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[社説]大統領の「名誉回復」のために報道機関を強制捜査する韓国検察

登録:2023-09-15 06:57 修正:2023-09-15 10:09
ニュース打破の従業員たちが14日午前、大庄洞虚偽報道疑惑に関する家宅捜索のためにソウル中区のニュース打破本社を訪れた検察関係者の前に立ちふさがっている/聯合ニュース

 検察が「キム・マンベ-シン・ハンニム録音ファイル」を報道した「ニュース打破」と「JTBC」の本社、そして報道に関与した記者たちの自宅を家宅捜索した。昨年の大統領選挙の際の「大庄洞(テジャンドン)事件」に関する「虚偽報道」で尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の名誉を傷つけたというのがその理由だ。報道による名誉毀損は、言論仲裁や訂正報道請求訴訟などの手続きを経るのが一般的だ。報道機関に対する強制捜査は言論の自由を侵害する危険性が高いため、極めて例外的でなければならない。それでも検察が強制捜査を行うためには、少なくとも報道機関や記者が罪を犯したと疑うに値するかなりの根拠がなければならない。

 だが、検察がこの事件に関して今まで犯罪の手掛かりとして提示したのは、キム・マンベ氏とシン・ハンニム元言論労組委員長の「金銭取り引き」だけだ。キム氏が2021年9月に行われたインタビューを大統領選挙直前に報道することを依頼すると共に、シン元委員長に1億6200万ウォンを渡したというのが検察の主張だが、それだけではニュース打破が犯罪にかかわったとみるのは難しい。14日の記者説明会でも、検察はキム氏とシン元委員長の「金銭取り引き」以外の具体的な情況を尋ねる記者団に明確な返事ができていない。この事件は、大庄洞事件の関係者たちがすでに検察で取り調べを受けているため、関係する供述はすべて確保されており、報道の「取材源」もすべて明らかになっている。またニュース打破は、問題の録音ファイルなどの報道の経緯を判断するのに必要な情報を自ら公開している。強制捜査は「必要な最小限度の範囲内でのみ行わなければならない」と刑事訴訟法に規定されている。にもかかわらず検察が強制捜査を強行したことは、政府に批判的なメディアに圧力をかける手段として利用していると疑わざるを得ない。

 さらにこの事件は、法務部長官を通じて検察を指揮する大統領が被害者となっている事件だ。名誉毀損は被害者が処罰を望まなければ起訴できないため、検察の捜査は尹大統領の「処罰の意志」が反映されていると考えなければならない。そもそもニュース打破をはじめとする報道機関が提起していた問題の本質は、尹大統領が検事時代に「釜山(プサン)貯蓄銀行事件」の捜査で大庄洞一味に手心を加えたのではないかということだ。だが、検察は尹大統領の「捜査もみ消し」疑惑は放っておいて、「虚偽報道を共謀した背後の勢力がある」という大統領室の「捜査ガイドライン」に沿って捜査を進めている。検察は、尹大統領に関する疑惑もきちんと捜査してこそ今回の捜査の正当性も確保しうる。でなければ、大統領個人の被害を「代わりに報復」するために検察権を動員したとの批判は避けられないだろう。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1108636.html韓国語原文入力:2023-09-14 19:38
訳D.K

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