本文に移動

世界で気候訴訟2967件…国際司法裁判所の決定で政府・企業の責任強化される見通し

登録:2025-07-26 06:51 修正:2025-07-29 08:09
「世界の気候訴訟の動向」、今年の報告書を分析してみると 
政府、企業、国家間の責任を問う動きが活発化になる見通し
南太平洋のバヌアツ政府を相手取って訴訟を起こし、「気候変動対策をめぐるすべての国の国際法的責任」を明確にした国際司法裁判所(ICJ)の勧告的意見を引き出したビサル・プラサード氏が23日(現地時間)、オランダ・ハーグのICJ前で記者会見を行っている/AFP・聯合ニュース

 最近の気候変動について国際司法裁判所(ICJ)が「勧告的意見」を示したのは、世界で進められている3千件余りの「気候訴訟」を後押しするものとみられる。ICJは「世界の法廷」に当たるが、このような権威と地位を持つ機関が「気候変動への対策をまともにしないのは、国際法違反事案に当たる」として、各国政府に法的責任を明確に指摘した。気候訴訟は気候変化と関連し、政府や企業、機関などを相手取って起こす訴訟で、温室効果ガス排出で気候変動の原因を提供したり、その被害の縮小努力が疎かになったことに対し、法的責任を問うことで現実を変えようとする運動だ。今回のICJの決定で、気候加害国と被害国の間に、また個別政府と企業、機関などに気候変動の責任を問う訴訟が相次ぐ可能性がある。

 英国ロンドン経済大学(LSE)のグランサム気候変動環境研究所は年次報告書「世界気候訴訟の動向」を発表しているが、6月に昨年までの現況を盛り込んだ最新の報告書を公開した。同報告書を通じて世界の気候訴訟がどれほど多く、どのように多様な方式で行われているかを把握できる。

■3カ所の国際司法機関、「気候変動は国際法事案」

 今回の報告書で研究所は1986年から2024年末まで全世界約60カ国で起こされた気候訴訟が全体で2967件(米国1899件、その他全世界1068件)に達すると把握した。パリ協定が結ばれた2015年当時、気候訴訟は120件だったが、2021年に300件以上に急増し、10年間で25倍ほど増えた。ただし、その増加率はやや鈍化しており、昨年新たに提起された気候訴訟は226件だった。単に件数だけが増えたわけではなく、気候訴訟分野は「法律理論、行為者、戦略的アプローチ方式の側面で持続的に多角化されている」と報告書は指摘した。

 何より気候変動に対する国家の法的義務が「国際法的なレベルでますます明確になっている」ことを注目すべき事実に挙げた。国連傘下の「世界の法廷」であるICJの今回の決定はその頂点と言えるが、ICJを含め主要国際裁判所では計4件の気候変動関連諮問が進められたか進められている。

ロンドン経済大学のグランサム気候変動環境研究所が今年発表した「世界気候訴訟動向」報告書//ハンギョレ新聞社

 海洋関連国際紛争の解決を担当している国際海洋法裁判所(ITLOS)はすでに昨年5月、裁判官6人の満場一致で「大気に人為的に温室ガスを排出するのは海洋環境汚染に当たる」という「勧告的意見」を出した。今月3日には、アメリカ大陸の最高人権裁判所である米州人権裁判所(IACHR)が、国家に気候変動問題から市民の人権を守る責任があるという判断を示した。アフリカ大陸の国際司法機関であるアフリカ人権裁判所(ACHPR)は今年5月、市民社会から請願を受け、気候変動への対策が人権問題に当たるかどうかを判断する手続きに入った。主要国際司法機関4カ所のうち3カ所が、すでに気候変動への対策は国際法的義務だと確認したのだ。

■司法的関与の増加に責任を問う方法論も革新

 最高裁や憲法裁判所など各国の最高裁が、気候変動に対応すべき法的義務に対する意見を主導的に出していることも、注目に値する現象に挙げられた。報告書は「2015年から2024年末まで全世界的に276件の気候関連訴訟が最高裁判所に判断を委ねており、このうち117件は米国で、159件はその他の地域で行われた」と指摘した。また、結果が出た250件の訴訟の中で50%は気候行動の「強化」につながったと付け加えた。「このような判例は責任と執行を巡る複雑な法的問題に対する司法的関与が増えていることを反映している。」

