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韓国最大野党代表が尹前大統領と絶縁できない裏事情

登録:2026-01-12 06:44 修正:2026-01-12 09:07
[ソン・ハニョン先任記者の政治舞台裏] 
「ユン・アゲイン」の強硬派支持層に対する恐怖感 
「虎の背中から降りたら噛みつかれて死ぬ」 
強硬派支持層、新聞読まずフェイクニュースに溺れている
国民の力のチャン・ドンヒョク代表が7日、ソウル汝矣島の党本部で記者会見を行っている/共同取材写真

 最近、韓国与党「共に民主党」の悪材料が後を絶ちません。キム・ビョンギ議員、カン・ソヌ議員、キム・ギョン・ソウル市議員の公認賄賂事件はますます疑惑が深まっています。お金を渡した人たちはお金を渡したと認めています。お金をもらった人たちはもらってないとか、返したと主張していますが、信じることはできません。残るは強制捜査と処罰だけです。

 李在明大統領が国民統合のため野心を持っておこなったイ・ヘフン氏の企画予算処長官候補指名も、大きな波紋を広げています。1月19日の国会人事聴聞会まで耐えられるかどうか疑問です。

 ところが、本当に不思議なことです。李在明(イ・ジェミョン)大統領の支持率と民主党の支持率は揺るぎません。9日に発表した韓国ギャラップの定例調査で、李大統領の職務遂行に対する支持は60%で、直前調査の3週間前より5ポイント上昇しました。政党支持率は民主党45%、国民の力26%でした。3週間前より民主党は5ポイント上がり、国民の力はそのままでした。

 地方選挙に対する予想では、「与党候補が多数当選する」が43%、「野党候補が多数当選する」が33%でした。1カ月前の 42%、36% よりも差が広がっています。同じ調査でイ・ヘフン(企画予算処長官)候補については、適任が16%、不適任が47%で、否定的な意見が圧倒的だったにもかかわらずです(中央選挙世論調査審議委ホームページを参照)。

ソン・ハニョン先任記者の政治舞台裏//ハンギョレ新聞社

 これは一体どういうことでしょうか。与党の相次ぐ悪材料にもかかわらず、大統領と与党の民主党に対する支持が引き続き高いのはなぜでしょうか。

 第一に、李在明効果です。 李在明大統領は業務報告の生中継に続き、韓中首脳会談を成功裏に終えました。国民の前に歴代のどの大統領よりも多く登場しています。就任から1年間は万機親覧(王があらゆる政を自ら扱う)という批判にさらされても、強い主導権を発揮するというのが李大統領の考えだそうです。そういう戦略が効いているのです。国民は大統領と政権与党を切り離して考えていません。

 第二に、尹錫悦(ユン・ソクヨル)効果です。尹錫悦前大統領は拘束状態で裁判を受けながらも、李在明大統領と民主党を最後まで助ける考えのようです。非常戒厳の責任を部下に押し付け、事実関係を否定するなど卑怯な姿を見せています。政治の二極化が深刻な状況では、一方を嫌うからこそ、他方を支持する場合もあります。尹錫悦審判論が依然として機能しているということです。

 第三に、チャン・ドンヒョク効果です。チャン・ドンヒョク代表は、野党「国民の力」の党大会でキム・ムンス大統領選候補を破る異変を引き起こしました。年末まで岩盤支持層を固めた後、新年には果敢な刷新で中道への拡張に乗り出すと公言しました。

 しかし、1月7日にチャン・ドンヒョク代表が発表した刷新案は失望を抱かせるものでした。刷新案の主な内容は「12・3非常戒厳謝罪」と「過去のことは司法府の公正な判断と歴史の評価に任せる」ということでした。党を20・30代の若者中心の政党にし、党名も改正するという内容が盛り込まれましたが、あまり注目を集めていないようです。尹錫悦前大統領との「絶縁」を明言しなかったからです。

