李在明(イ・ジェミョン)大統領は1日の107周年三一節記念演説で、新たな話題を積極的に投げかけることはしなかった。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記が「韓国は徹底した敵国、永遠の敵」だと述べて「反統一敵対的二国家論」を対南戦略の基調として再確認した労働党第9回大会、イランの最高指導者ハメネイ師を殺害した米国の「斬首作戦」などが引き起こしている「平和に対する逆風」を考慮したものだ。李大統領は「3・1革命が起こった1世紀前の世界」を「強者が弱者を収奪する時代」、今を「民主主義と平和が脅かされる危機の時代」と規定した。
李大統領は、一見するとこれまでの見解を繰り返したように聞こえる記念演説に、重要な新戦略を盛り込んだ。「停戦体制を平和体制へと転換していけるよう全力を尽くす」という誓いが代表的なものだ。李大統領が昨年6月4日の就任からこれまでに、公開の演説や会見で「停戦体制の平和体制への転換」を語ったのは、今回が初めてだ。まさに注目すべきテーマだ。大統領は「共に成長する平和な朝鮮半島を作ること」こそ「3・1革命の精神を完全に継承する道」だと語った。植民地支配、分断、戦争の遺産である停戦体制を平和体制に変えてこそ、「平和と共栄の朝鮮半島」への道が開かれる、との問題意識だ。李大統領の記念演説での対北朝鮮・対日政策に関する発言は、すべてこの問題意識が下敷きとなっている。
李大統領は北朝鮮へ新たな提案をするのではなく、金総書記を「安心」させることに注力した。李大統領の対北朝鮮政策を「お粗末な欺まん劇であり駄作」だとおとしめつつ、「体制崩壊を企て」ていると疑った金総書記に対して、「体制尊重、敵対行為と吸収統一の不追求」という対北朝鮮政策3原則を重ねて強調したのが、その代表的なものだ。そして「敵対と対立は互いに何の利益ももたらさない」として、「北側も早急に対話の場に出てきて、新たな未来に向かって共に進んでいけるよう期待する」と述べた。
とりわけ、金総書記が「韓国は共生できる隣国ではないことを明確に示した」と述べつつ、その根拠としてあげた「無人機侵入事件」に関しては、当初配布していた記念演説の原稿にはなかった「現政権の意向とはまったく無関係に起きた」「犯罪行為」「決してあってはならないこと」という文言を加えて「真心」を伝えることに注力した。
李大統領は記念演説で「戦争の心配のない平和な朝鮮半島」と述べたが、これは「対北朝鮮政策の3大目標」にある「戦争と核のない朝鮮半島」の代替表現だ。「核」に言及しなかったのは、非核化目標を放棄したというよりも、米国のイラン攻撃によって引き起こされた国際情勢の不安定な状況を意識したものと思われる。
李大統領の日本や東北アジアに関する発言も、「民主主義と平和が脅かされる危機の時代」という認識、「停戦体制を平和体制へ」という戦略の延長線上にあるものと読み取れる。李大統領は日韓両国の「曲折に満ちた歴史」を振り返りつつ、「厳しい国際情勢に直面している今こそ、韓日が現実に対応し、未来を共に切り開いていくべき時」、「日本政府にも呼応を期待する」と語った。さらに李大統領は「激変の時代に賢く対応するには、東北アジアの和合がいつにも増して重要だ」と述べつつ、「韓中日3カ国のコミュニケーションと協力」の必要性を力説した。これは、停戦協定の署名当事者であり、東北アジアの重要な行為者である中国との協力の意志を、遠回しに強調したものだ。ただし、米国による中国けん制を意識したかのように、韓中協力の意志を直接的に強調することはなかった。