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[社説]‘脱北スパイ事件’捏造騒ぎ 遺憾

登録:2013-04-30 01:22 修正:2013-04-30 06:39

 今年初めにあった‘脱北ソウル市公務員スパイ事件’を巡って捏造騒ぎが起きている。ソウル市庁に勤務しながら脱北者の情報を北韓に渡した疑惑などで起訴された北韓華僑出身の公務員ユ氏の妹は、一昨日記者会見を行って兄のスパイ疑惑について「国家情報院の強要と懐柔で偽りの証言をした」と主張した。これに対し国家情報院は反論資料を出して「妹の陳述の他にも様々な証拠がある」として虚偽の事実を指摘したことに対して法的措置を取ると明らかにした。両者の主張が対抗しており、真偽を判断するのは早計な段階だ。裁判が進行中であるだけに真実を法廷で明確に確かめ、重要な犯罪行為が隠蔽されたり、不満に苦しむ被害者が出ることの無いようにしなければならない。

 北韓に住んでいた華僑であったユ氏兄妹のうち、医者だったユ氏は2004年に脱北して韓国に定住し、2006年に母親の葬式のために北韓に密入国する過程で北韓保衛部に捕まり工作員として抱き込まれたというのが捜査当局の判断だ。以後、保衛部の指令により200人余りの脱北者の個人情報を収集し北韓に渡した疑惑で拘束起訴された。妹もやはり脱北して昨年10月に入国し、審査を受けるために中央合同尋問センターに6ヶ月近く過ごしていたとき「兄が工作員として抱き込まれた」と打ち明けたと言う。

 ユ氏に対する捜査が妹の陳述で始まったという点は国家情報院も認めている。ただし国家情報院は他の脱北者が兄の北韓密入国の情況を証言するなど、妹の陳述以外にも多くの証拠を掴んでいると主張している。これに対して妹は中国の延吉(ヨンギル)で撮った家族の写真やカラオケで撮った写真を見せて「兄は北韓に密入国したのでなく、当時は家族と正月連休を過ごしていた」と反論している。自身の陳述についても「頭を殴られたり体をけられたりする威圧的な雰囲気の中で、‘兄は全て自白した’として陳述書を持ってきたので、やむをえず認めただけ」として「お前さえ認めれば兄が1~2年だけ刑を受け、2人で韓国に住めるようにしてやる」という懐柔もあったと主張している。

 妹の主張が事実なら、スパイ事件の根幹である証拠が崩れかねないという点から、真偽をしっかり確かめなければならない。特に華僑であることが明らかになったのに6ヶ月近く事実上拘禁したことや、部屋の時計のガラスを割って自殺を試みるほどに抑圧的な状況で調査が成されたとすれば正当性を認め難い。

 裁判所は国家情報院が示す資料の証拠能力と共に、妹が主張する調査の威圧性を綿密に調べて賢明な判断を下すことを望む。

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/584888.html 韓国語原文入力:2013/04/28 19:03
訳T.W(1186字)

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