わなかったのでしょうか。 『天安艦プロジェクト』で海難救助および引き揚げ専門家のイ・ジョンイン氏が積極的に問題提起をしている部分です。
また別の疑問として、北が撃ったという魚雷推進体を延縄(はえなわ)漁船が見つけ出したということがあります。 当時私は“プサンサナイ(釜山の男)”のこの延縄漁船の船長さんに会いに釜山(プサン)に行ったんですけれど、 彼は「私が引き上げたのだから疑う余地はない。 奇跡のようなことだ」と言いました。 彼の語り口からは真正性が感じられました。でも、韓国海軍が延縄漁船にも劣るというのは信じ難いことでした。 最近南北関係が本当にもどかしいばかりですが、最近のような状況では、延縄漁船に非常待機でもしてもらわないといけないのでは、という気がします。
最後に気がかりを越えて胸が痛く感じられるのは、天安号に閉じ込められた将兵46人のうち、ただの1人も救い出すことが出来なかったという点です。 救助作戦は理解し難い程のろく進められました。 海軍関係者たちの実際の法廷証言を見れば、艦首・艦尾の捜索チームが現場で互いに情報交換さえしなかったそうですね。 理由は「互いに無線機が合わなかった」というのです。 いったいこれが話になりますか? “69時間生存説”で希望拷問を加えるに至っては、あまりにも残酷だという感じすら受けます。
国防部は「北の魚雷攻撃を受けたと我々が結論を下したらそれで十分ではないか、何が変だというのか」と言って法廷攻防を行う勢いです。 映画を企画・製作したチョン・ジヨン監督はこれを“暗黒時代”と簡単に整理したそうです。 2,3日前電話でまた会ったペク監督はこのように話しました。 「天安艦事態がまだ尖鋭な論難になるのは、政府と軍をはじめとする韓国社会の疎通不在のせいだということを言いたかったのです。 上映禁止仮処分申請なんて想像もできませんでした。 観客が『良かった』とか『良くなかった』とか言うことはできます。 しかし国防部が『この映画は存在できる』とか『できない』とか言う権限はないでしょう」 ペク監督の主張に同意します。 『天安艦プロジェクト』は犯人を捕まえるスパイ映画ではありません。 社会的疎通不在を語る映画を巡り、またも疎通ができないから、もどかしい限りです。 私の考えはこうです。 どうせ開けられた口なんですから、言いたいことはちょっと言って暮らしましょう!
ホン・ソクチェ文化部大衆文化チーム記者 forchis@hani.co.kr