国際原子力機関(IAEA)の調査団は先月29日から今月2日まで、福島第一原発の汚染水の海への放出についての包括的検証に向けた最終調査を日本において行う。23~24日に福島第一原発現地を点検した韓国視察団も、31日に視察結果を説明する記者会見を予定している。日本政府が2021年4月に汚染水の海洋放出を公式決定してから2年あまり。国際的な安全性検証が最終段階へと向かっているわけだ。今年の夏ごろに現実化するとみられる福島第一原発の汚染水の海洋放出は、人類にどのような影響を及ぼすのだろうか。主な争点を7つに分けて検討する。
(1)汚染水はなぜ発生するのか
最も根本的な問いだ。2011年3月の東日本大震災で巨大な津波が発生し、福島第一原発を襲った。そのため冷却装置が機能しなくなり、1~3号機の3つの原子炉の核燃料棒が溶け落ちる炉心溶融(メルトダウン)が発生した。溶けた核燃料は周囲の構造物を溶かして塊(デブリ)となり、原子炉の底に残っている。人が近づけば1時間以内に死んでしまうほどの高線量の放射線が漏れ出ている。
計880トンにのぼるデブリからは今も膨大な熱が発生しているため、冷却水で冷やさなければならない。その水が触れることで、人体に致命的な影響を与える各種の放射性物質を含んだ汚染水になる。
問題は、周辺の地下水や雨水までもが原発に流入し、日々大量の汚染水が生み出されているということ。東電は地下水をくみ上げたり、1~4号機の周りに凍土壁(地面を凍らせて作った壁)を構築したりして、汚染水を減らすために死力を尽くしたが、成功していない。汚染水の増加量は今も1日当たり90~140トン。この汚染水を貯蔵するため、原発の敷地内には1073基の水タンクが設置されている。18日現在、貯蔵されている汚染水の量は133万トン。タンク容量の97%がすでに使用されている。
(2)なぜ海に放出?
その理由は大きく分けて3つ。1つ目、汚染水を保管するタンクの不足。ただし変数がある。日本政府は2021年4月に海への放出を決めた際に、今年の夏ごろにタンクがいっぱいになるとの予想を示した。しかし降水量の減少と、汚染水低減政策などが一部効果を上げたことで、すべてのタンクが満杯になる時期は来年2~6月となっている。
2つ目、廃炉(原発解体)に向けた作業スペースの確保。廃炉の最重要課題は1~3号機の底に溶け落ちているデブリの処理だ。日本政府はデブリを取り出し、汚染水タンクのある場所に保管施設を作る計画だ。人の命を奪うほどの高線量の放射線が漏れ出ているため、人の代わりにロボットが入っていって作業しなければならない。しかし、ロボットの開発は遅れている。昨年はまず2号機でデブリ除去作業を開始する計画だったものの、日程の遅れで作業開始は早くても今年下半期になる見通しだ。1、3号機は処理の時期や方法すら決まっていない。今のように急ぐ理由は存在しない。
3つ目、コスト。日本政府は2016年に、海洋放出▽大気放出▽地下埋設などの複数の汚染水処理方法を検討した。海に放出すれば34億円(約321億ウォン)程度で済むが、大気放出には349億円(約3300億ウォン)、埋設には2431億円(約2兆3000億ウォン)かかる。福島の漁業関係者が強く反対したため、大気放出案も最後まで検討された。毎日新聞は「政府内では放射性物質を含む気体が東京まで達したらどうするのかという不安が高まったため、海洋放出でまとまった」と報じている。海への放出が「唯一の代案」ではないことは日本政府が最もよく知っている。
(3)IAEAによる検証は信頼できるのか
汚染水の安全性についての検証を独占するのはIAEAだ。客観的な検証能力に疑問を呈する声は絶えない。1957年に設立されたIAEAは、原発の平和的利用を強調する。そして基本的に「原発拡大」を重視する。原発の危険性を全世界に知らしめた福島第一原発事故の円満な決着は、日本とIAEAの共通の目標だ。
原発大国である日本はIAEAへの影響力も強い。IAEAの正規予算の分担率(2021年)を見ると、日本は8.32%で、米国(25.25%)、中国(11.15%)に次いで第3位。4つの連絡・地域事務所のひとつは東京にある。現職のラファエル・グロッシ事務局長の前にIAEAを率いたのは、日本人の天野之弥(1947~2019)だった。彼は2009年から2019年に亡くなるまで事務局長を務めた。
汚染水の海洋放出はIAEAと協議して決定されたものだ。日本政府が放出を決めると韓国、中国、台湾、ロシアは強く反発したが、グロッシ事務局長は真っ先に「歓迎する」との立場を示した。海洋放出決定にかかわった主体が検証を担っている格好だ。彼らは試料採取などを独占し、他国による独自の追加検証を徹底して阻んでいる。このような閉鎖性も不信を募らせる大きな原因となっている。(2に続く)