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韓国、労災「経済制裁」強化…現代自動車の窒息死に適用すると「319億円の課徴金」

登録:2025-09-16 08:59 修正:2025-09-16 09:59
李在明印の労働安全総合対策発表 
課徴金、最大で営業利益の5% 
平均1億の重大災害法の罰金と差 
建設会社には「三振アウト制」適用へ
李在明大統領が15日、ソウル城北区の韓国科学技術研究院(KIST)で行われた第1回重要規制の合理化に向けた戦略会議で発言している。李大統領は同会議で「企業を法的に処罰するよりも、先進国のように課徴金で金銭的な損害を与えた方がはるかに効果的」だと述べた/聯合ニュース

 李在明(イ・ジェミョン)大統領が就任直後から推し進めてきた「労働災害との戦争」の結果は、「経済的制裁」の強化だ。課徴金制度と登録抹消要件の新設から営業停止要請要件の緩和に至るまでの制裁の強化。これらこそ、政府が15日に発表した「労働安全総合対策」の中心を成すものだ。労災事故の発生によるコストを増やすことで安全対策への投資拡大を誘導しようという戦略だ。

 労災で年間3人以上の死者を出した企業に課される課徴金制度は、前例がない。課徴金は最大で(財務諸表上の)営業利益の5%とする方針だ。昨年、窒息事故で3人が死亡した現代自動車の事例に適用すると、現代自動車が負担すべき課徴金は最大で3000億ウォン(約319億円)に達する。現行の重大災害処罰法に違反した場合に科されてきた罰金は平均で1億ウォン(約1060万円)ほど。キム・ヨンフン雇用労働部長官は「安全に対する投資がいっそう利益になる構造を作る」と語った。企業の「コスト方程式」を変えることで労災を減らすということだ。政府の目標は、1万人当たりの労災による死者数(0.39人、昨年)を2030年までに経済協力開発機構(OECD)加盟国平均の水準(0.29人)にまで下げることだ。

 ただし、政府が課徴金の算定基準を売上高ではなく営業利益にしたのは、企業の負担を考慮したものだ。キム長官は「売上額を基準にすると、企業が耐えうる範囲を逸脱すると判断した」と語った。

 労災の多い企業に対する営業停止要請要件の緩和(「2人以上が同時死亡」→「1年間に多数が死亡」)も、経済的制裁の一つの方式だ。建物を建てたり橋をかけたりする建設会社はもちろん、電気、情報通信、消防施設などの工事を行う建設会社もすべて適用対象だ。現在は2~5カ月となっている営業停止期間も、死者の数によって2~5人の時は3カ月、6~9人は4カ月、10人以上は5カ月へと延長する。繰り返し営業停止処分を受けている建設会社には、三振アウト制が適用される。3年間で2回の営業停止が言い渡され、3回目の営業停止の要請事由が発生すれば、登録が抹消される。労災の多発する事業所は廃業する覚悟をしなければならなくなるわけだ。

 間接的な経済制裁も強化される。重大災害の発生した建設会社は公共事業の入札に参加できなくなる可能性もある。さらに、重大災害を繰り返すと、政策資金などを受け取れなかったり、民間の金融会社においても貸付の金利、保険料、限度で不利益をこうむることになる。国民年金が投資判断の参考にするスチュワードシップ・コードにも、重大災害の発生履歴が反映される。重大災害の発生した上場企業は、国民年金の持ち株が売られるという圧力を受けることになるわけだ。

 労災関連情報の公開拡大は、企業に対する社会的圧力の強化を念頭に置いた措置だ。上場企業は、重大災害が発生したり、それによって実刑判決を受けたりした場合は、直ちにそれを公示しなければならない。公共機関は、労災による死者数の公示周期を年1回から四半期に1回へと拡大するとともに、死者数だけでなく重大災害による負傷者数も公示する。重大災害発生企業のリストの定期的な公開も推進される。

 特殊形態勤労従事者に対する法的保護は拡大する。産業安全保健法を改正し、現在は14職種に限定されている事業主の安全保健義務の職種と適用範囲を拡大する。安全に関する投資力の低い小規模事業所には、事故防止用品の購入費などに対する財政支援を増やす。

 専門家は、制裁の強化は労使主導の労災防止システムの構築と連係してこそ実効性があがると指摘する。ソウルサイバー大学のカン・テソン教授(安全管理学科)は、「処罰と義務の拡大だけが万能策ではない」とし、「業界と労組が膝を突き合わせて業種ごとに法よりも細かいリスク評価ガイドラインや作業別マニュアルを製作し、それを小規模事業所もチェックリストのかたちで利用できるシステムを作るべきだ」と述べた。「ガイドラインを守れば法的安全義務を果たしたとみなして刑事処罰しない、というようなインセンティブを与える必要もある」とも補足した。労働界からも、政府の対策が現実において円滑に作動するためには、細部的な検討が必要だという反応が示されている。

ナム・ジヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/1218896.html韓国語原文入力:2025-09-15 20:54
訳D.K

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