五松(オソン)地下車道浸水惨事が発生した15日午前8時19分。堤防が決壊した地点から300メートル離れた場所で農業を営むキム・ホドンさん(64)の妻は、五松-清州(チョンジュ)道路拡張工事の現場監督団長を務めるCさんからの緊急電話を受けた。「堤防が決壊したから早く避難しろ」というものだった。
驚いたキムさん夫婦がコンテナ建物の外に出てみると、すでに水が建物の方に激しく襲いかかってきていた。夫婦は携帯電話だけを持ち、胸まで上がってきている水の流れに逆らって工事中の橋の上にかろうじて逃れた。何とか助かって息をつくと、橋の反対側で宮坪(クンピョン)第2地下車道が浸水しているのが見えた。キムさん夫婦は112と119に繰り返し電話し、「地下車道が水に浸かってみんな死んでいっている。早く来て救助を」と叫んだ。
CCTV(防犯カメラ)上で確認できる浸水のはじまった時刻は午前8時40分ごろ。キムさんは「うちの建物の下がまさに地下車道だ。私たちもかろうじて助かったのだから、地下車道はすでに水でいっぱいになってしまっていたということ」と当時の状況を語った。
キムさん夫婦も、監督団長のCさんの電話に出ていなかったら水に飲まれていたかもしれない。キムさんは、その日の午前6時ごろから労働者たちが工事現場を行ったり来たりしながら臨時堤防を補強するのを見たと語った。キムさんは「堤防を補強していたが川の水があまりにも押し寄せてくるものだから、みんな逃げたはずだ。うちがいちばん緊急を要したから、監督団長は堤防が決壊するやいなや電話したんだと思う」と話した。警察と消防は現場を見回ったと述べているが、キムさん夫婦は危険を知されていなかった。
避難する前、Cさんは警察に午前7時4分と7時58分に二度通報している。「美湖川橋(ミホチョンギョ)が水に飲み込まれそうだ。住民を避難させるべきだ」と氾濫の恐れを訴えたのだ。しかし警察は別の場所に出動した。警察は午前8時45分に消防共同対応の通報を受けて宮坪第2地下車道へと向かい、16分後の9時1分に現場に到着した。最初の通報から現場到着まで、事実上2時間あまり「右往左往」していたわけだ。
消防当局は午前7時51分、「美湖江(ミホガン)堤防の流失が懸念される」との通報を受けた。続いて8時3分には消防隊員が美湖江の氾濫を確認し、清州市の当直室にその内容を伝えた。忠清北道消防本部は堤防決壊後の午前8時45分、宮坪第2地下車道が浸水しているとの通報を受け、その5分後に救助を開始している。
警察と消防は、通報を受けて区役所や市役所に伝えるなど、措置を取ったとの立場だ。氾濫の可能性を伝えられた関係機関は、道庁や忠北道路管理事業所などにその内容を伝えなかったという責任もある。
国務調整室と警察は、今回の事故の経緯の把握を急いでいる。通報を受けた後、警察と消防が適切な対処を取ったのかなども今回の監察・捜査の対象に含まれる。