北朝鮮に対する韓米首脳の態度がますます強硬になっている。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は26日(現地時間)の首脳会談後の記者会見で北朝鮮との対話・交渉に言及せず、バイデン米大統領は「政権の終焉」を口にした。
北朝鮮の相次ぐ大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射と韓米合同軍事演習への対抗で朝鮮半島の緊張が高まっている状態だが、外交的なレトリックの次元でも北朝鮮に積極的な「対話」のシグナルを発しなかったのは大きな問題だ。
対話断絶、北朝鮮に責任転嫁
尹大統領とバイデン大統領は、韓米首脳会談後に発表した「共同声明」の相当部分を割いて、北朝鮮の核・ミサイル脅威に対抗する韓米核協議グループ(Nuclear Consultative Group・NCG)の創設により北朝鮮への拡大抑止力が強化されたと強調した。
共同記者会見では、共同声明よりも強硬な北朝鮮へのシグナルが発信された。バイデン大統領は「北朝鮮が米国や同盟、パートナー国家に核攻撃を加えることは容認できず、そのような行動をすればいかなる政権であっても終焉を迎えるだろう」と述べた。
「政権の終焉」という表現は、昨年10月に米国防総省が報告書「核態勢の見直し(NPR)」に初めて明記したものだが、これをバイデン大統領が自ら口にしたのは重みが異なる。同大統領は「北朝鮮の核の脅威が大きくなり続けている。米国の経済制裁を図々しくも無視し続けている」とも述べた。
両首脳は北朝鮮に「対話しよう」と提案する代わりに「交渉復帰を要求」し、対話・交渉断絶の責任を北朝鮮側に転嫁した。例えば両首脳は共同声明で「朝鮮半島で持続的な平和を達成できる唯一の手段として、北朝鮮との外交に対する意志を再確認し、北朝鮮が交渉に復帰することを求める」とだけ述べた。
これは、昨年5月21日にソウルで発表された尹大統領とバイデン大統領の初の韓米首脳会談後の「共同声明」で「対話の道は依然として開かれていることを強調」したことからは後退したものだ。当時の共同声明には「バイデン大統領は南北協力に対する支持を表明した」という文言もあったが、今回の共同声明からは外された。代わりに「バイデン大統領は大韓民国の『大胆な構想』(『北朝鮮が実質的な非核化に転換すれば、段階に合わせて北朝鮮の経済・民生改善を支援する』という構想)の目標に対する支持を再確認した」という表現が追加された。
ただ、韓米首脳は北朝鮮に対し強硬なシグナルを送ることで足並みをそろえたが、もう少し深堀してみると強調点に違いがある。韓国が強硬一辺倒だとすれば、米国は韓国側と歩調を合わせつつも情勢の管理に気を使っている様子だ。
尹大統領は25日(現地時間)に公開された米NBCのインタビューで、北朝鮮との交渉に対する期待は「非現実的だ」とし、「重要なのは、北朝鮮が核兵器に依存しないようにすることだ」と強調した。
19日に報道されたロイター通信のインタビューでは、「見せかけの南北首脳会談は行わない」と述べた。一方、米国はジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安保担当)とジョン・カービー国家安保会議(NSC)戦略疎通調整官が、24日(現地時間)と25日、「北朝鮮との対話追求と人道支援」に言及した。二人は「朝鮮半島非核化の目標達成」も強調した。
ある外交安保分野のベテランは「ワシントン宣言を含めた今回の首脳会談の対北朝鮮メッセージは、実状は平壌ではなくソウルに向けたもの」だとし「金正恩(キム・ジョンウン)氏の考えと態度に肯定的な変化を与えるような意味あるメッセージはなかった」と述べた。