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「朝鮮半島新冷戦」進む中、性急な理念外交…尹政権は「実利外交」への転換を

登録:2023-09-16 01:55 修正:2023-09-16 06:35
朝ロ会談に対する専門家らの評価と分析
北朝鮮の金正恩国務委員長が13日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と会談したと、朝鮮中央テレビが14日報じた/聯合ニュース

 今月13日に開かれた北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長とロシアのウラジーミル・プーチン大統領の朝ロ首脳会談について、外交専門家らは両国関係を過去最高水準に引き上げる契機になったと評価した。同時に韓国にとっては最も厳しい対ロ関係に直面することになったと分析し、理念ではなく実利と柔軟性に基づいた朝中ロ外交を展開すべきだと提言した。ハンギョレは14日、キム・ジュンヒョン元国立外交院長、パク・ビョンファン・ユーラシア戦略研究所所長、ヤン・ムジン北韓大学院大学教授、ウィ・ソンラク元駐ロ大使、チェ・ソンフン韓国外国語大学教授(ロシア語)の5人の専門家に朝ロ首脳会談の評価と分析、見通しなどを聞いた。

左からヤン・ムジン北韓大学院大学教授、キム・ジュンヒョン元国立外交院長、パク・ビョンファン・ユーラシア戦略研究所長//ハンギョレ新聞社

■朝ロ関係に新たな道しるべを作った会談

 専門家たちは、北朝鮮とロシアが首脳会談を通じて、かつてないほど緊密な関係を築いたと評価した。ウィ・ソンラク元駐ロ大使は「朝ロ関係が劇的に強化されたことが浮き彫りになった。首脳会談が特に国連安保理のこれまでの制裁決議や国際規範などを無視するような形で行われたため、国際社会の衝撃が大きかった」と語った。

 チェ・ソンフン韓国外大教授(ロシア語)も「朝ロ関係に新たな道しるべを作った」とし、「ロシア・ウクライナ戦争勃発による西欧の対ロ制裁などがロシアに新たな選択を迫り、これを北朝鮮が利用して新しい朝ロ関係を形成した。ウクライナ戦争による国際社会の変化がもたらした結果」だと指摘した。

 朝鮮半島周辺の新冷戦構図はさらに強化されたとみている。ヤン・ムジン北韓大学院大学教授は「ロシアが北朝鮮をウクライナ戦争の補給基地として使おうとしているようだ。今回の首脳会談で、韓日と朝ロの対決構図と新冷戦構図がさらに深刻化した」と述べた。キム・ジュンヒョン元国立外交院長は「先月キャンプデービッド韓米日首脳会談が終わった時、これから新冷戦が本格化すると予測したが、確実にその方向に向かっている」と語った。

左からウィ・ソンラク元駐ロ大使、チェ・ソンフン韓国外国語大学教授//ハンギョレ新聞社

■武器取引の水準は未知数

 経済や軍事などについては、朝ロがさまざまな分野で交流を拡大すると予測した。ただし、武器取引の水準がどの程度なのかについては、見通しが一致しなかった。プーチン大統領が北朝鮮に衛星開発を支援する意向を示しており、ロシア側は「発表されてはならないセンシティブな分野の協力を履行する」とし、ウクライナ戦を行うロシアに対する北朝鮮の通常武器の供与を暗示した。

 ウィ・ソンラク元大使は「両国は認めないだろうが、(北朝鮮によるロシアへの)武器供与問題も話し合っただろう」と述べた。さらに、プーチン大統領が衛星技術の伝授に前向きな態度を示したことに触れ、「衛星も軍事偵察用として使われる可能性がある」と指摘した。ヤン・ムジン教授も「北朝鮮は砲弾を渡し、ロシアは偵察衛星に対する技術支援を行うものとみられる」と述べた。

 一方、キム元院長は「ロシアでは韓国が今後ウクライナ戦争に対して示す態度を見て、北朝鮮との軍事協力の水準を決めるだろう。今回の会談だけで、センシティブな軍事技術を北朝鮮に移転することに決めたとは考えられない」と述べた。チェ教授も「ロシアは北朝鮮の衛星打ち上げを支援するとし、宇宙関連における協力を約束したが、軍事協力に関する具体的な話はなかった。具体的な事項は今回の会談で合意がなされていないようだ」と語った。

■朝中ロ密着の手順

 朝ロ首脳会談を機に朝ロが中国との接点も広げると予測しながらも、密着度は韓米日より低いレベルになると見通した。

 チェ・ソンフン教授は「中国は韓米日3カ国協力に対応するためには朝中ロの連帯を強化するしかないと判断しているようだ」とし、「中国は、冷戦時代に中国とソ連から利益だけを得ようとした北朝鮮の外交方式が再現されるのではないかと警戒しているかもしれない」と語った。パク・ビョンファン所長は「第二次世界大戦後、ロシアと中国、北朝鮮の関係は連帯しながらも牽制する三角関係だった。3カ国が韓米日のように一丸となるという意見には否定的だ」と述べた。ウィ元大使は「中国は米国主導の東アジア秩序に反対するロシアの動きに共感しているものとみられる。したがって大きな流れで中国とロシアは連帯するだろう」と予想した。

■尹錫悦政権、理念ではなく実利の外交を展開すべき

 専門家たちは、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が外交的難関に直面したとして、韓米日中心の価値、理念中心の外交から抜け出し、朝中ロと実利外交を展開すべきだと指摘した。チェ教授は「朝ロ首脳会談で尹政権の外交路線が大きく失敗したことが明らかになった」とし、「世界秩序の大転換期にあまりにも性急に理念に基づいた決定で選択肢を狭めてしまった。これを突破するためには、中ロと対話を深めるしかない」と指摘した。

 ウィ元大使は「韓米日の連携を進めていくと、朝中ロの反発というコストが発生する。それもきちんと管理しなければならない」とし、「現在尹錫悦政権の外交は米国と日本に対する政策があるだけで、中ロに対しては明確に示されたことがない」と語った。

シン・ヒョンチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1108653.html韓国語原文入力:2023-09-15 08:54
訳H.J

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