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野党が「200議席」獲得したら…尹大統領は変わるだろうか、辞任するだろうか

登録:2024-04-07 23:53 修正:2024-05-20 11:28
ソン・ハニョン先任記者の「政治舞台裏」 
 
野党200議席だと大統領の拒否権が無力化 
180議席「迅速処理」可能…現状維持 
過半数の政党がない場合、国会議長は選挙で選出 
政治は妥協…尹大統領は肝に銘じるべき
尹錫悦大統領が第22代国会議員選挙の事前投票が始まった5日、釜山江西区鳴旨1洞の行政福祉センターの事前投票所で投票している//ハンギョレ新聞社

 過去と現在と未来は密接につながっています。過去の原因が現在の結果です。現在の原因は未来の結果です。因果関係は、時間をさかのぼって追跡することもできます。現在の誤った結果は過去に原因を見出せます。未来が心配なら、いま何かをしなければなりません。

 政治も同じです。4月10日の国会議員総選挙の結果でどのようなことが起きるのかをあらかじめよく考えれば、いま自分がどのような選択をすべきかが決められます。総選挙後に起こるであろう様々な政治的状況を、各シナリオごとに見ていくことにしましょう。総選挙の結果の予測や見通しはしばらく置いておいてください。各選挙区の最多得票者が当選するという小選挙区制の特性上、総選挙の結果の予測は非常に困難です。各政党の候補たちが得た票の合計と当選者数が一致しないこともありえます。終盤の民意の動向によって、各政党の議席数ががらりと変わることも多くあります。過去のほぼすべての総選挙が予想外の結果を迎えた理由はここにあります。まさに今この瞬間にも、総選挙の票の行方は見えるところで、また見えないところで、激しくうごめいているのです。

200議席

 与党「国民の力」のハン・ドンフン非常対策委員長は連日、「改憲阻止線」を与えてくれと叫んでいます。国民の力が100議席未満にまで落ち込むと、200議席以上を占める野党が改憲によって「国を滅ぼすだろう」という主張です。さすがに保守票を結集させるための「苦戦しているふり」、「脅迫」だと思います。

共に民主党のイ・ジェミョン代表(左)と国民の力のハン・ドンフン非常対策委員長/聯合ニュース

 1948年からこれまで、議席の3分の2以上を一つの政党が獲得した総選挙はあったのでしょうか。ありました。第2共和国時代の1960年の民議院選挙では、民主党が233議席中175議席(75.1%)を獲得しました。第3共和国時代の1967年の第7代総選挙では、民主共和党が175議席中129議席(73.71%)を占めました。第4共和国時代の1973年の第9代総選挙では、民主共和党と維新政友会が219議席のちょうど3分の2にあたる146議席を占めました。本当にずいぶん昔のことです。

 1973年以降は、3分の2以上の議席を一つの政党が獲得したことは、これまで一度もありませんでした。小選挙区制に変更された1988年の第13代総選挙以降の最も大きな勝利は、2020年の第21代総選挙で共に民主党と共に市民党が獲得した180議席でした。今回の総選挙で一つの政党が200議席以上を獲得するというのは、実際にはほぼ不可能だとみるべきです。

 もしそのようなことになったら何が起こるでしょうか。ハン委員長が心配するとおり、共に民主党と共に民主連合、祖国革新党、改革新党、緑の正義党などが200議席以上を確保した場合、どうなるでしょうか。理論的には2つの可能性があります。1つ目は大統領の弾劾訴追です。2つ目は大統領の拒否権の無力化です。

 大統領の弾劾は、国会が議決すれば終わりではありません。最終決定権を持っているのは憲法裁判所です。国会が弾劾訴追を実行するには民意もよく見なければなりません。2016年の朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾訴追案は300人の在籍議員中234人、78%の賛成で可決されました。当時の世論調査で示された弾劾賛成意見とほぼ同じ割合でした。国会が民意に逆らって弾劾訴追を実行すれば逆風にさらされます。2004年の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の弾劾訴追がそのようなケースです。

 大統領の拒否権の無力化はもう少し現実的です。大統領による法案の再議要求に対して、在籍議員の過半数の出席と出席議員の3分の2以上の賛成で改めて国会で可決されれば、その法案は法律として確定します。国政の主導権が事実上大統領から国会へと移ることを意味します。

180議席または過半数

 民主党や祖国革新党などの野党の議席が180議席を超えたらどうなるでしょうか。180議席以上は国会で法案を迅速処理案件に指定し、可決しうる数です。4年前の2020年の第21代総選挙で共に民主党と共に市民党が獲得した議席が、まさに180議席でした。政治地形が4年前と同じになるわけです。民主党と祖国革新党は、検察改革公約などの様々な法案を迅速処理案件に指定し、議決するでしょう。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は今までそうしてきたように拒否権を行使するでしょう。尹大統領の就任から2年の間に起きた悪循環がそのまま繰り返されるわけです。

