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「男性逆差別を確信していたが、実は女性嫌悪が私たちの日常だった」=韓国

登録:2024-01-04 08:36 修正:2024-01-04 09:12
「おまえフェミニだろ」問う社会 
反フェミ・傍観者からフェミニストになった男性たち 
韓国社会を見つめて学んだら 
女性が毎日のように直面する差別感じる
17日午後、ソウル麻浦区の「イ・ハンニョル記念館」にある「男性と共にするフェミニズム」の事務所でフェミニスト活動家キム・ヨヌンさん(左から)、キム・テファンさん、イ・ハンさんがハンギョレのインタビューに応じている=キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

 「『男性連帯』の代表だった故ソン・ジェギさんを尊敬していました。私は『意識の高い人』だから『アンチフェミ(フェミニズム)』になったのだと思っていました」

 「男性フェミニスト」のピョン・ヒョンジュンさん(22)は、中学生時代までは反フェミニストだった。「なぜ男だけが軍隊に行かなければならないのか」という疑問を抱き、考えれば考えるほど「男性が差別されている」という確信が生じたからだ。「軍加算点制の復活」を叫び、女性の立ち入りのみを認めた堤川(チェチョン)女性図書館前で抗議デモをおこなったソン・ジェギ氏は、ピョンさんにとって「悔しい思いをしている」男性たちの「代弁者」であり「男性人権運動家」だった。その時代、ピョンさんは好きだったガールフレンドにすら「男性が差別されている」とためらうことなく語ってもいた。

 このような考えにひびが入ったのは、高校時代に学校の先輩である大学生の男性からフェミニズムについて聞いてからだ。当時の韓国社会は「江南(カンナム)駅女性殺人事件」、「朴槿恵(パク・クネ)大統領弾劾」、「MeToo」論争などの大きな事件を経て、変化を求める声が高まりつつあった。「変わりつつある時代の流れに乗るという気持ちでフェミニズムを見つめるようになったんです」

 ピョンさんは『悪いフェミニスト』、『82年生まれ、キム・ジヨン』などのフェミニズム関連の本を手当たり次第読んだ。いつも弟の後回しにされる娘、バスで痴漢行為を受ける女子生徒、出産後にキャリアが断絶する社会人女性に至るまで、「特殊な例だとばかり思っていたそのようなことが、女性にとっては非常に一般的だということを(本を通じて)知りました」。ピョンさんはその後、「なぜフェミニズムが必要なのか」という問いに自然に答えられるようになった。

 「自分はフェミニスト」だと宣言はしたものの、依然として「口だけフェミニスト」水準だったという思いから、ガツンとショックを受けることもあった。「私より1学年下の女性の後輩が自習室で、男子学生たちが自分のことを『あいつフェミなんだってさ』、『あいつメガル(フェミニズムのコミュニティーサイト「メガリア」に出入りしている人)だぜ』と言っているのを聞いたそうです。当惑してその話を同期の女性に話したところ、その友人は「女性はみんな(そのような言葉に)耐えて生きている」、「いちいち反応した瞬間、生きていけなくなる」と言っていました。(普段)女性たちが感じている重みがどれほどのものなのか、きちんと理解できていなかったんです」

 ピョンさんだけでなく、最近ハンギョレが取材した「男性フェミニストたち」は「周りの女性たち一人ひとりの話を聞くと、実感できていなかったこと(女性差別・嫌悪)は『本当にあったんだ』と思う」と語った。イ・ハンさん(32)は、2016年の江南駅女性殺人事件が起きた時でさえ、怒って街頭に押し寄せた女性たちが理解できなかった。「精神疾患者がやらかした(偶発的な)犯罪に過敏に反応しすぎているのではないかと思ったから」だ。女性の友人たちはそんな彼に「違法撮影カメラが怖くて公衆トイレにもマスクをして行くし、壁にある穴をペーパーで塞ぐ」と話してくれた。「私は夜遅くにタクシーに乗るとすぐに寝てしまいますが、彼女たちは互いにタクシーのナンバーを撮って共有していました。『同時代に異なる人生を生きているんだな』という思いがしました」

 彼らは、フェミニズムを知ってからは女性嫌悪がどれほど日常のあらゆる場所にころがっているかに改めて気づかされたと口をそろえた。キム・ヨヌンさん(28)は「彼女のアカウントでゲームをしたことがあるんですが、(アカウント名だけを見て)私に自分の性器の写真やセクハラまがいのメッセージ、さらには性売買の提案まで送りつけてくる人がいました。初めての体験なので驚きましたが、彼女は『そういうもの』だと言っていました」と語った。

 「男性たちの間では、青少年の時から『もっと笑わせなければならない』という強迫の中で、強いふりをして誰かをからかったり蔑視したりする雰囲気があるんです。『こんなことをしていていいのか』と思うんですが、いじめられそうだから、一緒になって女性や性的マイノリティを侮蔑して笑って騒いでいるんです」。キムさんはさらに、「女性が少ない軍で2年間生活していると、普段はそうでなかった人も女性嫌悪が染みついて出ていく可能性もあるという気がします」と語った。

 イさんも「男性の間に広がっている嫌悪文化の核は『自分が相手より上に立たなければならない』という階層秩序のような気がします。このような秩序の中で女性などに対する(暴言、セクハラなどの)暴力が続いていくのです」と述べた。

 ピョンさんは「主に男性が好きな趣味生活を送っていると、女性嫌悪文化に自然にさらされざるを得ないと思う」と話した。例えば、ピョンさんはプロ野球のLGツインズのファンなので、たびたびファンの集うオンラインコミュニティーをのぞくが、「女性ファンのことを『ジュィー(ネズミ)スニ(LGの『G(ジー)』から取ったもの)』と見下す表現をよく見る」と話した。野球もまともに知らない女性ファンがイケメン選手を追いかけ、場を汚していると非難しているというわけだ。ピョンさんはコメントで論争が起きると、すぐに「おまえ『ピッサゲ』(月経中の女性を侮蔑する言葉)だろ」という嫌味を言われるとも語った。

 キム・テファンさん(29)はこのような雰囲気の中で、「中学校時代には、誰もが言われたくないことを言われれば、『ニエミ』(母親を侮辱する言葉)のような言葉を流行語のように使っていた」とし、「私も加害者、傍観者であり、被害者でもあった」 と語った。彼は中学生の頃、友人にいじめられていたという。「いじめられて殴られる時には、よく『男らしくない』、『男がプライドもないのか』と言われていました。そのせいで、青少年期を通して自分自身が嫌いでした」。キムさんは「フェミニズムを知ってから、男らしくないことは間違っているのではなく、(そのように規定する)体系こそが間違っていることを知った」と語った。彼にとってフェミニズムとは「存在をそれそのものとして認める平等の言語」だった。「『男らしくあらねばならない』という荷を下ろしてからとても楽になりました。フェミニズムは男女を問わず、あらゆる人間にとって役立つものだと思います」

 4人は、このような「長所」を享受するためにも、フェミニズムは男性にとっても必要だと言う。彼らは「自分を閉じ込めている悪い考えから自分を自由にし、人も自由にする考え、かつ道具」(キム・ヨヌンさん)であり、「相手との水平的な関係において深い縁を作ってゆく道を開いてくれるもの」(イ・ハンさん)こそがフェミニズムだと語った。

オ・セジン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/women/1122737.html韓国語原文入力:2024-01-03 05:00
訳D.K

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