12・3内乱の「黒幕」とされるノ・サンウォン元情報司令官が、情報司令部のキム・ボンギュ大佐に、射撃や爆破に熟達した人員を推薦するよう指示していたことが、16日に確認された。非常戒厳時の情報司の任務は中央選挙管理委員会の掌握であり、そのために射撃・爆破能力は必要ないため、ノ元司令官が自身の手帳に記していた計画の実行のために情報司の要員を選抜しようとしたのではないか、との疑惑が持ち上がっている。「ノ・サンウォン手帳」では、いわゆる「回収対象」を爆破によって除去する方法が複数回言及されている。
キム大佐は昨年の検察の事情聴取で、「(昨年10月初めから中旬ごろに)ノ元司令官が電話をかけてきて、『射撃がうまく、爆破のうまい人員の中から7~8人を私に推薦してほしい』と言われた」とし、「(昨年)10月末ごろ、ノ元司令官からテレグラムで電話があり、特殊部隊の要員から5人ほどを選抜し、迂回工作(第三者を通じた工作)人員として15人ほどを選抜」せよと指示されたと供述している。この時、ノ元司令官は「特殊部隊の方は特殊武術のうまい人員を選抜」し、「迂回工作の人員も同じように仕事のできる人員を選抜せよ」と言ったという。実際に非常戒厳当日には、武術に優れた北朝鮮派遣工作員部隊(HID)の5人の要員が京畿道板橋(パンギョ)にある情報司令部100旅団に待機していた。ハンギョレの入手した70ページの「ノ・サンウォン手帳」には、回収対象者を「民間の大型船舶」や「廃軍艦」に乗せて「延坪島(ヨンピョンド)へ移送」し、「(執行人員は)実尾島(シルミド)で下船後、移動し、適正な場所で爆破する」という計画が登場する。民統線以北での回収対象者の射殺に言及している部分でも、「兵舎内の寝室で爆発物使用」という文言が出てくる。そして、このような計画を執行する主体として「特殊要員」が言及されている。ノ元司令官は情報司の要員を用いて手帳の中の計画を実行しようとしていたのではないか、と疑われる理由はここにある。
ノ元司令官がキム・ヨンヒョン前国防部長官の後援を受けて情報司を指揮していた情況もさらに明らかになった。ノ元司令官は昨年10月中旬、ムン・サンホ司令官(当時)に「高官級が脱北する兆候があるので、任務をうまく遂行できそうな者を選べ」と指示を下したという。ムン前司令官は「『なぜこんなことをさせるんだろう』という疑問があった状況」だったため「(ノ元司令官との通話で)消極的で不愛想に対応したところ、ノ・サンウォンが私に『お前、私を信じられないのか』と言い、『いいえ』と言ったら『もうすぐ長官がお前に電話する』と言い、10分以内に長官から電話が来た」と検察に供述した。
キム前長官は当時、ムン前司令官との電話で、「ノ・サンウォンをよろしく手伝ってやれ」と話していたという。その後、ムン前司令官はキム大佐らに「長官から電話がかかってきた。ノ・サンウォンの仕事を手伝ってやれとおっしゃっていた。結局、長官が指示した事項だ」と伝えた。情報司は非常戒厳の際にも、ノ元司令官の指示に従って選管の掌握業務などを遂行している。