尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は検事時代、「私は人には忠誠を尽くさない」と言ったが、彼の検察の「直系の後輩」たちはそうではないようだ。「尹錫悦師団」が掌握した検察は今、尹大統領に忠誠を尽くしている。先日の「ニュース打破」による「キム・マンベ-シン・ハンニム録音ファイル」報道を口実として、「大統領選挙介入世論操作」の背後勢力を捜査するとして検察が取っている態度がまさにそうだ。尹師団は、先の大統領選挙の際にこの録音ファイルの内容が報道されていなかったら、尹大統領がより大きな票差で勝っていたと信じているようだ。もしかしたら、今の30%台の大統領支持率も「メディアによる世論操作」のせいだと思っているのではないか。
ニュース打破をはじめとする当時のメディアが提起した問題の本質は、尹大統領が最高検察庁の中央捜査第2課長だった2011年に「釜山貯蓄銀行違法融資事件」を捜査する際、大庄洞(テジャンドン)一味に対する違法融資については捜査に手心を加えたのではないかということだ。捜査チームは当時、大庄洞事業のために釜山貯蓄銀行から1千億ウォンを超える融資を引き出し、その対価として10億ウォンあまりを受け取った融資ブローカー、チョ・ウヒョン氏に出頭を求めて取り調べたにもかかわらず、処罰しなかった。だがチョ氏は2015年に水原(スウォン)地検によって大庄洞事業違法融資の件で起訴され、懲役2年6カ月を言い渡されている。したがって「4年前の最高検察庁中央捜査部による捜査では、なぜチョ氏は処罰を受けなかったのか」というのは、当然わいてくる自然な疑問だ。
さらに、大庄洞の一味であるナム・ウク弁護士は、検察による取り調べで「最高検察庁中央捜査部が捜査を進めていた時、キム・マンベが当時の最高検察庁のキム・ホンイル中央捜査部長に、チョ氏に関する事件の目こぼしを頼んだ」という趣旨の供述を行っている。キム元中央捜査部長は当時、尹大統領の直属の上司だった(尹大統領は最近、彼を国民権益委員長に任命した)。またチョ氏は当時、キム・マンベ氏の紹介で、尹大統領が検事時代に上司として「仕えた」パク・ヨンス元特別検事を弁護士に選任している。このような「ファクト」の数々は「手心捜査」疑惑が全くでたらめというわけではないことを裏付ける。これを「大統領選介入世論操作」と決めつけ、処罰しようというのは、メディア各社に権力監視機能を放棄しろと脅しているのと同じだ。大庄洞は当時、捜査対象ではなかったという声もある。だが、その捜査対象は誰が定めたのか。「主任検事」(尹錫悦中央捜査第2課長)は関与していなかったのか。
尹師団がニュース打破を標的にした本当の理由は、尹大統領とキム・ゴンヒ女史一家の「不正」疑惑を執拗(しつよう)に追跡報道したからではないのか。ニュース打破のウェブサイトに少し目を通しただけでも、このような疑念を抱く。ニュース打破は2019年7月の検察総長人事聴聞会の際、「検事尹錫悦」がためらいなくうそをつく人物であることを世間に明らかにした。彼と非常に親しい検察幹部の実兄に弁護士を紹介したことがあるかを自由韓国党(現国民の力)の議員たちに問われ、「いいえ」を繰り返したものの、聴聞会場でニュース打破の記者と過去に通話した際の録音ファイルが公開され、うそが明らかになった。今は敵対的関係となった文在寅(ムン・ジェイン)前大統領の決断(!)がなかったなら、尹大統領は「検察総長候補」止まりだったかもしれない。
大統領夫人の「ドイツモーターズ株価操作」関与疑惑と、夫人の母による不動産関連の詐欺行為も、ニュース打破の報道で世間に広く知れわたった(義母のチェ・ウンスン氏は7月の控訴審で法廷拘束された)。尹大統領がソウル中央地検長時代に、国民の税金から支給される特別活動費などを機密捜査のためではなく会食などに使っていたことを報道したのもニュース打破だ。市民団体に支給された国の補助金と労組の会費の使途まで問題視する尹大統領の「二重性」を赤裸々にあらわにしたのだ。ひょっとして尹師団の目には、ニュース打破があえて「主君」の逆鱗にしきりに触れているように見えるのではないか。
大統領を守ることに「すべてを賭ける」検察は、むしろその大統領を不幸にする。朴槿恵(パク・クネ)政権の中盤に起きた「チョン・ユンフェ文書」の捜査を検察がまともに行っていたなら、「チェ・スンシル国政壟断」は防げたことだろう。チョン氏の「裏の実力者」疑惑をきちんと標的にしていれば、チェ・スンシル氏の存在が分かったはずだからだ。大統領を無理に守ろうとしたことで検察自身もだめになった。2016年冬の「国政壟断糾弾」ろうそく集会の際、「朴槿恵弾劾」の次に多かったスローガンは「検察改革」だった。尹師団は、尹大統領の任期が終わる前にほとんどが検察を去るだろう。しかし後輩検事たちは残る。残る者が抱くことになるのは恥ずかしさだろうか、それとも組織に対する自負だろうか。
イ・チュンジェ|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )