韓国警察が昨年10月、龍山(ヨンサン)の大統領室前の道路を「主要道路」と定めて集会・デモを禁止したなか、裁判所は梨泰院(イテウォン)惨事の遺族らの行進を許容すべきだという判断を下した。警察の関連施行令の強化に対して、裁判所が「集会の自由を過度に制限する」という初の判断を下したということだ。
ソウル行政裁判所行政7部(チョン・サンギュ裁判長)は26日、10・29梨泰院惨事市民対策会議(市民対策会議)が龍山警察署長を相手取って起こした集会禁止通告の処分執行停止(効力停止)申立てを認容した。市民対策会議は、今月29日午後1時59分に梨泰院駅1番出口から龍山の大統領室前までの道路で、特別法即刻公布を求めて「五体投地」(両手両膝、額を地面に投げ伏す、仏教で最も丁寧な礼拝の一つ)を行うとして道路使用を届け出たが、警察は「施行令で定めた主要道路(梨泰院路)に当たる」として禁止処分を下した。
警察は大統領執務室から100メートルの境界内である点や、国防部の敷地は軍事施設に当たるという点を挙げ、各種の政府機能や軍の作戦遂行に問題が生じる恐れがあるという理由も挙げた。これに先立ち、警察は集会やデモ活動を禁止できる「主要道路」に梨泰院路を追加することを内容とする「集会・示威行為に関する法律(集示法)施行令改正案」を昨年10月に公布している。
だが、裁判所は「公共の福利に重大な影響を及ぼす恐れがあると認める資料がなく、禁止通告によって届出者(市民対策会議)には回復しがたい損害が生じる恐れがある」とし、行進を許容する判決を下した。
裁判所は、「大統領執務室」は集示法で屋外集会およびデモの禁止場所と規定された「大統領官邸」に含まれるとはみなせないと判断した。以前の大統領府では大統領の住居(官邸)と執務室が分離されておらず、大統領執務室も集示法で保護されていたが、すでに分離された以上、別とみなさなければならないという意味だ。裁判部は「執務室を官邸に含めることは、集会の自由を過度に制限する拡大解釈」だと指摘した。
また、裁判所は梨泰院路が主要道路だとしても、五体投地の行進が午後2時頃から予定されており、参加人員も100人で車両1台のみを利用するため、周辺の交通に影響を及ぼさないと判断した。同様に裁判所は軍の作戦遂行に対する被害の懸念についても「国防部請願室前の車の進入路は確保して行進を進めることに合意したため、この件の行進で作戦遂行に懸念があるとみるほどの具体的な事情はない」とも強調した。
今回の裁判所の判断は、市民対策会議が警察の処分に対する執行停止申立てをした当日に決定された。「民主社会のための弁護士会」のチェ・ジョンヨン弁護士は「警察の交通管理と大統領官邸を理由とした集会禁止通告は違法であるとすみやかに判断したもの。警察が施行令を強化したなかでも、裁判所は執務室前で集会を行うことは可能だという初の判断を下した」と伝えた。