検察の3回の拒否の末に請求されたキム・ソンフン大統領警護処次長に対する拘束令状が棄却された。キム次長の拘束後に勢いづくと予想された尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の内乱罪の捜査に黄信号が点った。
ソウル西部地裁のホ・ジュンソ令状専担部長判事は21日、キム次長とイ・グァンウ警護本部長に対する拘束前被疑者尋問(令状実質審査)を開き、2人に対する拘束令状を棄却した。裁判所は「犯罪容疑に対して被疑者が争う余地があり、現段階での拘束は、被疑者の防御権を過度に制限するものと判断される」と棄却理由を明らかにした。さらに、「犯罪容疑の立証に必要な証拠の大半は十分に集められており、現在までに収集された証拠資料の程度や捜査の経過などに照らし、被疑者が証拠を隠滅する懸念があるとする点に関する疎明があるとみなすには不足している」と明言した。2人の住居が一定であり、年齢や経歴、家族関係などを推察し、逃亡の恐れがない点も考慮された。
今回の決定により、これまでキム次長らが強く拒否してきた、大統領室の盗聴防止機能つき電話(秘話フォン)のサーバーの押収捜索などの強制捜査が困難になる可能性がある。キム次長は、刑事訴訟法の条項(軍事上の秘密を要する場所は、その責任者の承諾なしには押収または捜索することができない)を理由に、警察特捜団によるサーバーの押収捜索令状の執行を拒否してきた。盗聴防止機能つき電話のサーバーには、尹大統領が非常戒厳当日に軍司令官などの内乱関係者らと連絡を取り合った内容が含まれており、今回の内乱捜査の核となる証拠とされる。
裁判所は証拠隠滅の恐れが少ないと判断したが、警護処首脳部として尹大統領を保護してきたキム次長らが在宅捜査を受けることになり、証拠隠滅の懸念は払拭されないものとみられる。すでにキム次長は、盗聴防止機能つき電話のサーバーのデータ削除などを職員に指示し、これに従わなかった実務者に圧力をかけたことなどが明らかになっている。警察特捜団は、キム次長が戒厳に動員された軍司令官らの盗聴防止機能つき電話のデータ削除を執拗に指示した状況などを拘束令状申請書に記載した。
キム次長らの拘束において、検察が最善を尽くしたのかどうかは疑問だとする指摘も出てくるものとみられる。この日の2人に対する令状実質審査には、ソウル西部地検の検察官らは参加しなかったことが分かった。警察が申請した拘束令状実質審査には検察官が出席しないことが一般的だが、メディアで報道される大きな事件の場合、検察官が直接出席するケースが多い。
これに先立ち検察は、キム次長に対する警察の3回の拘束令状申請をそれぞれ異なる理由で棄却した。これを不服とした警察庁国家捜査本部の非常戒厳特別捜査団(特捜団)は、ソウル高等検察庁の令状審議委員会から発付勧告決定を受け、キム次長に対して4回目、イ本部長に対して3回目の拘束令状を申請した。
尹錫悦大統領の弁護団はこの日、公示を通じて「警護処幹部に対する拘束令状棄却を歓迎する。公捜処(高位公職者犯罪捜査処)の違法捜査とこれに野合した国家捜査本部の不法行為に対して、裁判所が改めて警告したもの」だと評した。