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日本は有料、韓国は無料?危険地域からの避難時の航空機、常に無料ではない

登録:2023-10-18 04:05 修正:2023-10-18 08:54
イスラム武装組織ハマスの奇襲攻撃を受けたイスラエルで孤立した韓国国民をはじめとする現地滞留者らが14日夜、京畿道城南のソウル空港に到着し、韓国空軍のKC330「シグナス」多目的空中給油輸送機から降りている/聯合ニュース

 イスラエルとハマスによる戦争が始まってから7日後の13日、韓国政府は空軍輸送機「シグナス」(KC330)をイスラエルのテルアビブ空港に急派した。この輸送機に乗り、イスラエルに留まっていた韓国人163人と日本人51人、シンガポール国民6人など合わせて220人がイスラエルを脱出し、14日、無事に京畿道城南市(ソンナムシ)のソウル空港に到着した。これらの人たちに韓国政府が請求した費用は0ウォンだ。

 ところが14日、一足遅れてイスラエルにチャーター機を飛ばした日本政府は、自国の海外在住の国民8人をアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ空港まで運んだ代価として、1人あたり3万円を請求した。論議がおきると、日本の松野博一官房長官は16日の記者会見で、そうした費用請求は「適切だった」と明言した。

 日本とは違い、韓国政府が海外在住の自国民だけでなく他国の国民も費用請求なしで輸送したのはなぜだろうか。

■政府による移動手段投入の場合、原則は自己負担

 通常、政府が危険な状況にある海外在住の国民を保護するために、現地に移動手段を投入する場合、費用の一部を自己負担させることが原則だ。他国も同じだ。

 「在外国民保護のための領事助力法」第19条1項は、「在外国民は、領事助力の過程で自身の生命・身体および財産の保護に要する費用を負担しなければならない」と規定している。これにしたがい外交部は、合理的な範囲内で、政府が支援する移動手段の利用費用を個人に請求できる。

 ただし、経費負担をしなくてもいい場合がある。経済的に費用を負担できない無資力者や、安全地域から待避する他の手段がなく国家が移動手段の投入を決めた場合であれば、個人負担は免除される。外交部はこのような場合に備えて今年20億ウォン(約2億2000万円)の予算を編成していた。

韓国政府はイスラム武装組織ハマスとの武力衝突が続いているイスラエルに軍用輸送機を派遣し、韓国人163人を待避させた。空軍第5空中機動飛行団所属の輸送機操縦士パク・ジョンヒョン少佐が搭乗を案内している/聯合ニュース

 今回帰国した海外在住の韓国人の場合、民間航空を通じてイスラエルから脱出する方法がなく、政府が軍用輸送機を派遣したケースに該当したため、個人に費用を請求しなかったというのが外交部の説明だ。これに先立ち、11日に先に帰国した海外在住の韓国人192人は、大韓航空の航空便を使って帰国したが、大韓航空はその後、安全を理由にイスラエル行きの運航を中止し、残りの海外在住者は民間の航空便を利用できない状況だった。外交部のチョン・ガン領事安全局長は「民間航空会社が安全問題によって飛べない状況だったので、軍用輸送機を投入することになった」とし、「国防部に協力を要請してシグナスを投入し、関連費用は外交部の予算で負担することにした」と説明した。

 日本とシンガポールの国民を乗せたのは、他の費用が追加されないためだ。外交部関係者は「具体的にシグナスの派遣費用がいくらだったのかを明らかにすることは難しいが、民間航空のチャーター機を飛ばすよりは費用が少なく済んだのは事実」だとしたうえで、「輸送機内の座席が余った状況で、費用が追加されるわけでもないので、人道的観点から他国民も移送した」と述べた。

■過去はどうだったか…費用を請求したことも

 過去にも韓国政府は、海外で危険な状況が発生した場合、在外国民の保護のために民間航空会社のチャーター機や軍用輸送機であるシグナスを投入した。直近では4月に、内戦が拡大したスーダンにシグナスを派遣し、現地滞在の韓国人28人を救助した。2020年に中国の武漢で新型コロナウイルス感染症が急速に拡大したときも、チャーター機を飛ばして海外在住の韓国人700人あまりを韓国で移送し、2017年にインドネシアのバリ島でアグン火山が爆発して国際空港が閉鎖されたときも、チャーター機で273人を帰国させた。

 ただし、2021年1月の領事助力法の施行前は、経費負担に関する規定が散在してあいまいになっており、状況に応じて経費策定などの判断がなされていた。

 2011年のリビア内戦の際には帰国チャーター機の費用を個人に請求し、2015年のネパール地震の際には修学旅行で訪問していた生徒たちの帰国チャーター機の費用は政府が負担したという。2017年のバリ島のチャーター機の費用は個人に請求した。中国の武漢でチャーター機に乗って脱出した海外在住者は成人1人あたり30万ウォン(約3万3000円)を、バリからチャーター機で脱出した人たちは、1人あたり42万ウォン(約4万6000円)を負担した。外交部関係者は「領事助力法が制定されたことで、関連の規定や基準がより明確になり、これから関連事例を積み重ねていく」と述べた。

10月12日(現地時間)イスラエルのテルアビブにあるベングリオン空港で、アルゼンチン市民がイタリア・ローマ近くの空軍基地に向かうアルゼンチン空軍C-130ヘラクレス航空機に搭乗している/AFP・聯合ニュース

■日本国内の反発世論の理由は

 韓国輸送機に日本人が搭乗したニュースが報じられると、日本人たちはX(旧ツイッター)などのSNSを通じて韓国に謝意を表し、岸田文雄内閣に「対応が遅い」という批判的な反応を示した。また、自国民に費用を請求することについても否定的な世論があった。16日付の毎日新聞は、第一野党の立憲民主党の泉健太代表が、日本政府の対応を批判する内容をXに投稿したと報じた。

 毎日新聞は、日本政府が費用を請求したのは、テルアビブ国際空港では現在でも航空便が利用可能であり、一般の航空機を利用してイスラエルを離れた日本人がおり、公平性を考慮したためだとする外務省の説明を報じた。日本政府のチャーター機に8人だけ乗せた理由は、目的地が日本でなくドバイで、負担金があったためだというのが毎日新聞の分析だ。日本も、過去には他の移動手段がない場合、無料で自国民にチャーター機を提供した事例があるという。

 こうした説明にもかかわらず、日本国内で批判世論があるのは、最近、経済問題などで岸田内閣の支持率が低下していることと関係しているものとみられる。朝日新聞などの現地メディアは14~15日の世論調査で、岸田内閣の支持率が発足以来最低水準の29%を記録し、前月(37%)に比べ大幅に下落したと報じた。

ナム・ジヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/1112444.html韓国語原文入力:2023-10-18 01:18
訳M.S

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