朝鮮労働党の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は南北関係を「敵対的な二国間関係」と規定しつつ、対南部門の根本的な方向転換を宣言した。1991年に結ばれた南北基本合意書は、南北関係を「国と国との関係ではなく、統一を目指す過程で暫定的に形成される特殊関係」であると明文化している。この32年間、南北はこのような「南北関係の特殊性」を前提として対話と交流協力をおこなってきた。北朝鮮がそれを転換することを公式に宣言したことで、2023年に強対強へと向かった南北関係が今年回復することはさらに難しくなった、との評価が示されている。
朝鮮中央通信(中通)は31日、12月26~30日に開催された労働党中央委員会第8期第9回全員会議の結果とともに、金正恩総書記が「北南(南北)関係はもはや同族関係、同質関係ではなく、敵対的な二国間関係、戦争中の交戦国関係として完全に固まった」、「大韓民国のものたちとはいつになっても統一は実現できない」と述べたことを報じた。昨年7月にキム・ヨジョン労働党副部長が談話で「大韓民国」との呼称を用いつつ、南北関係を国と国との関係と考える態度を示したが、今回の全体会議で北朝鮮はそれを公式化したのだ。昨年7月、韓国のクォン・ヨンセ統一部長官(当時)は国会答弁で「憲法に統一追求義務が明示されているため、南北を二つの国とみるのは憲法に反し、受け入れられない」と述べている。
金総書記は、「我々の制度と政権を崩壊させるという傀儡たちの凶悪な野望は、『民主』を標榜しようが『保守』の仮面をかぶっていようが、少しも変わらなかった」とし、「我々(北朝鮮)を『主敵』と宣言し、外国勢力と野合して『政権崩壊』と『吸収統一』の機会ばかりを狙う輩を和解と統一の相手と考えることは、もはや我々が犯してはならない過ちだと考える」と強調した。続いて「有事の際、核武力を含むあらゆる物理的手段と力量を動員し、南朝鮮の全領土を平定するための大事変の準備に拍車をかけ続けていかなければならない」と述べた。
国家安保戦略研究院のチェ・ヨンファン責任研究委員は、「北朝鮮が韓国を民族や善隣友好関係ではなく徹底した国家間敵対関係とみなし、統一や協力を議論する対象ではなく軍事的に勝利を目指す関係とみている点が懸念される」と述べた。統一研究院のホン・ミン先任研究委員は、「韓国を交戦国関係と設定すれば、同じ民族を核の標的にするという矛盾を回避して韓国への核使用を主張したり、韓米日の拡大抑止に対応して核能力を活用する余地を作ることができる」と述べた。
北韓大学院大学のヤン・ムジン教授は「敵対的な国とは対話できないということで、北朝鮮が高麗連邦制(1民族1国家2体制2政府)などの統一政策も修正しうるという意味だと考えられる」と述べた。金総書記は「党中央委員会統一戦線部をはじめとする対南事業部門の諸機関の整理、改編に向けた対策を立て、根本的に闘争原則と方向を転換しなければならない」と語っている。
金総書記は、朝鮮半島情勢の悪化の責任を米国と韓国に転嫁するとともに、核武力の増強を国防課題として掲げている。そして海軍力の向上、無人武装装備の開発と生産の推進も主張している。金総書記は「強対強、正面勝負の対米・対敵闘争原則を一貫して堅持し、高圧的で攻勢的な超強硬政策を実施しなければならない」と述べて、強硬な対応の意志を明らかにした。さらに中国、ロシアとの協力を強化する考えも明らかにした。金総書記は「(米大統領は)反共和国核対決綱領である、いわゆる『ワシントン宣言』を南朝鮮と作成し、核兵器使用の共同計画および実行を目的とした『核協議グループ(NCG)』を新設・稼動し、我々に対する核戦争の悪だくみをあらゆる形で推進していっている」とし、「変遷する国際情勢に合わせて、米国と西側の覇権戦略に反旗を翻す反帝国的・自主的な国々との関係を一層発展させ、我が国の支持連帯基盤をさらに強固にしていく」と述べた。チェ・ヨンファン責任研究委員は「中ロとの関係を拡大するとともに、2024年の米国大統領選挙を前にジョー・バイデン大統領の政策の失敗を示そうとの目的もあるようにみえる」と述べ、「北朝鮮は海軍力を強調しているが、ロシアとの軍事協力なしには実現は困難だ」とも付け加えた。
一方、金総書記は報告で「穀物は103%、電力・石炭・窒素肥料は100%、圧延鋼材は102%…住居は建設中の世帯数が109%で、人民経済発展の12高地がすべて占領された」と経済成果を列挙した。内に向けては内政に気を配る指導者の姿を強調して体制を引き締め、外に向けては制裁の強化などにもかかわらず乗り越えられるという自信を示したものといえる。