 特に、気候訴訟は南半球でダイナミックな増加傾向にある。2024年末までに南半球で260件以上の気候訴訟が受け付けられたが、このうち60%ほどが2020~2024年の間に起されたという。南半球の気候訴訟では、政府機関、規制機関、検察などが重要な役割を果たしている事実が目を引く。「2024年に南半球で発生した訴訟の56%が政府機関によって起こされた一方、北半球ではわずか5%だけが政府機関によって起こされた」と報告書は指摘した。

バヌアツのラルフ・レゲンバヌ気候変動適応相(中央)が23日、オランダのハーグで国際司法裁判所の「気候訴訟」関連会議を控えて開かれた集会に参加し、演説をしている/AFP・聯合ニュース

 政府だけでなく、企業に対する監視も強化されている。報告書は「世界的に2024年に提起された気候訴訟の20%程度が企業や企業の役員を対象にしたもの」だとし、「昨年よりは小幅減少したが、関連分野と問題の範囲は拡大した」と指摘した。また「主要排出機関に気候関連被害に対する財政的責任を問うための取り組みが、学界と法律分野の革新を持続的に促している」とも述べた。最近ではまるでタバコ会社が肺がんの発病に対してどの程度責任を負うべきかを追及するように、企業と機関が温室効果ガス排出によって発生させた被害を定量的に追跡する新たな究方法論も提起されており、今後様々な気候訴訟を後押しするものとみられている。

■戦略的多角化…類型も8種類に及ぶ

 気候訴訟は今や戦略的にも多様な類型に分化しており、報告書は最近、気候訴訟の類型を計8つに分類した。最も代表的で核心的な気候訴訟の形は政府に気候変動対策の責任を問う「政府枠組み」(Government framework)訴訟だ。2015年以後、全世界的に120件以上の訴訟が、2024年には14件の訴訟が「政府枠組み」訴訟に当たる。特に報告書は「韓国の画期的な判決は東アジア初の政府枠組みの判例として記録された」とし、昨年韓国憲法裁判所が「政府の気候変動対応政策が憲法上の基本権を侵害する」とし、関連法律に「憲法不合致」の決定を下したことを代表的な事例に挙げた。

「気候危機非常行動」など市民団体の会員たちが昨年8月29日午後、ソウル鍾路区の憲法裁判所前で開催した気候憲法訴願の最終判決関連の記者会見後、プラカードを持ってスローガンを叫んでいる=キム・ボンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社

 気候変動に及ぼす影響をきちんと考慮しなかった責任を問う「気候考慮統合」(Integrating climate cosiderations)訴訟は、全体の気候訴訟の中で最も多く使われる類型で、主に個別的な化石燃料開発プロジェクトに対し起こされている。昨年、97件が提起された。環境汚染の原因を提供した者にその汚染によって発生した被害の賠償を求める「汚染者負担」(Polluter pays)訴訟は2015年から2024年まで計80件だったが、そのうち11件が昨年起こされた。報告書は「まだ企業の全世界排出量を特定の気候への影響と直接結びつけることに成功した事例はないが、地域的環境被害に対する重要な進展が実現している」と指摘した。ペルーの農業従事者がドイツの企業を相手に10年間戦って敗訴したが、一部意味のある結果を得たのが代表事例に挙げられる。

 この他、企業の全体戦略に異議を唱える「企業枠組み」(Corporation framework)、予測可能な危険を無視したことに対する責任を問う「適応失敗」(Failure to adopt)、気候変動による被害や転換過程で発生しうる損失に対し、政府・企業などを相手取って裁判を起こす「転換危険」(Transition risk)、脱炭素化などについて欺いたり誇張したことに対する責任を問う「気候洗濯」(Climate washing)、企業や金融機関が気候変動に対応しないように資金を防ぐ「蛇口閉め」(Turnfing off the taps)訴訟などがある。昨年新たに起こされた訴訟のうち、4件が企業枠組み、7件が適応失敗、1件が転換危険、25件が気候洗濯、7件が蛇口閉めに該当した。

 一方、国際司法裁判所の今回の勧告的意見決定に対し、気候訴訟分析作業を率いているロンドン政経大学グランサム気候変化環境研究所のジョアナ・セッチャー副教授は「世界最高裁判所が国家に気候被害を予防するだけでなく、完全に復旧する法的義務があることを初めて明確にしたもの」だとし、「これは損失と被害、歴史的責任、そして実存的脅威に直面した共同体の権利をより具体的に要求できる道を開き、公正で効果的な『気候賠償』要求に決定的な力を与える」と評した。

チェ・ウォンヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/environment/1210023.html韓国語原文入力:2025-07-25 17:41
訳H.J

関連記事