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[ファクトチェック]たたけば支持率上昇?…尹政権の主張する「労組会計問題」を検証

登録:2022-12-23 02:31 修正:2022-12-23 08:21
労組会計の不透明性をめぐる3大争点
尹錫悦大統領が21日、青瓦台迎賓館で行われた第12回非常経済民生会議兼第1回国民経済諮問会議で発言している。尹大統領はこの日の会議で、公職腐敗と企業腐敗に続き労組腐敗を「清算すべき3大腐敗」だと述べた/聯合ニュース

 ハン・ドクス首相、与党「国民の力」、一部の保守メディアが一丸となって提起している労働組合の会計の不透明性問題は、いわゆる「労働改革」の局面において政府が主導権を握るための議題設定だというのが労働界と専門家たちの見解だ。一部の単位労組の会計が不透明な例としてあげられているに過ぎず、労組全般の会計不正が明らかになってもいない中、政府が唐突に問題を提起しているからだ。これまでに浮き彫りになっている主な争点を検証してみる。

民主労総が巨額の資金をもてあそんでいる?

 一部メディアは、民主労総の本部と、加盟している16の産別労組の予算をひっくるめて、民主労総が莫大な予算をもてあそんでいるかのように主張している。これは単一労組である16の産別労組と、それらの労組が緩いかたちで加盟する民主労総の関係を理解していないか、歪曲するものだ。労組の会計は各産業別労組と総連盟で別になっている。

 民主労総の年間予算は200億ウォン(約20億6000万円)ほど。全額が組合員の加盟費でまかなわれる。民主労総は人件費や維持費などの名目で107億ウォン(約11億円)、地域本部などへの交付金として47億ウォン(約4億8400万円)、争議事業費として10億ウォン(約1億300万円)、政策事業費として2億6000万ウォン(約2680万円)を支出する。民主労総のハン・サンジン広報担当は「民主労総は会計に関する監査役の選任や監査期間および報告などの規定に則り、年2回集中監査を行い、すべての予算と決算の資料は代議員大会に報告して審議・議決する」、「組合員は加盟している労組と代議員を通じていつでも会計資料を閲覧し、受け取ることができる」と語った。

 民主労総があたかも産別労組に全面的な支配権を行使しているかのような見方も、偏見に過ぎない。民主労総に加盟した労組は2000年代初めに相次いで産別労組に切り替わった。その後、各産別労組が行為の主体となって動くようになったため、かなり前から「総連盟はカカシなのか」という問題が起きている。ただし、労働界の一部からは、政府が触発した実体のない問題は置くとしても、これを機に規模の大きな産別組織や総連盟は会計士を監査役に選任するなど、会計の透明性を高める先制措置を取った方が長期的には良いという話も出ている。

補助金の透明性は国と自治体が取り組むべき問題

 労組会計の透明性問題の核心は、中央政府や地方自治体が労組に支給する補助金や各種の労働教育関連の委託事業費の執行の問題だ。しかし、これさえも問題の実体は明確ではない。民主労総本部は、現在入居しているソウル貞洞(チョンドン)の京郷新聞社に支払う30億ウォン(約3億900万円)あまりの保証金が雇用労働部を通じて国庫から補助されていることを除けば、補助金は受け取っていない。ただし一部の産別労組と地域本部は、雇用労働部と地方自治体から補助金の支給を受けていることが知られる。

 韓国労総の年間予算は、今年を例にとると138億ウォン(約14億2000万円)ほど。組合員が支払う加盟費が66億7000万ウォン(約6億8700万円)あまりで半分を占める。残りは国庫補助金26億3000万ウォン(約2億7100万円)、ソウル市と公共機関から補助される47億ウォン(約4億8400万円)あまりが財源だ。韓国労総は「補助金の執行は補助金管理に関する法律に則って精算検証しており、外部の2つの会計法人の会計監査を経て、政府に詳細な内訳を報告する」と述べている。

 労働部は、政府と与党が突如として提起した労組会計の不透明性問題に当惑している雰囲気だ。労働部は資料を発表し、その中で「個別支援事業の関連規定に則り、徹底した決算手続きなどを経て、執行の適切性などを判断している」と述べた。労働部の高官はこの日の本紙の電話取材に対し、「我々も、労組会計の透明性問題がふくらんだ経緯については詳細に把握中」だとし、「労組の組合費に関してどのような問題があるのかは我々が把握してみて、法律に合わないことは改善する計画」だと語った。

国がなぜ組合費をのぞき見るのか

 補助金や委託事業などを除くと、労組の残りの一般会計はすべて組合費で充当される。その組合費がきちんと使われたかは、外部の人間ではなく組合員が問題提起すべきことだ。にもかかわらず国民の力のハ・テギョン議員は前日、組合費の使途の詳細な内訳を労働庁に報告することを大企業と公共機関の労組に義務付ける「労働組合および労働関係調整法」改正案を提出した。国際労働機関(ILO)は、外部の財源が投入されていない労働組合の会計について、国などが過度に介入することは労組の自主権を害する危険性があると判断している。

 そのため労働界は、政府と与党が連日にわたって実体すら曖昧な労組会計の不透明性問題に言及しつつ貴族労組、闇会計などとレッテルを貼っているのには、隠れた意図があると疑っている。来年から本格化する労働改編を前に、労組を委縮させようとの意図が隠れているというわけだ。梨花女子大学のイ・ジュヒ教授(社会学)は「組合費の使途の内訳についての発言権は組合員にあるもので、政府がそれに介入するというのは労組自治主義に反する」とし、「政府は労組をたたけば支持率が上がると考えているのではないかと疑われる」と語った。

チョン・ジョンフィ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/1072657.html韓国語原文入力:2022-12-22 08:00
訳D.K

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