「雇用、家族、そして移住をひとまとめにした統合政策パッケージが必要だ。部分的で断片的なアプローチは効果が担保できない」
国際労働機関(ILO)のイ・サンホン雇用政策局長は24日、ソウル中区の大韓商工会議所で開催されたハンギョレ新聞主催の「第15回2024アジア未来フォーラム」で、「少子化により韓国の労働市場は以前と同じではありえない」として、上のように提言した。
イ局長は「労働市場の変化が出生率の変化を呼び起こす」というテーマの基調提起で、「女性の長時間労働と低賃金、政府支援の不十分さなどにより、韓国は0.72(昨年の合計特殊出生率)という世界で最も低い出生率に至った」とし、「これは労働供給システムを根本的に変化させた」と強調した。イ局長が懸念するのは、正確な数字は予測できないが、「数百万人にのぼる大規模な労働力不足」だ。
イ局長は、韓国社会が出生率を回復させることで労働力不足問題を改善できるかどうかについては、やや懐疑的な反応を示した。出産や保育などに対する政府支出はさらに増やすべきではあるものの、他の先進国の例を見ると、出生率を短期間に上げるのは容易ではない。出生率が上がったとしても、実際の労働市場に影響を与えるには少なくとも15年など、相当な時間がかかる。
女性と高齢者の労働市場への参加の拡大も必要だが、限界があるとも指摘した。青年人口の減少に伴って女性の労働市場への参加率も鈍化しており、高齢者もすでに労働市場にかなりの数が参入しているからだ。技術発展や職業訓練などで生産性を画期的に引き上げることで労働力不足を埋めるのも容易ではない。
イ局長は、労働力不足を緩和するためには「移住労働者などの外部からの大規模な助けは不可避にみえる」との見通しを示した。そして「移民市場を開放すれば移住労働者が大挙して韓国に押し寄せると思うかもしれないが、大きな錯覚」だとし、「ケア労働などで全世界的に労働力不足が深刻なため、移住労働者の確保競争が激しい」と強調した。
イ局長は、移住労働の門戸を開放するにあたって今のように低賃金などの劣悪な労働条件が維持されていると、「長期的に(韓国社会に)大きな副作用をもたらすだろう」と予測した。まず懸念されるのが、移住労働の拡大に伴う韓国の若者の失業率上昇だ。イ局長は「低賃金の移住労働者は労働市場の新たな最下層になるだろう。これが悪用されて若者ら現地労働者の雇用状況も悪化する恐れがある」と警告した。このような面から、このところ低賃金などで波紋を広げているソウル市のフィリピン人家事管理士モデル事業に憂慮の視線を送った。
イ局長は、移住労働者の拡大は、彼らを労働市場に統合するか、新たな「最下層」に転落させるかの、二つの道があると説明した。イ局長は「社会的統合政策が必要だ。これは出生率を持続可能な水準に戻すとともに、移住労働者を韓国で働く世界市民として統合するもの」だと語った。そのためには、データにもとづく政策開発▽アジア諸国との協力と連帯の強化が必要だと述べた。