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朝鮮半島で「全面戦争の可能性はほとんどないが」…局地的衝突の危険性が経済に影響

登録:2024-02-27 08:06 修正:2024-09-24 07:23
北方限界線、再び「朝鮮半島の火薬庫」になることを懸念 
安全保障の不安の長期化が経済に及ぼす影響に注目 
まず言葉の応酬を自制し、対話再開につなげるべき 
金正恩朝鮮労働党総書記兼国務委員長が2月14日、「新型地上大海上ミサイル『パダスリ(ミサゴ)6型』の検収射撃テストを指導し、『海上主権』を武力行使で守らなければならないと強調した」と、労働新聞が報じた/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 最近、韓国内外で「このまま行くと、戦争が勃発するかもしれない」という声が上がっている。それもそのはず、今年に入っても南北当局の舌戦と武力示威は危険水域を越えている。軍拡競争と軍事的準備態勢の強化という物理的な敵対と、「仕掛けてきたらただでは置かない」というような心理的敵対感が上昇作用を起こしていることも、やはり尋常ではない。過去には危機局面が対話局面に切り替わる場合が多かったが、今は対話が消えて対決ムードだけが高まっている。危機が日増しに深まっているのに、出口は見えていない状況だ。

 では、専門家たちはこのような状況をどうみているだろうか。先日、リ・ヨンヒ財団とハンギョレ統一文化財団はこのような疑問を解くため、討論会を開催した。ひとまず、これらの討論会に出席した専門家を含め、多くの人たちは直ちに全面戦争が勃発する可能性はほとんどないという意見を示した。

20日、ハンギョレ統一文化財団主催の討論会で、パネラーが発言している。左からチョン・ヘソン元統一部次官、クォン・ヒョクチョル・ハンギョレ統一外交チーム長、キム・ドンヨプ北韓大学院大学教授//ハンギョレ新聞社

 「戦争も辞さない」と叫んでいる南北当局も、先に戦争を始める意思はないという点を明確にしている。だが、それと同時に、安心できる状況でもないというのが大方の見解だ。偶発的衝突や局地衝突が発生する可能性を排除できないということだ。

 西海(ソヘ)上の北方限界線(NLL)をめぐる南北間の対立が再燃していることが最大の懸念材料になっている。昨年、9・19南北軍事合意が白紙化されたことに伴いNLL南北に設置された緩衝地域が消え、両側の砲射撃訓練と軍事力集中が繰り広げられている。今年に入って北朝鮮はNLLを許可しないとし、自ら設定した「海上国境線」を越えれば戦争挑発とみなし、武力報復に出るという立場を明らかにした。これに対して韓国は、NLLは実質的な海上境界線だとし、北朝鮮の挑発時に「即時に、強力に、最後まで」報復すると応酬している。

 それでは西海は再び「朝鮮半島の火薬庫」になってしまうだろうか。2月16日、リ・ヨンヒ財団主催の討論会に出席したキム・ヨンチョル元統一部長官(仁済大学教授)は、「偶発的衝突の可能性は依然として排除できない」としながらも、二つの武力紛争の抑止状況に注目した。一つは、過去とは異なり、漁労限界線を設定して取り締まりに乗り出すなど、南北が衝動を予防できる政策が試みられていることだ。もう一つは「北朝鮮がみずから設定した海上国境線を押し通す軍事力を持っているとは考えにくい」という点だ。北朝鮮が「政治的には海上国境線を発表することはできるが、それを軍事的に支えることは全く別の問題」だと、キム元長官は指摘した。

 同討論会に出席したムン・ジャンリョル元国防大学教授も、西海で北朝鮮が韓国より軍事的な劣勢にあるため、大きな被害を甘受してまで軍事的に海上国境線を強制することは難しいだろうとみた。ただし、「金正恩委員長みずから公表したため、これを取り消すことはできないだろう」とし、北朝鮮の思惑と意図を正確に把握することは非常に難しい状況だと診断した。こうした不確実性に備えるためには早急に対話を再開しなければならないが、南北関係の現実や「尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権ではこれを期待することが非常に難しい」ことに問題があると指摘した。

 2月20日にハンギョレ統一文化財団主催で開かれた討論会でも、西海上の対立は中心議題だった。海軍将校出身のキム・ドンヨプ北韓大学院大学校教授は、9・19南北軍事合意で代表される安全ピンが除去された状態で、「相互間疎通チャンネルまで不在の前例のない状況」にあるとして、懸念を示した。

 このような状況で、ある一方の海上射撃訓練が誤った判断と誤認をもたらし、偶発的衝突につながるシナリオの可能性が高まっているということだ。ハンギョレの統一外交チーム長を務めるクォン・ヒョクチョル記者は、尹錫悦政権は強力な対北朝鮮報復態勢を構築し、これを誇示することが平和を守ると自信を示しているが、果たして政府と軍当局が「危機管理能力を見せているのか」について疑念を抱かざるを得ないと語った。政府が「力による平和を強調すればするほど、国民の不安が高まる状況」を直視すべきだと指摘した。

 万が一、西海などで局地的な衝突が発生した場合、戦争に拡大する危険性についてはどのようにみているのだろうか。キム・ヨンチョル元長官は「北朝鮮の核能力が過去と比べて非常に成長し、韓米同盟の拡大抑止も以前よりはるかに精巧な対応体制が用意されており、相互間に一種の抑止が維持されるとみられる」と語った。また、戦争拡大における重要な要素の一つは戦時作戦統制権の行使主体だが、韓国ではなく米国が持っているという点も戦争拡大を抑止する要因になるだろうと主張した。キム元長官は「だからといって、これが良い状況では決してない点」も強調した。偶発的衝突の危険性など安全保障の不安が固着化・長期化すれば、すでに不況に陥った韓国経済のさらなる低迷につながりかねないということだ。キム・ドンヨプ教授は共倒れの恐れが戦争を抑止する効果があるが、「全面戦争が起きる可能性が少ないからといって、制限戦争もそうだろうと予想するのは、非常に危険であるだけでなく、むしろその反対方向に動く可能性もある」と指摘した。制限戦争を防ぐ装置も、制限戦争が全面戦争に飛び火することを防ぐ装置も確実ではないという意味だ。

 このように二つの討論会に参加した専門家たちは、全面戦争の危険性は低いが偶発的または小規模衝突の危険性は存在しているという点では一致した。このような状況を打開するためには、メッセージ管理から危機管理を始め、対話再開に向けたムードづくりに力を入るべきとの指摘も相次いだ。クォン・ヒョクチョル記者は「現在尹錫悦政権では、体系的でなく一貫性のない言動が相次いで飛び出しているのが現実」だとし、「南北双方が言葉の応酬を自制すること」から始めるべきだと注文した。キム・ドンヨプ教授は「民族、統一を語るより、平和、安定、軍縮について議論した方がより効率的かもしれない」とし、「未来世代のために認識の転換を考えなければならない時期」だと力説した。ムン・ジャンリョル元教授は、平和陣営の政治勢力化の必要性を強調した。尹錫悦政権は言うまでもなく、文在寅(ムン・ジェイン)政権の責任も大きいとし、「しっかりした平和勢力が政権を握って、しっかりした政策を執行しなければならない」と語った。

チョン・ウクシク|ハンギョレ平和研究所所長(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1129783.html韓国語原文入力:2024-02-26 08:30
訳H.J

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