 民主党が151議席以上を獲得したらどうなるでしょうか。

 第1に、国会議長が民主党から出ることになります。国会議長は、高いのは儀典の序列だけで、権力の序列は低いとされています。実際にそういった面はあります。政治的、政策的な意思決定に対し国会議長が権限を行使することはできません。しかし、国会議長は本会議の議事進行に関して様々な権限を持っています。特に与党と野党が国会で対立している場合は、国会議長の権限は意外と強大です。国会に関する法令を解釈する権限、本会議に案件を付議・上程する権限などがあります。

 第2に、民主党が国会で主導権を握ります。政府与党は法案や予算案を民主党の同意なしに可決させることはできません。大統領は首相、監査院長、最高裁長官、最高裁判事、憲法裁判所長などを民主党の同意なしに任命することはできません。

 逆に国民の力が151議席以上を獲得したらどうなるでしょうか。国民の力から国会議長が出ることになります。本会議の議事進行に関する様々な権限や各種法令の解釈権限を国民の力出身の議長が握ることになるのです。法案、予算案、人事案の主導権も与党に渡ります。尹大統領は民主党の顔色をうかがうことなく、必要な予算案や人事案を推し通せます。

 法案は多少異なります。現行の国会法では、野党の同意なしに与党が勝手に法案成立を推し進めることができないようになっています。政府与党が法案を迅速処理案件に指定するには180議席以上が必要です。国民の力が過半数の議席を獲得しても、民主党の協力なしには必要な立法はできません。

過半数ではない第一党と第二党

 もし民主党が過半数に満たない第一党となったら、どうなるのでしょうか。いや、言い方を変えましょう。民主党、国民の力、いずれの政党も過半数の確保に失敗したらどうなるのでしょうか。

 最も重要なのは国会議長です。民主党のイ・ジェミョン代表は先日、「国民の力が第一党になれば国民の力が国会議長を出すことになる」と述べました。それは違います。国会議長は国会で無記名投票による選挙を行い、在籍議員の過半数の得票で当選します。1回目と2回目で過半数の得票者がいなければ、3回目は最も多くの票を得た者が当選します。第一党から出すという規定はどこにもありません。

 1997年12月の大統領選挙で政権交代が起きた後の、1998年の第15代国会後半期の院構成交渉で、与野党は激しい論争を繰り広げました。新政治国民会議と自由民主連合(自民連)は「連立与党」が出すべきだと主張しました。ハンナラ党は「第一党」が出すべきだと主張しました。自民連のパク・チュンギュ議員とハンナラ党のオ・セウン議員が選挙で争いました。1、2回目の投票では過半数の得票者が出ませんでした。3回目の投票で多数の票を獲得したパク・チュンギュ議員が国会議長に当選しました。

パク・チュンギュ元国会議長=資料写真//ハンギョレ新聞社

 2000年の第16代国会前半期の院構成交渉でも、同じシーンが繰り広げられました。新千年民主党のイ・マンソプ議員とハンナラ党のソ・チョンウォン議員が選挙で争いました。イ・マンソプ議員が140票(51.3%)を獲得し、132票(48.4%)にとどまったソ・チョンウォン議員を破って当選しました。今回の総選挙でも過半数の政党が出なければ、国会議長選挙の可能性があります。民主党と国民の力は他の政党や無所属の当選者を味方に引き入れようとするでしょう。

 朝鮮日報のコラムニスト、キム・デジュン氏は、先月26日付の同紙に「4・10総選挙に政権がかかっている」と題するコラムを書いています。その中に次のような内容があります。

 「選挙の結果、民主党が第一党となれば、政局の主導権はイ・ジェミョン代表に渡らざるを得ない。尹政権にできることは何もない。そのような状況にあって、尹大統領はもはや名ばかり大統領の座にとどまっていることはできない。国の混乱を避けるためには、彼の決断が必要かもしれない」

 総選挙で負けたら大統領を辞めろという話に他なりません。尹大統領も昨年1月の朝鮮日報とのインタビューで、「多数党になれなかったら、ほとんど植物大統領になるだろう」と述べています。大統領の辞任に特別な手続きは必要ありません。辞任すればそれで終わりです。首相が大統領の権限を代行し、任期5年の大統領を新たに選ばなければなりません。尹大統領は本当に辞任するでしょうか。そうは思えません。

尹錫悦大統領が4日、ソウル龍山の大統領室庁舎で行われた民生討論会の後続措置の第2回経済分野点検会議に出席し、発言している/聯合ニュース

 まとめます。総選挙は議会の権力をめぐって繰り広げられる競争であると同時に、国民の代表を選ぶ民主的手続きです。勝利した政党が敗北した政党を追い出し、議会を独占するものではありません。

 第22代国会議員の任期は5月30日に始まります。与野党は第22代国会前半期の院構成をめぐって交渉しなければなりません。第22代国会で最も重要なのは政治の再生です。対話と妥協こそ政治の本領です。政治の再生に失敗すれば国政は漂流し、国と国民は不幸になります。与党と野党、大統領と国会は国政を共に導いていくパートナーだということを忘れないでほしいものです。特に尹大統領は肝に銘じなければなりません。みなさんはどうお考えですか。

ソン・ハニョン|政治部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1135516.html韓国語原文入力:2024-04-07 07:30
訳D.K

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