最高裁判所が大統領選挙に出馬する最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン候補の公職選挙法違反容疑事件を、有罪を趣旨として破棄し、高裁に差し戻した。大統領選挙まで1カ月あまり。最高裁から有罪と判断されたイ候補は、「司法リスク」が改めて頭をもたげるという負担を抱えることになった。
最高裁全員合議体(裁判長:チョ・ヒデ最高裁長官)は1日、選挙法の虚偽事実流布容疑で起訴されたイ候補に無罪を言い渡した原審の判決を破棄し、事件をソウル高裁に差し戻した。12人の最高裁判事が参加する全員合議体で10人の判事が有罪、2人の判事が無罪だとの意見を表明した。
最高裁は、控訴審が無罪と判断した「ゴルフ発言」と「柏ヒョン洞(ペクヒョンドン)発言」をいずれも有罪とした。与党「国民の力」は先の大統領選挙の過程で、大庄洞(テジャンドン)開発疑惑の浮上後の、開発実務の責任者だった城南(ソンナム)都市開発公社のキム・ムンギ開発第1処長とイ候補との親交を証明するものだとして、2015年にオーストラリアの出張先でキム処長を含む人物たちとイ候補が一緒に写った写真を提示した。イ候補は2021年12月に「一行の写真の一部を取り出して示したもので、でっち上げだ」と反論した。これが「ゴルフ発言」だ。これについて最高裁は「『ゴルフ発言』が選挙人に与える全体的な印象を基準としてその意味を確定すると、『被告人がキム・ムンギと共に行った海外出張の期間中に、キム・ムンギとゴルフをしてはいないという意味に解釈される」として、「被告人は海外出張期間中にキム・ムンギとゴルフをしたため、『ゴルフ発言』は候補者の行為に関する虚偽の事実に当たる」と述べた。また、城南市長時代の2015年、韓国食品研究院の柏ヒョン洞の敷地の用途の上方修正は「国土交通部に迫られた。実行しなければ職務放棄で問題にすると脅迫された」ものだとしたイ候補の「柏ヒョン洞発言」も、虚偽事実の公表だと判断した。最高裁は「柏ヒョン洞発言は『事実』の公表であって、単なる誇張された表現だとか抽象的な意見の表明にとどまるものではない」とし、「国土部の圧力はなかった。職務放棄で問題にするという脅迫もなかった」と述べた。最高裁は「原審は虚偽事実公表罪に関する法理を誤解しており、判決に影響を及ぼしたという誤りがある」と補足した。
最高裁の有罪趣旨による破棄差し戻しで、イ候補の事件はソウル高裁に改めて割り当てられ審理がなされる。破棄差し戻し審で量刑が決定され、最高裁の再上告審を経て、イ候補の選挙法違反事件は確定する。大統領選挙前に100万ウォン以上の罰金刑または懲役刑が確定すれば、イ候補は被選挙権が剥奪されるため、大統領選挙までイ候補の司法リスクをめぐる混乱と論争は加熱するものとみられる。イ候補はこの日、最高裁判決に接し、「私の考えとはまったく異なる方向の判決だ。重要なのは法も国民の合意だということであり、国民の意思が最も重要だ」と述べた。その後、イ候補はフェイスブックで「ひたすら国民だけを信じて堂々と進む」と表明した。国民の力は、イ候補の即時辞退を求めた。国民の力のクォン・ヨンセ非常対策委員長は国会で記者会見を行い、「これほどの判決が下されたにもかかわらず、(イ候補が)大統領候補に固執し続けるなら、それそのものが国民に対する重大な侮辱」だとして、「候補の辞退は常識だ」と述べた。クォン・ソンドン院内代表も「今回の最高裁判決は常識の勝利」だと述べて歓迎した。