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労組を力でねじ伏せる韓国政府…貨物連帯が終わりではない

登録:2022-12-12 06:34 修正:2022-12-12 07:07
労働時間の柔軟化、賃金制度の改編など 
「労働改悪」の強攻ドライブ
貨物連帯がストライキを終了し現場復帰を決めた9日、京畿道儀旺市内陸コンテナ基地(ICD)である組合員が涙を拭いている/聯合ニュース

 圧倒的優位に立った政府の力を確認した時間だった。安全運賃制の拡大を掲げて9日まで16日間行われた民主労総全国公共運輸労組貨物連帯本部(貨物連帯)のストライキ期間中、韓国政府は対話と妥協を通じた対立の調整と仲裁ではなく、行政命令と司法処理という鞭ばかりを振りかざしていた。新年から政府が労働時間の柔軟化と成果中心の賃金体系改編など、いわゆる「労働改革」を本格的に進める中、専門家たちは今後の政労関係にも政府の命令と形式的な法治が交渉を凍りつかせてしまう寒い冬が訪れると予想した。

 雇用労働部の依頼を受けた未来労働市場研究会が12日、労働時間規制を柔軟化し賃金体系を成果と職務中心に変える内容の勧告案を発表することを皮切りに、政府は労働改革に拍車をかけるものとみられる。同研究会はここ4カ月間にわたり勤労時間と賃金体系の改編案について集中的に議論しており、具体的な制度改善案と政策提言を労働部に勧告する方針だ。労働部は現在、週12時間となっている延長労働限度の管理単位を月などに変える案を進めているが、この場合、現行最大週52時間である労働時間が増えることになり、労働界の反発が予想される。賃金体系改編の場合、尹大統領が大統領候補時期に「部署・職務別同意により賃金体系の変更ができるようにする」と公約したが、これもやはり労働関係法上の労働者代表制度を揺さぶる敏感な事案だ。政府は未来労働市場研究会の勧告案をもとに、国会立法と政府指針の変更、経済社会労働委員会の社会的対話などをすみやかに進めていく見通しだ。これと共に、政府が現在進めている公共部門の人員削減と民営化関連イシューも新年から労働現場に大きな対立を招きかねない要素だ。

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は今回の貨物連帯2次ストライキ事態で見せた企業優先、労組嫌悪と民主労総排除の基調に基づき、本格的な労働改編を試みるとみられる。多くの専門家は、政府が来年度の経済見通しが良くないことを強調して「労働改革」の必要性を訴え、労働界に「労働改革の足を引っ張る勢力」というレッテルを張る可能性が高いとみている。経済危機を名分に労働改悪を進めるのは保守政府の古いレパートリーだが、尹錫悦政政権は今回の貨物連帯2次ストライキを通じて劇的な支持率の反騰に成功し、労組叩きの効果を確認した。

 政府は貨物連帯がストライキを始めた直後から業務開始命令に続く警察捜査、公正取引委員会の調査圧迫まで、立て続けに労組側を追い詰めた。この過程で妥協はもちろん、対話すらも消えた。国土交通部は貨物連帯との対話の席に2回出てきたが、「まずストライキを撤回すべき」と主張する以外には、安全運賃制関連の何の妥協策も持ってこなかった。対話は意味なく終わり、貨物連帯は9日、事実上全面降伏するかのようにストライキを中止した。 だが、9日に韓国ギャラップが発表した世論調査結果によれば、尹大統領の国政遂行に対する支持率は33%で3週連続上昇し、支持すると回答した人たちは「労組への対応」(24%)を最も大きな理由に挙げた。政府が今回の貨物連帯ストライキでの勝利を機により一層自信を持って強攻策を展開し、政労関係が凍りついて労使関係にも苛酷な寒波が押し寄せるという懸念が高まるのもそのためだ。

 中央大学のイ・ビョンフン教授(社会学)は「労働改革の局面で政府が労組を自分の思う通りひざまずかせて、不満を言えないよう口を塞ぐ形で追い込むと、労働界との衝突と対立は避けられないだろう」と語った。韓国労働研究院のイ・ジョンヒ労使関係研究本部長は本紙の取材に対し、「政府が本気で労働市場の二重構造(正社員と非正社員、大企業と下請け・中小企業の労働条件の格差)問題の解決策を模索するならば、責任ある者を交渉のテーブルにつかせ、話し合いの場を開く役割を果たさなければならない」とし、「劣悪な労働環境で働く人々をどのように保護するかは全く見せずに、今回のストライキ終了を法と原則基調の成功的遂行だけで評価するならば、それは時代錯誤的な認識」だと指摘した。

 国際労働機構(ILO)のような国際機関、欧州連合(EU)などとの通商摩擦が再び浮上する可能性も少なくない。 カレン・カーティスILO国際労働基準局副局長など関係者たちは12日、最高裁(大法院)傘下の司法政策研究院が主催するカンファレンスに出席するため訪韓し、政府関係者とも面会する予定だ。韓国労働研究院のパク・ミョンジュン先任研究委員は「社会を形成する労組など結社体を認め、彼らが役割を果たしながら市場秩序を作っていくように導く方が社会的費用も少なく、民主的にも望ましいことを政府が認識しなければならない」と話した。

チョン・ジョンフィ、チャン・ヒョヌン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/1071156.html韓国語原文入: 2022-12-12 05:00
訳H.J

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