核兵器を搭載できる米海軍のオハイオ級弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)が42年ぶりに釜山(プサン)に入港したことを受け、北朝鮮が19日未明、東海(トンヘ)上に短距離弾道ミサイル(SRBM)2発を発射した。
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は同日、米海軍の戦略原子力潜水艦「ケンタッキー」(SSBN-737)に乗艦し、韓米指揮官の案内を受けながら巡視した。韓国大統領が国内に展開された米戦略資産を訪問したのは今回が初めて。
北朝鮮は27日の停戦協定締結(北朝鮮の祝日「戦勝節」)70周年を控え武力示威を続ける構えである一方、韓米は朝鮮半島における米戦略資産の展開などで対抗しており、朝鮮半島で緊張が高まっている。
尹大統領は同日午後、釜山海軍作戦基地に停泊中のケンタッキーの内部を視察した。北朝鮮全域を焦土化できる核ミサイルで武装した米戦略原子力潜水艦に尹大統領が乗艦したこと自体が、北朝鮮に「政権終末」を警告する強力なメッセージだ。
尹大統領は同日、「現存する最も強力な戦略資産の一つである米国のSSBN『ケンタッキー』を訪問することになり意義深いうえ、実に心強い」とし、「今回のケンタッキーの展開は、米国の戦略資産を定例的に展開し拡大抑止の実行力を強化するための韓米両国の意志をよく示している」と述べた。
米戦略原子力潜水艦は、米大統領と戦略司令部から受けた戦略的任務を遂行するため、外国にはなかなか公開されない。尹大統領も「友好国の大統領としては私が初めてSSBNを訪問することになったと聞いている」と語った。
ポール・ラキャメラ韓米連合司令官は歓迎の辞で「ケンタッキーは米国の核戦力三角体系(戦略爆撃機、戦略原子力潜水艦、大陸間弾道ミサイル)の中で非常に重要な戦略的プラットフォーム」だとし、「最も生存性の高い三角体系資産の一つであり、米国が韓国に提供する拡大抑止の重要な構成要素」だと説明した。
尹大統領は乗艦に先立ち、韓米軍関係者らに対し、前日開かれた韓米核協議グループ(NCG)の初会議に触れ、「韓米両国は今後もNCG、SSBNのような戦略資産の定例展開を通じて、高度化しつつある北朝鮮の核ミサイルの脅威に圧倒的かつ決然と対応していく」と強調した。さらに「北朝鮮が挑発すれば政権の終末につながることを明確に警告した」と述べた。
これに先立ち、合同参謀本部は「午前3時30分頃から3時46分頃まで北朝鮮が(平壌)順安(スナン)一帯から東海上に発射した短距離弾道ミサイル2発が、それぞれ550キロメートルを飛行した後、東海上に弾着した」と発表した。北朝鮮のミサイル発射は、北朝鮮全域を核ミサイルで攻撃できるケンタッキーが釜山に入港したことへの反発を示したものとみられる。シン・ボムチョル国防部次官はラジオ放送で、ミサイルの飛行距離が「(平壌順安から)釜山までの距離」だとし、「それだけ(北朝鮮が)米国の戦略原子力潜水艦を意識していることを示している」と分析した。
北朝鮮と韓米両国が一歩も引かない態度を示していることで、朝鮮半島情勢には不安定さが増している。北朝鮮は、キム・ヨジョン朝鮮労働党副部長が対米強硬談話を繰り返し発表し、今月12日には固体燃料ICBM「火星18型」を発射したのに続き、短距離ミサイルの発射を繰り返すなど攻勢を強めている。北韓大学院大学のキム・ドンヨプ教授は「北朝鮮の夏季軍事訓練期間であり、戦勝節も控えているため、次第に攻勢を強めるだろう」と見通した。
元外交安保当局者は「不必要な緊張を和らげ、偶発的な衝突が紛争に拡大する可能性を防がなければならない」と指摘した。