 翌朝、保守系新聞でさえ社説で一斉にチャン・ドンヒョク代表の刷新案を批判しました。

 「戒厳には『中途半端な謝罪』、倫理委には『尹前大統領の影』…チャン代表に刷新の意志はあるのか」(東亜日報)

 「チャン代表、遅れて戒厳謝罪、危機逃れにとどまってはならない」(世界日報)

 「1年かかった戒厳謝罪、予想超える統合なければ国民の信頼得られない」(朝鮮日報)

 「国民の力の刷新、尹前大統領との絶縁なしに可能なのか」(中央日報)

 にもかかわらず、チャン・ドンヒョク代表は翌日、親尹錫悦派のチョン・ジョムシク議員を政策委議長に指名しました。ハン・ドンフン前代表の出馬禁止連判状を主導し、尹前大統領の弾劾に反対したチョ・グァンハン京畿道南楊州(ナムヤンジュ)丙党協委員長を指名職の最高委員に任命しました。

 チャン・ドンヒョク代表が党内の統合と中道拡張を求めてきた保守系メディアや同党の多数議員の注文とは正反対に、党を右へと引っ張っているのです。

 チャン・ドンヒョク代表は一体どうしてこのようなことをしているのでしょうか。チャン代表は最近、周辺の人々に、党員のスペクトラムが非常に広い状況で代表である自分は右派まで抱え込まざるをえないという趣旨の話をしたといいます。

 「国民の力」のある重鎮議員に「チャン・ドンヒョク代表はなぜ尹前大統領と絶縁できないのか」と尋ねたところ、こんな答えが返ってきました。

 「オ・セフン・ソウル市長は本来、わが党の中で最も有力な次期大統領選候補だった。 ところが、2024年12月の非常戒厳直後、尹大統領の弾劾に賛成したことで、強硬派党員たちがオ市長に背を向けた。次期大統領選候補の世論調査で、キム・ムンス(前雇用労働部長官)、ホン・ジュンピョ(前大邱市長)、ハン・ドンフン(前代表)に次いで4位まで順位を落とした。

 チャン・ドンヒョク代表は『ユン・アゲイン』を掲げて代表に当選した。虎の背中に乗ったわけだ。虎の背中から飛び降りた瞬間、虎に噛みつかれて死ぬと思っているのだろう。強硬派党員に対する恐怖感に囚われていると言っても過言ではないだろう」

 「国民の力」といわゆる保守系メディアはこれまで、李在明大統領とチョン・チョンネ代表など民主党指導部は強硬派支持層である「改娘(改革の娘)たち」に振り回されていると非難してきました。ところが同党は「ユン・アゲイン」という非常識な強硬波党員たちに引きずられています。自分たちが非難していた民主党に近づいています。

 「国民の力」の強硬派党員たちはなぜ「ユン・アゲイン」を叫ぶのでしょうか。なぜ「朝鮮日報」、「中央日報」など保守系メディアの党内統合や中道拡張の要求に背を向けているのでしょうか。

 いくつかの原因があると思いますが、筆者は彼らが新聞を読まないからだと思います。極右ユーチューバーが生産するフェイクニュースの中毒になっているからだと思います。

 極右ユーチューバーたちは今でも不正選挙陰謀論を事実だと信じています。トランプ大統領が空母を送り、尹錫悦大統領を救出すると信じています。

 さらに2024年の総選挙で民主党が「非命横死」の公認(反李在明派が公認を排除されたり、予備選挙で脱落したことを意味する)をしたにもかかわらず、勝利を収めたことをベンチマーキングすべきだと主張しています。ハン・ドンフン前代表など党内の非主流勢力をすべて追い出し、尹前大統領を支持する強硬派党員の支持を受ける候補を立てれば、「国民の力」の支持層が結集し、6月3日の地方選挙で勝利できると信じています。

