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ブーメランとなった「権力の刃」…韓国検察庁、創設78年で歴史の彼方へ

登録:2025-09-29 08:28 修正:2025-09-29 11:49
国会は26日の本会議で、検察庁の廃止、重大犯罪捜査庁(重捜庁)と公訴庁の新設などを内容とする政府組織法改正案を可決した。写真は同日のソウル瑞草区の最高検察庁/聯合ニュース

 検察庁が来年9月に看板を下ろす。1948年の政府樹立とともに設立されて78年にして終わりを迎える。権力型不正と不正腐敗事件の捜査で規模を拡大してきたが、政権が変わる度に膨らんだ捜査の公正性批判の中、増大した力を自ら制御できず、廃止の手順を踏むことになった。これに対し、歴代の検察総長らは憲法訴願を予告し、反発の余震が続いている。検察内部では刑事事件業務の空白など国民に対する悪影響を最小化する後続措置が用意されなければならないという声が出ている。

 国会は26日の本会議で、検察庁を廃止することなどを内容とする政府組織法改正案を与党主導で可決した。1年間の猶予期間を経て来年9月に、起訴機能を担当する公訴庁(法務部所属)と、捜査を担当する重大犯罪捜査庁(行政安全部所属)に分割される。

 検察庁の始まりは現在の組織形態とはまったく違った。1945年8月の解放後、米軍政期に検察庁は独自の組織体系を持たず、裁判所内の検事局として存在していた。1948年8月2日の検察庁法の制定および公布によって独立した組織となった。同年10月31日に就任した初代クォン・スンヨル検察総長から第46代のシム・ウジョン検察総長まで、歴代の検察トップは46人。政権の顔色をうかがうことなく信念にもとづく捜査が行えるようにするため、1988年に検察総長任期制(2年)が導入されたが、皮肉なことに1990年代から政治的中立性がしばしば問われた。

 その中心には、検察総長の直轄部隊と呼ばれた最高検察庁中央捜査部があった。もともと最高検察庁中央捜査部は1949年に制定された検察庁法から中央捜査局という名前で設置規定が設けられていたが、朝鮮戦争などで先送りになり、1961年に正式に発足した。その後、捜査局、特別捜査部へと名称が変わり、1981年の全斗煥(チョン・ドゥファン)政権発足直後に中央捜査部に改編され、権力型不正捜査の総本山の役割を果たしてきた。

 中央捜査部は、各地方検察庁単位では解決が難しい政治家や大企業の不正腐敗事件の捜査を担当した。チャン・ヨンジャとイ・チョルヒによる手形詐欺事件(1982年)、盧泰愚(ノ・テウ)大統領秘密資金事件(1995年)、韓宝不正事件(1997年)、金泳三(キム・ヨンサム)大統領の次男キム・ヒョンチョル氏不正事件(1997年)大統領選挙資金捜査(2004年)など、現代史に残る大きな権力型不正事件が中央捜査部の功績だ。

 「司正の刀」という中央捜査部の名声は、両刃の剣のごとしだった。検察の捜査権と起訴権が大きくなるほど「政権の道具」という陰も濃くなった。権力との利害関係によって捜査の独立性と公正さが揺らぐ事件が増えていったことで、「政治検察」という修飾語がレッテルのように付きまとった。政治家の捜査を担当する特殊通出身の検事たちが、政権の意図に沿うように捜査を引っ張っていった見返りとして主要職務に昇進する彼らだけの「見えない」人事の作動原理は、これをよりいっそう煽った。

 2009年に前大統領の死去という悲劇的な結末に至った盧武鉉元大統領に対する捜査は、検察改革の直接の導火線となった。「政治報復捜査」という論議の中、この事件を捜査した中央捜査部は、朴槿恵(パク・クネ)政権が発足した2013年に解体された。検察が捜査権と起訴権を同時に持つ構造が検察権乱用の構造的な原因だという認識が、政界と市民社会に本格的に広がったのもこの時期だ。尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長時代に特殊捜査部などを動員し、当時のチョ・グク元法務部長官一家を捜査する過程では「過剰捜査」の批判が起き、検察に向けた世論は極度に悪化した。

 検察総長が大統領職へと直行した尹錫悦政権で、検察は露骨に権力に迎合した捜査をおこなった。野党の代表だった李在明(イ・ジェミョン)氏に対する全方向的な捜査は、「報復の性格を帯びた恥をかかせるための捜査」だという厳しい視線を浴びた。一方、ドイツモーターズ株価操作の疑いが持たれているキム・ゴンヒ女史に対する捜査は「特恵の性格を帯びた出張調査」もいとわず、ついには嫌疑なしとした。結局のところ、検察自らが改革の大義名分を提供し、「検察庁廃止」という運命を迎えることになったわけだ。

 刑事司法体系の大きな変化は避けられないため、首相室傘下の検察改革タスクフォース(TF)が今後1年間にわたって検察庁廃止による後続措置を設けることになる。検察庁から控訴庁と重大犯罪捜査庁への業務引継ぎ、両機関の役割と人材配分、権限調整などを具体的に設計する予定だ。公訴庁の検事にどの程度の捜査権を与えるかも争点だ。現在、補完捜査権と補完捜査要求権をめぐり議論が繰り広げられているが、警察や重大犯罪捜査庁を牽制しながらも、公訴庁の検事の別件捜査に悪用されないようにする権限の設定範囲が要となる。

 この時期に、検察庁廃止を盛り込んだ政府組織法の違憲性が憲法裁判所に提訴される可能性もある。歴代法務部長官らと検察総長らは28日に立場表明文を発表し「検察庁廃止は憲法的基本価値を傷つける立法権乱用」だとし、「憲法訴訟などすべての手段を動員して正す」と明らかにした。

 現場の検事たちは、沈鬱なムードの中でも後続の議論がきちんと行われるべきだという意見を伝えた。首都圏のある検事は「後続の立法過程でも正しいシステムを復元する方策が議論されることを願う」と語った。また別の首都圏の次長検事は「検察に過ちがあれば当事者を問題にしなければならないが、変化した体制のもとで一般の国民が被害を受けるシステムになるのではないかというのが懸念される」と指摘した。

キム・ジウン、クァク・チンサン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1221212.html韓国語原文入力:2025-09-29 06:00
訳D.K

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