韓国検察が文在寅(ムン・ジェイン)元大統領を収賄容疑で起訴した件で、起訴状に(文元大統領が)娘のダヘ氏夫婦に資金支援計画などを伝え、大統領府の警護処から娘夫婦の海外移住計画の報告を受けて承認した、と書かれていたことが確認された。文元大統領側は「検察の起訴状は関係者の陳述を全く聞かずに書いた作り話」だと反論した。
検察が9日に国会に提出した文元大統領の起訴状によると、検察は2018年4月から文元大統領と大統領秘書室民情秘書官室の関係者らが娘夫婦のタイ移住方法などを議論し始めたとみている。これは文元大統領の婿がタイ・イースター航空に就職して給与支給がはじまった時期(2018年8月)の4カ月前のことだ。
検察は、イ・サンジク元議員が2018年4月9日に大統領府民情首席室を訪問した直後、会社の社員に「タイ・イ―スター航空の事務所付近にある国際学校と、使えそうなアパートを調べろ」という趣旨の指示をしたと把握した。このような情報を文元大統領が娘夫婦に自ら伝えたと検察はみている。検察は起訴状に「この頃、文元大統領が大統領秘書室民情秘書官と特別監察班長を通じてイ元議員からタイ・バンコクの住居地・国際学校情報およびバンコク現地不動産仲介業者の連絡先、タイでの生活に提供される経済的規模関連情報を聞いて娘夫婦に提供するなど」と書いた。
検察はまた、娘夫婦のタイ移住過程に大統領府民情秘書官室が積極的に関与したとみた。検察は2018年4月11日から民情秘書官と特別監察班長が娘夫婦とタイ移住関連連絡を始め、彼らが同年4~5月ソウル鍾路区(チョンノグ)のカフェとホテル食堂などで会い「タイ移住関連事項を相談し、経済的支援主体がイ元議員という事実を明確にした」と書いた。検察は「2018年6月、文元大統領が大統領警護処長などから娘夫婦の海外警護計画の報告を受け、これを承認した」とも書いた。
文元大統領弁護団はこの日、立場を出し「民情秘書官室から婿の就職およびタイ移住関連報告を一切受けたことがない。親・姻戚チームが婿夫婦の移住過程で連絡を行ったのは当たり前のことで、業務の範囲内」だとし、「検察の起訴状は関係者の陳述を全く聞かずに書いた作り話」だと主張した。
これに先立ち、全州地検刑事3部(部長ペ・サンユン)は先月24日、文元大統領の婿S氏が航空業界で勤務した経歴がないにもかかわらず、タイ・イースター航空の役員として就職し、2018年8月から2020年4月まで給料と住居費などの名目で、2億1700万ウォン(約2200万円)相当の賄賂を受け取ったとみて、文元大統領を特定犯罪加重処罰などに関する法律違反(賄賂)の疑いで在宅起訴した。
一方、検察は起訴に先立ち文元大統領に送った書面質問で、「婿のS氏が正常に就職したと思うか」と尋ねるなど、S氏の就職およびタイ移住経緯などをめぐり、文元大統領の介入有無を具体的に確認しようとしたという。
検察は書面質問紙で、娘の家族とタイ移住関連議論の開始時期および経緯・経過▽娘が大統領の承認・指示なしにタイへの移住を単独で決定できるか▽タイでの生活に必要な資金調達はどのように用意すると知っていたか▽民情秘書官室などに、娘の家族の海外居住方案を用意するよう指示したか▽娘が2018年4月から民情秘書官室の公務員たちに会ってタイへの移住を議論・協議・準備した事実を知っているかなどを尋ねたという。
婿のS氏の就職および勤務と関連しても、S氏がタイ・イースター航空に正常に就職したと思うか▽S氏の給与などが勤労の見返りとして提供されたと思うかなどを尋ねたという。検察は文元大統領に出頭し取り調べを受けることを求めたが、断られた。これを受け、書面調査を試みたが、文元大統領側が提出期限の3月26日まで応じず、調査なしに起訴した。
文元大統領は、検察が結論ありきで証拠もなく政治的起訴をしたと反発している。文元大統領は婿の採用に介入しておらず、婿の給料は賄賂ではなく、正常な給与だという立場だ。検察起訴直後、文在寅政権で大統領府国政状況室長を務めた共に民主党のユン・ゴニョン議員は、「尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の起訴と弾劾に対する報復ではないとは言えないだろう」とし、「法廷で真実を明らかにするだけでなく、検察権がどれほど乱用されているかを明らかにするきっかけにする」という文元大統領の立場を伝えた。
文元大統領は先月30日、同事件を捜査して起訴したイ・チャンス・ソウル中央地検長(前全州地検長)、パク・ヨンジン全州地検長、キム・ヒョンウ検事、パク・ノサン弁護士(前全州地検検事)、氏名不詳の全州地検検事らを職権乱用の疑いなどで高位公職者犯罪捜査処に告発した。