韓国の与党「共に民主党」が20日に発表した司法改革案は、最高裁判事の数を今の約2倍に増やし、最高裁長官の権限を分散することを軸としている。民主党は「確定した案ではなく、公論化を始める段階」だと述べたが、今年の通常国会の会期内に法案可決を目指す構えだ。民主党司法改革特委委員長のペク・ヘリョン議員は同日、国会で開かれた懇談会で、「けん制を受けない司法部、最高裁長官の帝王的権力が最も大きな問題だ」とし、「最高裁長官の権力をより統制できる形で(司法改革案を)作った」と説明した。
■李大統領の任期中に最高裁判事22人を任命可能
その中心となる内容は、現在14人の最高裁判事を26人まで増やすことだ。法案公布から1年が過ぎた時点から毎年4人ずつ3年にかけて計12人を追加増員するという内容だ。現在、3つの小部と1つの全員合議体で運営される最高裁(大法院)は、6つの小部と、第1連合部・第2連合部の2つの全員合議体に再編される。特に、社会的波及力の大きい国家的事案は、連合部最高裁判事の過半数が同意した場合、最高裁判事の3分の2以上が参加する合議体を構成して審判できるようにした。最高裁判事の増員に必要な人員と予算について、ペク委員長は「昨年通過した法案ですでに裁判研究官を300人以上増員することになっており、(人員は)それほど大きな問題にはならないだろう」とし、「施設の確保に必要な予算の場合(必要な空間は)増築などで解決できるため、最高裁で提示した金額(約1兆4千億ウォン)が必要なわけではない」と述べた。
民主党の司法改革案がそのまま施行されれば、李在明(イ・ジェミョン)大統領は任期中に22人の最高裁判事を任命することになる。毎年増加する最高裁判事12人と共に、2027年に任期が終わるチョ・ヒデ最高裁長官と、李大統領の在任期間中に任期が終了する9人(ノ・テアク、イ・フング、チョン・デヨプ、オ・ギョンミ、オ・ソクチュン、ソ・ギョンファン、クォン・ヨンジュン、オム・サンピル、シン・スクヒ)の後任まで任期中に補充しなければならないためだ。この点は最大野党「国民の力」と保守陣営が最高裁判事増員を「李在明政権の司法府掌握の試み」と主張する根拠でもある。
■裁判官評価などで最高裁長官の権限を縮小
残りの司法改革案も、大半が最高裁長官および司法行政権の権限を縮小するのが主な内容だ。最高裁判事候補推薦委員会(推薦委)に入っていた裁判所事務総長の代わりに憲法裁判所事務総長を加えたことや、これまで最高裁長官が指名してきた推薦委員長を委員の中から互選するようにしたことなどが代表的な事例だ。最高裁長官が任命してきた裁判官人事委員会所属の裁判官3人を、最高裁長官と全国裁判所長会議、全国裁判官代表会議が1人ずつ分けて推薦するようにしたのも同様だ。ただし、一部で言及されていた推薦委と裁判官人事委への国会推薦の役割は含まれなかった。
このほか、確定した判決文だけを公開するようにした条項を改正し、刑事事件の下級審(1・2審)判決文の閲覧・複写を全面的に許可したこと、家宅捜索令状の発付の可否を決める前に事前対面審問手続きを導入するようにする案は、国民の裁判を受ける権利を幅広く保障するという趣旨で導入することにした。
■今年の通常国会での可決を公言したが
民主党は来月の通常国会内に司法改革案を可決する方針だ。指導部関係者は「案を出したので裁判所の立場や世論の反応などを総合的にみながら最終案を整えていく」と述べた。ところが、裁判所と野党がこれに強く反発している。司法改革案に司法府の意見を反映してほしいと要求してきた最高裁は、最高裁判事の増員の規模と速度が行き過ぎだとみている。「司法府の政治的隷属」の可能性も提起している。最高裁は意見書で「最高裁判事を増員する際は、1~2年に1人または2人ずつ順次増員する案を考える必要がある」と主張した。
野党「国民の力」のチャン・ドンヒョク代表は、民主党の司法改革案について、「(司法府を)権力の手下にするという司法掌握に向けたロードマップだ」とし、「大統領が26人のうち22人の最高裁判事を任命することになれば、権力の下命によって最高裁の裁判が行われることになるだろう」と述べた。