李在明(イ・ジェミョン)大統領は29日、慶尚北道慶州(キョンジュ)のアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議でグローバル経済人に対し、「大韓民国はAPEC議長国として、危機に立ち向かう多国主義的協力の道を先導しようと思う」と述べた。
李大統領はこの日午前、慶州芸術の殿堂のファランホールで行われたAPEC最高経営責任者(CEO)サミットの特別演説で、保護貿易主義や自国優先主義などに対抗する価値観として「連帯と協力」を強調しつつ、このように述べた。李大統領は「20年前に大韓民国の釜山(プサン)で開催されたAPEC首脳会議は、APECの歴史はもちろん、自由貿易体制の歴史においても非常に重要な転換点だった」とし、「当時、議長国大韓民国が発表した『釜山ロードマップ』には、自由で開放された貿易体制を支持する加盟国の団結した声が込められていた」と語った。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代の2005年に釜山で開催されたAPEC首脳会議で、政府はアジア太平洋地域内の自由貿易の拡大、投資の活性化、人的協力の拡大などを盛り込んだ「釜山ロードマップ」を主導した。
李大統領は「今日のAPECをめぐる対外的環境は、当時とは大きく異なる」とし、「保護貿易主義と自国優先主義が頭をもたげており、当面の生存が迫られる時代に協力と共生、包摂的成長という言葉は空虚に聞こえるかも知れないが、このような危機状況であればあるほど、連帯のプラットフォームであるAPECの役割はよりいっそう光を放つだろう」と述べた。今年初めに4年ぶりに政権に返り咲いた米国のトランプ大統領が「米国を再び偉大に(MAGA)」というスローガンの下、極端な保護貿易主義と自国優先主義の政策を展開している中、これを克服する解決策を今回のAPECで模索しようという提案だとみられる。ただし李大統領は今回の演説で、米国に直接言及してはいない。
李大統領は、今回のAPECの会場となった慶州と、伝統建築に使われる軒丸瓦、文化遺産の瞻星台(チョムソンデ)などを、連帯、協力、革新の例にあげた。李大統領は「慶州は私たちが再確認すべき協力と連帯という価値観が溶け込んでいる最適の場所」だとして、「三国時代の覇権争いの中でも新羅は交流と開放をやめず、その力で統一時代を切り開いた。日々生まれかわりつつ四方をまとめ上げた新羅の精神こそ、今回のAPECテーマであるつながり、革新、繁栄という価値観に通じる」と述べた。続けて李大統領は「軒丸瓦は互いに異なる個々の瓦をしっかりとつなぎ、風雨から建物を守る屋根を完成させる」として、「このような人的、物的、制度的つながりこそ、APECの成長と繁栄のための心強い屋根になってくれるだろう」と述べた。李大統領は、未来の成長の要となる手段は「革新」だとして、瞻星台を例にあげた。「慶州には東洋で最も古い天文台である瞻星台がある」、「データにもとづいて星の動きを読み取った瞻星台のように、人工知能もデータを基盤として新たな知性のエンジンとなるだろう。今日、持続可能な発展を導く革新の要はまさに人工知能」だと述べた。
李大統領は、近ごろ注目を集めているK-POPとK-民主主義の強調も忘れなかった。「このところ全世界的ブームを巻き起こしている『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』では、K-POPアイドルとファンが強い連帯で闇をはねのける魂文を完成させる」、「危機と不確実性の時代であればあるほど、『連帯と協力』こそより明るい未来へと導く秘けつだ。昨冬、五色のペンライトで内乱の闇を振り払った大韓民国のK-民主主義が証明したものでもある」。この日のCEOサミットには、アジア太平洋地域の21の国から1700人あまりの企業家が参加した。
サミットでの演説後、李大統領は「グローバル企業投資パートナーシップ」と銘打ったイベントに出席し、アマゾンウェブサービスなどの7つのグローバル企業の代表と対面した。同イベントでグローバル企業の代表は、今後5年間で計90億ドル(約13兆ウォン)規模の韓国投資計画を約束した。