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済州の海女と福島の女性の出会い…「原発汚染水の放出を阻止しよう」

登録:2025-03-06 01:22 修正:2025-03-06 08:01
福島で原発の放射能汚染水阻止運動を展開している市民社会団体の関係者と済州の海女たちが4日、「共に闘おう」と叫んでいる=ホ・ホジュン記者//ハンギョレ新聞社

 「福島第一原発放射能汚染水放出阻止訴訟にかかわる者としての立場から、協力し合って汚染水放出を阻止する方法を探るためにやって来ました」

 4日、日本の福島で原子力発電所からの汚染水放出阻止運動を展開する市民団体の関係者たちが済州島を訪れ、済州の海女たちと対面した。原発汚染水の放出に対する怒りは、福島から来た人たちも、一生を海に頼って生きてきた済州の海女たちも同じだった。済州を訪れたのは、福島の「原発事故被害者団体連絡会(ひだんれん)」の事務局長や「汚染水の海洋投棄を止める運動連絡会」の共同代表などを務める大河原さきさんと、「はっぴーあいらんど」代表の鈴木真理さん。

 鈴木さんは「(原発からの放射能汚染水の放出は)政治家の行為や原発産業が引き起こした問題であるため、私たちも被ばくした被害者だ。この問題は単なる私たちだけの問題ではない。韓国で訴訟にかかわった方々や海女のみなさんたちと国際連帯を通してこの問題の解決に向けた活動をしなければならないと考えてやって来た」と訪問理由を語った。

 今月11日は、東京電力福島第一原子力発電所の事故から丸14年となる日だ。2011年3月11日の東日本大震災の影響で福島第一原発が爆発。日本政府と東京電力は、核燃料を冷却するために原子炉に注入して放射性物質で汚染された水を処理し、2023年8月24日から昨年末までに10回にわたって海に放出している。放出に対しては日本だけでなく韓国でも阻止運動が起きており、済州の海女たちも街頭デモに立ち上がった。

市民団体「はっぴーあいらんど」代表の鈴木真理さん=ホ・ホジュン記者//ハンギョレ新聞社

 韓国の「民主社会のための弁護士会(民弁)」福島第一原発汚染水海洋投棄憲法訴願弁護団、脱核法律家の会ヘバラギ、グリーンピースなどの主催でこの日午後、済州の西端にある済州市翰京面高山里(ハンギョンミョン・コサンリ)の翰京面総合福祉館で行われた「海を繋ぐ心 済州の海女と福島の女性たちの出会い」は、福島第一原発の汚染水放出問題と済州の海の状況を共有し、協力と連帯を模索する場となった。

 福島第一原発から60キロあまりの須賀川市に住む鈴木さんは、「事故当時、中学生と高校生の2人の息子と共に福島県外に避難し、約1カ月後に子どもたちの学校のために帰ってきた。故郷は放射能で汚染されたため、多くの不安を抱えて生きていくというのが現実になった」と語った。問題意識を共有した住民たちは、2021年に市民団体「はっぴーあいらんど」を立ち上げた。

 「私たちは子どもたちの未来を守るために何をすべきでしょうか」と問いかけた鈴木さんは、「美しい海を守るために奮闘する済州の海女のみなさんに出会えたことを、心から感謝申し上げる。みなさんと共に未来のために何をすべきか、連帯の方法を探っていきたい」と述べた。

 鈴木さんと大河原さんは、昨年10月に公開されたアップルTVプラスのドキュメンタリー映画「ヘニョ ~最後の海女たち~」を見て、済州の海女たちに会いたくなったと話した。済州の海女たちの暮らしを追ったこの映画は、気候危機と放射能汚染水の放出に反対する様子も描かれている。

ひだんれん事務局長の大河原さきさん=ホ・ホジュン記者//ハンギョレ新聞社

 福島第一原発から45キロの距離にある三春町に住む大河原さんは、「1986年のチェルノブイリ原発事故当時、私は息子に授乳していた。事故現場から8千キロ以上離れた日本で授乳していた女性たちの母乳からも放射能が検出された」、「その時、放射能の危険性に気付き、反核運動にかかわるようになった」と語った。大河原さんは、日本政府の公式発表によると3万人あまりが原発事故で避難したとされているが、2倍ほどの6万~7万人ほどが今も避難していると推定する。

 大河原さんはこの日の発表で、原発からの汚染水放出阻止運動を紹介しつつ、「地球のあらゆる命と共存できない放射能を未来世代に残すことはできない。日本政府と東京電力による原発処理汚染水の海への放出に反対し、仲間たちと共に反対運動を繰り広げてきたが、阻止できなくて非常に悔しい。海女のみなさんの生活基盤であり仕事の場でもある海を汚してしまい、本当に申し訳なく思う」と述べて謝罪した。大河原さんは「大地や海はとても重要で大切だと感じてきた。(原発事故後)今はむしろ私たちを脅かす存在になってしまったと感じる」とし、「日本で深刻な事故があったにもかかわらず、韓国と日本の政府は原子力産業を維持する政策を推進しているため、市民社会は力を合わせて対応しなければならない」と強調した。

 「福島を忘れないでほしい。それがどれほど大きな被害をもたらし、どれほど大きな悲しみを招くのかをぜひ知ってほしい」。鈴木さんはそう語った。

福島からやって来た大河原さきさんが4日午後、済州市の翰京面総合福祉会館で行われた「済州海女と福島ハルモニたちの出会い」で発表している=ホ・ホジュン記者//ハンギョレ新聞社

 この日、済州の海女たちも、済州の海の異常の兆候を語りつつ、日本による原発汚染水の放出に対して異口同音に怒りをあらわにした。海女の中には、日本の海に何度も潜った経験を持つ人もいた。

 「海の中に入ると、燃えてしまった山のようです。(陸では)燃えてしまっても灰くらいは残りますよね。海の中には灰もありません。ただ白くなってしまっているんです。何十年も海で子どもたちに食べさせてきたのに、今年はまったく! 何を食べて生きていけばいいんですか」

 海女のヒョン・インホンさん(74)は言う。「悔しいです。日本のことが信じられません。私たちは力がないからどうすることもできません。阻止してほしい。(情報を)共有し合って、今後は(阻止運動に)参加します」

 海に潜って今年で52年目になるチョン・スンドクさん(74)も強く訴えた。「海に行くと涙が出るほどだ。海に行けば稼げるし、とても幸せだったのに、今は海を見ると涙が出る。52年通った海があんなに白くなるなんて誰も思わなかった」

 長島など日本の海にも潜ったことのあるチョンさんは、「私が日本政府に言いたいのは、済州島の海に汚染水が来ているかどうか、ちゃんと検査してほしいということ。汚染水が来ているなら、日本政府は当然にも私たち海女に補償すべきだ」と述べた。17歳で海女になり、日本でも10年あまり潜っていた経験を持つパク・インスクさん(72)は、「昨年はホンダワラやカジメ、ヒジキも多かったが、今は一つもない。サザエもエサがあってはじめて育つのに、エサがないから元気がない。今年は海に行くととてもやるせない。韓国や日本が対策を打つべきだし、さもなければ私たちは飢え死にすることになる」と述べた。

 民弁の憲法訴願弁護団は海女、漁民、一般市民ら4万人あまりを代理して、政府は福島第一原発の汚染水の放出を放置しているとして、憲法訴願を進めている。

 この日の行事の終了後、彼女たちは全員で舞台から叫んだ。「共に闘おう」

ホ・ホジュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/area/jeju/1185499.html韓国語原文入力:2025-03-05 18:03
訳D.K

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