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日本軍「慰安婦」損害賠償請求訴訟で勝訴、今度は日本政府に直に問う

登録:2023-11-24 07:23 修正:2023-11-24 07:38
ソウル高裁、一審の判断覆し原告勝訴判決 
被害者側「これまで勝訴と却下が交錯し真相究明難しかった 
障害は解消されたため、日本の責任ある謝罪を求める」
23日午後、日本軍「慰安婦」被害者と遺族が日本政府を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で、ソウル瑞草区のソウル高等裁判所は原告の請求を却下した一審の判断を取り消した。イ・ヨンスさんが判決を聞いて喜んでいる/聯合ニュース

 「一審判決を取り消す。原告に請求金額の全額と遅延損害金を支払うよう命ずる」

 23日午後2時、ソウル中央地裁308号室。裁判官が勝訴判決を読み上げると、「慰安婦」被害者のイ・ヨンスさん(95)は車椅子からがばっと立ち上がった。両手を合わせて裁判長に向かってしきりに頭を下げ、涙を流した。

 2016年末に訴訟を起こした「慰安婦」被害者は11人だったが、今や残っているのはイさんただ一人。この日の判決が確定すれば、韓国国内の「慰安婦」被害者が日本政府を相手取って起こした損害賠償請求訴訟はすべて勝訴で終結する。被害者支援団体は「判決の食い違いが統一されたので、日本政府に謝罪と責任ある賠償を求める土台が確立された」と述べた。

 ソウル高裁民事33部(ク・フェグン裁判長)は23日午後、イさんと故クァク・イェナムさん、キム・ボクトンさんの遺族ら16人が日本政府を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の控訴審で、一審の却下判断を取り消し、請求金額をすべて認めた。イさんら日本軍「慰安婦」被害者と遺族は2016年12月に、1人当たり2億ウォン(約2300万円)の賠償を求め、日本政府を相手取って訴訟を起こしていた。

 一審と二審の判断を分けたのは、「主権免除(国家免除)」の法理を認めるか否かだった。二審は「(最近の)国際慣習法によると、日本の行為は韓国領土で韓国国民に対して行われた不法行為であるため、日本の主権免除は認めず、韓国裁判所の裁判管轄権を認めるのが妥当だ」と述べた。

 主権免除とは、国内の裁判所が他国の政府とその財産に対して裁判管轄権を行使できないようにすることで、国を互いの裁判管轄権から保護しようという国際法の規則。一審は主権免除の法理を認め、訴訟を却下していた。

 二審は日本政府の行為の違法性も認めた。二審は「日本国の前身である日本帝国も日本国の現行憲法第98条2項に則り、日本国が締結した条約と国際法規を順守する義務がある」とし、「『陸戦の法規慣例に関する条約(ハーグ陸戦条約)』、『婦人及び児童の売買禁止に関する国際条約』、『奴隷条約』、『強制労働に関する条約』などに違反している」と述べた。続けて「日本帝国の公務員が過去に刑法第226条で禁止する『国外移送目的の略取・誘引・売買』行為をおこなっただけでなく、日本帝国政府はこれを積極的に助長したりほう助したりした」と説明した。

 1965年の韓日請求権協定と2015年の「慰安婦」合意によって被害者の損害賠償請求権が消滅したかどうかは判断を下さなかった。裁判所は「被告側の抗弁がないため、特に判断しなかった」と述べた。日本政府は韓国裁判所の判決に対応していないため、この日の判決はそのまま確定する可能性が高い。

 イさんを含む「慰安婦」被害者たちは韓国政府に対応を求めてきたが、2015年の韓日「慰安婦」合意以降は「韓国政府に期待することは困難」と判断し、わらをもつかむ思いで韓国裁判所で損害賠償請求訴訟を起こした。

 しかし、勝訴したにもかかわらず、実際に賠償を受けるのは容易ではないとみられる。日本政府の資産を強制的に売却して賠償金を調達しなければならないが、外交問題などが複雑に絡んでいるからだ。

 「慰安婦」被害者の日本政府を相手取った訴訟は、1次(ナヌムの家)と、この日判決が下された2次(正義記憶連帯・民弁)に分けられる。1次訴訟では2021年1月に、日本政府に被害者1人当たり1億ウォンの賠償を命じる原告勝訴の判決が下され、まもなく確定した。しかし1次訴訟の原告たちも、3年が経過したにもかかわらず実質的な賠償は受けられていない。

 1次訴訟の原告たちは賠償金と訴訟費用を受け取るため、財産明示決定と訴訟費用の取り立てを請求した。裁判所は主権免除の法理を引用し、訴訟費用は「取り立てられない」との決定を下した。日本政府の韓国国内の財産目録の公開を命じる財産明示決定は、別の裁判所によって認められた。原告はこの決定に則り、日本政府が「和解・治癒財団への拠出金」の返還請求権を持っていることを確認し、これを差し押さえることを検討中だ。

 この日勝訴した2次訴訟の原告たちは、「返還請求権の差し押さえ」ではなく日本政府に直に謝罪と賠償を求める、との立場だ。訴訟を率いたクォン・テユン弁護士は記者会見で「本日の判決までは勝訴・却下と判決が交錯していたため、真相究明運動をおこなったり日本政府に賠償義務の履行を求めたりするうえで困難があった」とし、「今や障害は解消され、裁判所で被害者の権利が確認されたため、日本政府の直接の謝罪と責任ある賠償を求める」と語った。

イ・ジェホ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1117608.html韓国語原文入力:2023-11-23 17:49
訳D.K

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