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尹政権初の国防白書で「北朝鮮政権・軍は敵」復活…「日本は近い隣人」

登録:2023-02-17 06:39 修正:2023-02-17 07:15
16日に公開された「2022国防白書」は「北朝鮮が朝鮮半島全域の共産主義化を明示し、我々を『明白な敵』と規定しているため、北朝鮮政権と北朝鮮軍は我々の敵だ」と明記した=「2020国防白書」国防部提供国防部提供//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル) 政権初の国防白書で「北朝鮮政権と北朝鮮軍は我々の敵」という文言が6年ぶりに復活した。文在寅(ムン・ジェイン)政権とは異なる南北関係と北朝鮮政策の基調を反映したものだ。

 韓国国防部は16日、北朝鮮の脅威の実体と厳しさを明確に認識できるよう記述した「2022国防白書」を発刊したと発表した。国防白書は、「北朝鮮が2021年に改正された労働党規約の前文で朝鮮半島全域の共産主義化を明示し、2022年12月の党中央委全員会議で我々を『明白な敵』と規定するとともに、核を放棄せずに継続的に軍事的脅威を加えているため、その遂行主体である北朝鮮政権と北朝鮮軍は我々の敵」だと明示した。

 国防部は「北朝鮮政権と北朝鮮軍は我々の敵」という文言を復活させた背景について、「北朝鮮の対南戦略、我々を敵と規定した事例、持続的な核戦力の高度化、軍事的脅威と挑発などを総合的に考慮した」と説明した。尹錫悦大統領は大統領選候補時代に行われた北朝鮮の弾道ミサイル発射直後、フェイスブックに「主敵は北朝鮮」という書き込みを残しており、政権引継ぎ委員会も昨年5月の「110大国政課題」で、「北朝鮮政権と北朝鮮軍が我々の敵であることを明確に認識できるよう、国防白書などに明記する案を検討する」と明らかにした。

 「北朝鮮は主敵」という文言は、1994年の南北実務接触で北朝鮮代表が行った「(戦争が起きれば)ソウルは火の海になる」という発言をきっかけに、1995年に初めて国防白書に明記され、2000年まで維持された。軍事安全保障用語ではなく、沸騰した世論をなだめる必要があった国内政治的な理由から登場した。その後、盧武鉉(ノ・ムヒョン)、李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)政権時代には当時の北朝鮮政策、南北関係の状況によって「主敵」の代わりに「直接的な軍事脅威」や「敵」などが使われた。李明博政権時代の2010年、天安艦事件と延坪島(ヨンピョンド)砲撃戦以降、「北朝鮮政権と北朝鮮軍は敵」という文言が朴槿恵政権まで維持された。文在寅政権時代の2018年と2020年の白書では、敵を北朝鮮と特定せず「主権、国土、国民、財産を脅かし侵害する勢力を我々の敵とみなす」という文言に変わった。尹錫悦政権は「主敵」とは明記しなかったものの、「北朝鮮政権と北朝鮮軍は敵」という文言を復活させた。

 これまで保守勢力は対敵観を明確にし、安全保障を堅固にするためにも、国防白書に「北朝鮮は主敵」や「北朝鮮政権と北朝鮮軍は我々の敵」と明記する必要があるとし、これを取り除いた文在寅政権が「弱く屈従的な北朝鮮政策を展開した」と主張してきた。これに対し、国防白書や類似の公式文書に主敵や敵という言葉を公式に使用する国は韓国と北朝鮮を除けばほとんどないだけでなく、むしろこのような表現が対外関係において戦略的な活動の幅を自ら狭め、国益を害するという反論もある。

 国防白書はまた、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)労働党総書記兼国務委員長を、既存の「金正恩国務委員長」から職責を除いた「金正恩」と表記した。北朝鮮が韓国の大統領を指す言葉や対南行動を考慮したというのが国防部の説明だ。また、2年前に国防白書「一般付録」に載せられていた9・19軍事合意書はなくなり、「北朝鮮の9・19軍事合意の主な違反事例」だけが取り上げられた。

「2022国防白書」に掲載された北朝鮮のミサイルの種類と能力//ハンギョレ新聞社

 国防白書は、北朝鮮のプルトニウム保有量は約70キロだと推定した。核兵器を最大18基まで製造できる量だ。2016年と2018年、2020年の国防白書では北朝鮮のプルトニウム保有量を「50キログラム余り」としていたが、今回は2021年に国際原子力機関(IAEA)が提起したプルトニウム再処理疑惑を事実と判断し、従来の推定を修正した。また、北朝鮮の核施設と関連して、従来の白書にあった「1980年代に寧辺(ヨンビョン)の核施設の5メガワット(MW)原子炉を稼動した後」という文言が「1980年代から寧辺などの核施設」に変わった。北朝鮮に寧辺以外にも核施設があると判断したのだ。

 国防白書は北朝鮮が正確さと迎撃回避能力が向上した多様な固体燃料弾道ミサイルを開発していると明らかにした。また、「北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験はいずれも高角発射で行われ、米国本土を脅かす射程距離の飛行能力は見せたが、正常角度での発射実験はなかったため、弾頭の大気圏再進入など重要な技術を確保しているかどうかについてはさらなる確認が必要だ」と分析した。潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)もミサイル発射実験が行われたが、これを運用できる潜水艦は開発段階にあるとした。

 国防白書は日本について「韓日両国は価値を共有し、日本は共同利益に合致する未来協力関係を構築していくべき近い隣国」だと書いた。「韓日両国は価値を共有する」という文言が6年ぶりに復活し、2020年白書にはなかった「未来協力関係」と「近い」という言葉が加わった。尹錫悦政権の韓日関係の改善に向けた意志を反映したものとみられる。

 尹錫悦政権のインド太平洋戦略を反映する部分も目を引く。これまでの国防白書は、第1章第1節で世界の安全保障情勢が、第2節で北東アジアの安全保障情勢が取り上げられていたが、今回は第1章第2節に「インド太平洋地域の安全保障情勢」という題名が付けられた。周辺主要国の軍事力を説明する項目にも、北東アジア諸国だけでなく、オーストラリアとインドが加わった。

 「2022国防白書」の全文は国防部ホームページで閲覧とダウンロードできる。来月中に印刷された冊子が政府機関、国会、研究所、図書館などに配布される予定だ。

クォン・ヒョクチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1080003.html韓国語原文入力:2023-02-17 02:12
訳H.J

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