 このような考えはもちろん大きな勘違いです。民主党は2024年の総選挙を非命横死公認で勝ったわけではありません。尹錫悦大統領(当時)が「ネギ事件」や「逃走大使事件」で自ら崩れたからこそ、勝利を収められたのです。非命横死公認をしていなかったら、今頃民主党の議席は200議席を超えていたでしょう。

 「国民の力」の強硬派党員たちの勘違いは、中道拡張してこそ保守政党が選挙で勝利するという歴史的事実に背を向けています。「東亜日報」のユ・ソンヨル政治部次長は10日付の本紙で、「在野の巨木を迎え入れた政党が引き算の政治ばかりにこだわるとは」という見出しのコラムを書きました。

 「保守ベテランの中には第15代総選挙を行った1996年前後を過去最高の全盛期に挙げる人も多い。運動場を広く使って人的刷新に成功し、裾野を大きく広げたからだ」

 「民主自由党は左右を行き来しながら幅広く人材を迎え入れ、党名も新韓国党に変えた。イ・ジェオ民主化運動記念事業会理事長とキム・ムンス前雇用労働部長官もその時に入党した」

 「イ・ジェオとキム・ムンスが保守政党に入党できたのは、当時総裁だった金泳三(キム・ヨンサム)元大統領の決断と刷新に向けた強い意志、二人を受け入れた柔軟性と足し算政治などに後押しされた結果だった。金元大統領と対立し127日後に退いた『竹を割ったような判事』のイ・フェチャン元首相と、『砂時計検事』で知られたホン・ジュンピョ氏も、1996年に入党した。人的刷新に成功した新韓国党は、第15代総選挙で野党が構築した政権審判フレームを突き破って139議席を獲得し、院内第一党の維持に成功した」

 筆者はユ・ソンヨル次長の分析が正しいと思います。保守政党は足し算の政治をした時はいつも成功し、引き算の政治をした時はいつも失敗しました。

 1997年、イ・インジェ候補の離党で政権を失いました。2002年、チョン・モンジュン議員を引き止められず、大統領選挙で敗北しました。2007年、中道実用主義を掲げて政権を握りました。2012年には経済民主化を掲げて大統領選挙に勝ちました。2017年、ホン・ジュンピョ、アン・チョルス、ユ・スンミン候補が乱立し、政権を引き渡しました。2022年、「人に忠誠を尽くさない」と言っていた文在寅(ムン・ジェイン)政権の検察総長を迎え入れ、政権を獲得しました。

 6月3日の地方選挙が5カ月後に迫っています。「国民の力」とチャン・ドンヒョク代表の運命はどうなるのでしょうか。二つのシナリオが考えられます。

 一つ目は、選挙前にチャン・ドンヒョク代表が追い出され、非常対策委員会体制で選挙を行う道です。「国民の力」はそれなりに悪くない成績を収めることができるでしょう。非常対策委員会体制の発足は中道拡張を意味するからです。

 二つ目は、チャン・ドンヒョク代表体制で選挙を行った後、選挙惨敗の責任を負ってチャン・ドンヒョク代表が政界から引退する道です。

 2020年の総選挙で未来統合党のファン・ギョアン代表がそうでした。ファン・ギョアン代表は新型コロナウイルス感染症を「武漢肺炎」と呼び、時代遅れの理念分けで選挙に臨み、惨敗しました。チャン・ドンヒョク代表は「我々がファン・ギョアンだ」と叫んだことがあります。

 今のところ、2つめのシナリオが有力のようです。チャン・ドンヒョク代表を追い出し、非常対策委員会を構築できる党内勢力があまり見当たらないからです。残念なことです。

 まとめます。国民の力は保守政党です。党内統合と中道拡張をしなければ必ず失敗するでしょう。民主党と強対強で正面衝突すれば百戦百敗するでしょう。皆さんはどうお考えですか。

ソン・ハニョン政治部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1239014.html韓国語原文入力:2026-01-11 20:01
訳H.J

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