「問題がなかった期は一度もありません。そもそも秘密にしていたせいで知られていなかっただけです」(元南極基地隊員のAさん)
韓国の南極研究の拠点となっている南極科学基地で、過去数年間にわたり隊員間の暴言、暴行、セクシャルハラスメントを訴える通報が続いていたことが確認された。同僚との対立の末、刃渡り47センチの刀剣を振り回す騒ぎを起こした張保皐(チャンボゴ)科学基地の隊員が先月拘束起訴された中、ハンギョレが接触した元隊員たちは「積もり積もった問題が表面化した」と口をそろえた。外部と遮断された極限環境で繰り返される対立が何度も危険な水準を超えたにもかかわらず、運営主体である極地研究所の安易な対応と閉鎖的な組織文化によって危機的状況が放置されているとの指摘だ。
イム・ミエ議員室(共に民主党)が極地研究所から提出を受けた「南極科学基地内の事件・事故および苦情通報受理内訳」を2日に確認したところ、南極の世宗(セジョン)、張保皐の両基地では2021年に暴言・性的不正報告が2件、2022年には越冬隊長による暴行・パワハラ事件が発生しており、今年4月には凶器振り回し騒ぎまで起きている。過去5年間に発生した8件の「早期帰国」のうち、4件は「個人の事情」が理由と記録されている。元隊員たちは「個人の事情とされる帰国の多くは基地での内部対立が原因だろう」と語った。
実際に、世宗基地の第35次(2022年)越冬研究隊では、越冬隊長のB氏と隊員たちとの対立が激しかったことが明らかになった。元隊員たちの証言によると、B氏は同僚の日常生活を撮影していたある隊員の腕をねじあげて暴行したこともあるという。しかし、暴行の被害を受けた隊員はむしろ勤務怠慢を理由に人事審議委員会に付され、早期帰国措置が取られた。隊員のC氏は「複数の隊員が嘆願書を提出したが通らなかった」「研究所はB氏が越冬隊長であるという理由で対応に消極的だった」と語った。B氏は2024年12月に暴行罪で罰金30万ウォンを言い渡されたが、研究所は昨年になってようやく「けん責」という軽い懲戒処分を下すにとどまっている。
2021年の世宗基地(第34次)でも、暴言と職場内でのセクハラ通報が受理されていた。研究所は、暴言は合意で終結しており、セクハラは労務法人の調査後に「問題なし」という結論を下したと語った。A氏は「(第34次の)活動が終了するころには、(研究所側が)基地の防犯カメラの記録を確認するなど、雰囲気が険悪だった」と語った。
18人の隊員が越冬期間(3~12月)に孤立生活を送る南極基地では、加害者と被害者の分離が困難なため、事前に対立を調停することが不可欠だ。しかし、海洋水産部傘下の韓国海洋科学技術院の附属機関である極地研究所は、問題が起きても外部への露見を防ぐための一時的な措置を取るにとどまっていると隊員たちは指摘する。とりわけ研究者の場合は、国内で南極研究の独占権を握る極地研究所に対して積極的に問題を提起することも難しい構造となっている。元隊員のD氏は「隊員のほとんどが1年契約のため、研究所は『今回さえ乗り切れば済む』という考えが強い」と語った。
イム・ミエ議員は「閉鎖的な構造を持つ公共機関が加害者中心の行政を便宜的に繰り返してきた結果が、今回の凶器騒ぎ」だとして、「根本的な対立管理システムの整備が急務だ」と述べた。極地研究所は「対立が生じたら、問題のある隊員を懲戒するとともに、出南極などの措置を取ってきた」とし、「凶器騒ぎ後、先月27日にタスクフォース(TF)を立ち上げ、越冬隊の選抜過程での検証の強化、対立時の現地対応力の向上策などを整備中」だと語った。